インドや中国で著された2000 年ほど前の文献の中でも、人類が悩み、考えていることは現在とそれほど変わりません。さらにそのことに対する答えや人々の知恵は、現代にも通じます。多種多様な叡智や思考が盛り込まれた東洋の古典は、人々の知恵の宝庫なのです。
早稲田大学の東洋哲学コースは、世界の東洋哲学研究の中心的存在として、海外の研究者からも注目されています。本コースの学生はインド・中国・日本の三国を中心に、アジアの思想・宗教・文化を広く総体的に研究することができます。またそこから、東洋の世界観・人間観・自然観などを学ぶことも可能です。具体的には、仏教・儒教・道教・神道などの思想・哲学を研究領域とし、原典講読により、客観的で脚色のない本来の意味を読み解いていきます。インド哲学・中国哲学・日本思想というような分類も可能ですが、たとえば仏教や儒教のように各国にまたがるものもあり、さまざまな切り口が可能です。また、それぞれの国において、思想が多彩に交わり、融合する複合的な分野を扱うこともできます。
インド・中国・日本の3 カ国の思想・哲学の基礎を踏まえ、卒業論文では各自の興味に従って研究を深めていくことになります。教員は、それぞれが問題意識を持って選んだ課題を、研究成果として結実できるよう指導します。東洋哲学は日本の文化・思想の核心部分を構成しています。それらを原典から読み研究することは、東洋から世界を見ることにほかなりません。また、東洋哲学に興味を持つ研究者は海外にも多く、国際的視野に立つ研究への道も開かれています。
東洋哲学コースは、原典を中心とする、文献の講読を尊重する研究方法を採用しています。従って、文献を読むためには、必要な語学がありますが、基本は漢文です。高校で習っていれば、授業を受けることで読解力は増進します。とはいえ、漢文と言っても中国哲学と仏教では漢文の性質に違いがあります。なぜかと言えば、仏教漢文はインドから中国に伝来した文献の翻訳から始まっているからです。そしてそれらについての初歩的な知識は、インド・中国・日本といった東洋の思想・文化を理解する上で必要不可欠なのです。そこで、1年生から受講できる科目として、漢文講読1、漢文講読2という、それぞれ中国漢文、仏教漢文の入門用の講義を設けています。インド学に興味を持つ人のためには、サンスクリット語も学べるようになっています。東洋哲学コースには津田左右吉先生以来の重厚な伝統があります。また、国際的な関心を集めている領域を扱っていますので、第2外国語はどの科目でも有効です。広い視野から、東洋の思想について、文献を通じて理解したい人に向くコースです。
東洋哲学コースの2年次における必修科目は、演習1の中国古代思想と、演習2の日本古代思想で、それぞれ春期と秋期に配当されています。インド哲学の演習は3年次からですが、それは先ず漢文の基礎を身につけるという目的があるからです。漢文講読1、2を1年次に取らなかった人は、この年次に是非受講して下さい。進級時に既に卒業論文で何を扱うか決めている人は例年極少数ですので、講義科目を受講して、視野を広めて下さい。講義科目では三国にわたる様々な領域が扱われています。1年掛けて、自身がインド・中国・日本のいずれの国、或いは仏教、儒教、道教、神道等どういった分野を卒論で扱いたいのか考えてみるとよいと思います。ただし、一つの国に決めたとしても、扱える分野は多様ですし、思想内容で決めたとしてもアジア諸国にわたるものもありますので、あまり細かく絞らずに、広く学んで下さい。広い知識は、どこかで役に立つものです。
年次は、インド・中国・日本の演習が、春・秋の両学期通じて設定されています。要するに、卒論指導を行う教員と毎週顔を合わせることになりますので、疑問点があれば遠慮せずに直接質問をするとよいでしょう。春学期には、卒論でどのような分野を扱うかをほぼ決める必要があります。そして、秋学期には担当教員を決定し、やや細かいことまで方向性を定めなければなりません。特に、仮指導では、基本的な参考文献を指示しますので、いよいよ本格的に卒論に取り掛かる準備が始まります。
4年次は、それぞれの指導教員のもとで卒論演習を毎週受講することになります。各自で原典を読み進めたり、書籍や論文等の参考文献を収集・披読したりすることが要求されます。春学期は、就職活動や教育実習、あるいは進学希望者の受験勉強も重なりますが、できる限り、論文の構想を練りつつ、必要な資料を読み込まなければなりません。秋学期開始までにはおおよその目次を作成し、執筆に取り掛かれる準備が必要です。秋学期には、卒論を書き進めつつ指導を受けます。12月には完成し、提出となります。
東洋哲学コースの演習テーマについて紹介しています