「心(こころ)」とは何か、どんな働きをするのかを探求するのが心理学です。心理学は、19 世紀に哲学から派生しましたが、近年では、認知科学、脳神経科学、経済学、経営学、社会学、精神医学などにも大きな影響を与えている学問です。
心理学の対象は、多岐にわたります。たとえば、消費者行動、集団行動、非言語行動、言語処理、記憶、動機づけ、ストレス、身体反応、脳内過程、人間関係、異常心理、犯罪心理、不安や恐怖などの感情や情動の働きとそれを支える背景要因等々です。これらを実験や観察によって検討し、さらには、データを統計的に分析し、背景要因や事象間の関係性を探り、科学的一般性・法則性を見出す態度を養います。また、無縁化社会ともいわれるような社会状況の中で、人々とどのようにコミュニケーションをしていくかという実践的な問題についても考えます。
早稲田大学の心理学コースは、社会心理学、知覚心理学、認知心理学、神経心理学、臨床心理学、生理心理学、犯罪心理学、ストレス心理学、健康心理学、言語心理学、心理統計学など多方面の専門教員で構成され、基礎から応用までをカバーしている国内でも数少ない機関です。そのため、学生が、専門領域を選択する自由度はきわめて高いのです。カリキュラムは、基礎学力を身につけるための実験実習に始まります。心理学の問題を解明する実験を行い、データを収集・処理し、データに影響する諸条件を吟味し、結果について総合的に議論する基本的態度を学んでいきます。そのうえで、実験計画法や検査法、調査法、臨床技法などの演習や講義科目を選択し、段階的に専門領域を学んでいき、応用力を身につけます。
心理学コースのカリキュラムは、実験実習や統計学など心理学の基礎となる知識・技能の習得に始まります。これらは、心理実験を通して収集したデータを分析し、結果について考察するためには不可欠なものです。こうした基礎学力の習得に続いて、さらにいくつかの研究法や専門的知識を身に着け、段階的に専門領域を学んでいくことになります。ですから、心理学コースの学生は、一定の高い基礎学力を持ち、高い勉学意欲を持って根気強く基礎的知識・技能の習得を続けられることが必要です。また、専門領域の研究では、強い探究心を持って興味ある問題を追及して行くことのできる姿勢も必要です。
心理学コースに進級した2年次生は、まず、実験実習と統計学を履修することになります。実験実習では、実験法、観察法、検査法、調査法など心理学の研究法を学びます。また、収集したデータをもとにレポートを作成したり、グループでテーマを決めて研究計画を作成するなどの作業を通じて論理的推論能力を養成します。統計学では、収集したデータの分析法や効率よくデータを分析するためにはどのように実験を計画すべきかなどを学びます。これらの知識・技能は、今後、心理学の専門領域を学んでいくための基礎となります。
心理学コースでは、3年次生に進級する段階で、9名の専任教員それぞれが担当する9つの専門領域別の演習に所属することになります。それぞれの専門領域は以下の通りです。生理心理学・健康心理学・身体の心理学、臨床心理学・パーソナリティ心理学・音楽心理学、知覚心理学・神経科学、社会心理学・行動意思決定論・経済心理学、心理統計学・教育測定法・マーケティングサイエンス、言語心理学・認知心理学、健康心理学・高齢者心理学、神経心理学・認知神経心理学・運動の計算論的神経科学、非行臨床・犯罪心理学。これらの演習においてそれぞれの専門領域の基礎的知識や研究法を学ぶとともに、その他の演習、講義科目を履修して、心理学のいくつかの領域について学ぶことになります。
4年次生は、3年次に所属した演習を担当する専任教員のもとで卒業論文を完成させます。これまでに学んできた知識・技能を使って研究を計画し、実験・調査を実施してデータを収集・分析し、卒業論文を仕上げることになります。心理学コースで学んできたことの成果として、卒業論文を提出してもらうことになります。
心理学コースの演習テーマについて紹介します