Notice大切なお知らせ

時の権力に阿ることなく信念に沿って

第20回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」贈呈式

2部門3作品での大賞、3部門3作品での奨励賞を授賞

2021年3月11日、第20回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」の贈呈式が開催されました。2部門3作品での大賞と3部門3作品での奨励賞授賞となり、受賞者には賞状、副賞のメダル及び目録が授与されました。本賞及び授賞作等についてはプレスリリースをご覧ください。

⇒プレスリリース:第20回ジャーナリズム大賞作品決定

第20回の記念の年を迎えた本年度の贈呈式でしたが、新型コロナウィルス感染症対策のため、例年のスケジュールから約3か月遅れての開催となり、受賞者、田中愛治総長、秋山選考委員の最小限の列席者により執り行われました。

※記念撮影時のみマスクを外しております

贈呈式では、田中愛治総長から冒頭で式辞がありました。


「本賞にその名前を冠する石橋湛山は、ジャーナリストとして長く活躍した後、本学出身者として初めて内閣総理大臣になった人物です。石橋は自由でリベラルな信念を持ち、小アジア主義という謙虚な考え方を示し、また、時勢に右顧左眄することもなく、自らの主義主張を貫きました。また、権力に拘泥することなく、自分の体調が悪くなった時に潔く首相の座を辞する、自分の信念に沿って生きてきた人物です。

このことは、早稲田大学の創立者である大隈重信とも共通していると思います。明治14年の政変(1881年)にて下野した際に、大隈は日本は近代国家として成長していくためには2つ必要なことがあると考えました。一つは議会制民主主義の実現であり、もう一つは近代的な教育の確立により国民を育成することでした。その第一の目的を達成するため、明治15年(1882年)の4月に立憲改進党という野党を設立します。続けて同じ年の10月に早稲田大学の前身である東京専門学校を創立しました。国民の教育と議会制民主主義の確立を同時期に目指したのです。

石橋にしても、大隈にしても、どちらも保守の政治家でしたが、彼らは共に在野精神を持っていました。在野精神というのは単に政権担当政党に反対することを意味するのではありません。そのことよりも、時の権力におもねない、自分の信念に沿って判断し行動するという精神だと考えるべきです。だからこそ、野党の政治家であれ、与党の政治家であれ、石橋や大隈のように在野精神を持つ政治家が存在していることの意義があり、早稲田大学の伝統もそこにあると思います」

「歴代の本賞授賞作品を拝見しておりますと、非常に優れた作品を選んでおられますし、その選ばれた作品から推測しますと、選考委員の方々は『時の権力に阿ない、自分の信念に沿って判断し行動する』という、まさにこの在野精神について、深い見識と理解を持たれていることが窺い知れます。今年度も、緊張感のある重要な問題に果敢に挑戦された取り組みが授賞作品として選出されています。また、歴史的に深く掘り下げながらも、今日への強いインプリケーションを有する作品などをも選ばれています。

申し上げるまでもなく、本日3月11日は、甚大な被害をもたらし多くの命が失われました東日本大震災発生からちょうど10年目となります。昨年度までにジャーナリズム大賞では、東日本大震災に関連する6作品が授賞されていますが、今年度も福島第一原発を扱った作品が選出されています。時節にかなった作品を選考委員の方々に選出いただいたと考えております。

現代の問題、もしくは歴史的にみても今日にとって意義深い問題に挑み、成果をあげられた受賞者の皆様に、敬意をもってお祝い申し上げたいと思います。本日は本当におめでとうございます」


続いて選考委員を代表して秋山 耿太郎氏から講評が述べられました。

講評 秋山 耿太郎委員 “健全な社会の声は、一つであるべきではない”

「選考委員を代表いたしまして、今回の6作品について選考の経過を含めて講評いたします。

最終選考には11作品が残りました。新聞や書籍、テレビなど馴染みのある媒体の作品に加えて、インターネットを活用して取材発信にいろいろ工夫を凝らした作品が多かったことが特色ではないかと思います。このところなにかと話題の多い、文春砲、週刊文春のスクープ記事なども最終選考に残りました。いずれ劣らぬ有力作品、有力候補のなかから各部門の大賞、奨励賞をふるい分ける最終選考会はオンラインで行われましたが、大変活発な議論になりました。行ったり来たりしながら意見が集約され、大賞に3作品、奨励賞に3作品が決まった次第です」

【公共奉仕部門 大賞】
かんぽ生命不正販売問題を巡るキャンペーン報道
西日本新聞社 かんぽ生命不正販売問題取材班代表 宮崎 拓朗(西日本新聞社 社会部)

「大賞の3作品のうち、公共奉仕部門の西日本新聞社の取材班による「かんぽ生命不正販売問題を巡るキャンペーン報道」は、2019年5月から長期間、断続的に新聞に掲載されたものです。郵政民営化で、全国津々浦々の郵便局も民営化されましたが、実際の仕事の現場では、「かんぽ生命」の保険料二重払いや、お年寄りをだまして解約させるなど、不祥事が相次いでおりました。現場に割り当てられた営業ノルマを達成するため、無理な契約を重ねるなどしていたのです。昔から多くの人々が信頼していた郵便局。その仕事がこれでいいのだろうか。新聞の連載がはじまると大きな反響を呼び、被害に遭った人たち、あるいは郵便局関係者からの沢山の情報提供、内部告発が寄せられたそうです。

郵政民営化に伴う合理化、営業利益重視の路線によって、全国各地の郵便局の「かんぽ生命」事業が構造的に歪んでしまった実態が次々に明らかになっていきました。そして、郵政グループ3社の社長交代にまで発展しました。息の長い地道なキャンペーンが実を結んだことは、本当に良かったと思います。取材班の皆様ご苦労様でした」

【公共奉仕部門 大賞】
「桜を見る会」追及報道と『汚れた桜「桜を見る会」疑惑に迫った49日』の出版 ネットを主舞台に多様な手法で読者とつながる新時代の試み
毎日新聞統合デジタル取材センター「桜を見る会」取材班代表 日下部 聡(毎日新聞 東京本社)

「公共奉仕部門で、もう一つの大賞は、毎日新聞統合デジタル取材センター「桜を見る会」取材班による「『桜を見る会』追及報道と『汚れた桜「桜を見る会」疑惑に迫った49日』の出版、ネットを主舞台に多様な手法で読者とつながる新時代の試み」です。

政府の公式行事として予算化されている新宿御苑での「桜を見る会」が、実際には、時の首相が地元の後援会関係者を多数招いて接待する場になっていたという、あの疑惑を追究しました。安倍晋三首相は明治以降の歴代首相の中で、最も長い期間、総理大臣の椅子に座っていた、とても強い政権でした。この取材チームは、政治取材の舞台である記者クラブなどとは距離を置いて、自由な立場でこの問題にアプローチします。SNSを活用して、この問題に関心のある多くのリクエストに応えるなどして、「桜を見る会」の事実関係はどこまで分かってきたのか、どこが分からないのか、首相官邸で開かれる日々の記者会見の問題点は何か、などの点にも踏み込んで、分かりやすく説明していきました。

古い報道機関である新聞社が、時代の変化についていくための一つの試みとしても注目される仕事であったように思います。取材センターの皆さん、ご苦労さまでした」

【草の根民主主義部門 大賞】
『証言 沖縄スパイ戦史』
三上 智恵

「草の根民主主義部門での大賞は、ジャーナリストであり映画監督でもある三上智恵さんの著作、「証言 沖縄スパイ戦史」です。三上さんは、ドキュメンタリー映画「沖縄スパイ戦史」を制作し、各地で公開され、数々の賞を受けていますが、映画だけでは描き切れなかった部分を明らかにすべく、さらに関係者への長時間におよぶインタビューを重ねて、この本を書きあげました。新書版でありますが、700ページを超す大変分厚い本です。中身もまた、ズシリと重い内容です。

舞台は太平洋戦争末期の沖縄。アメリカ占領軍と日本の敗残兵との、山の中でのゲリラ戦が続き、沖縄の少年たちもそこに駆り出されていきます。陸軍中野学校出身の青年将校が、少年たちを組織して展開する「秘密戦」もありました。それを追っていくと、軍隊と住民の間に入り組んだ関係があり、日本軍による住民虐殺なども含めて、沖縄で戦われた戦争の姿が実際にはどんな風であったのかが、浮彫になっていきます。「秘密戦」に関与したであろう陸軍中野学校出身の青年将校や沖縄の少年たちは、戦後の日本で何を考え、どのように生きてきたのか。戦争とは、国家とは、人間とはなにか。筆者の深い思いが、読者によく伝わってくる作品です。三上さんのご努力に敬意を表します」


「奨励賞も3作品あります」

【公共奉仕部門 奨励賞】
『ふくしま原発作業員日誌 イチエフの真実、9年間の記録』
片山 夏子(東京新聞社会部)

「公共奉仕部門の奨励賞は、東京新聞の記者・片山夏子さんの著作「ふくしま原発作業員日誌、イチエフの真実、9年間の記録』です。ちょうど10年前の今日、2011年3月11日の大地震と巨大津波に吞み込まれた東京電力福島第一原発の事故現場は、今なお、廃炉の道筋さえも見えてきていません。いったい、どうなっているのか。片山さんは厳重なかん口令が敷かれている現場の作業員たち一人一人を、丁寧に、粘り強く、取材し続けました。新聞の連載記事に加筆した本が受賞作です。

原発事故の現場の作業員たちは、大変に過酷な労働条件の下で働いています。放射能の「被ばく線量」を、絶えず気にしていなければなりません。一人一人の作業員の生活と意見、働く環境、待遇、廃炉作業の実態など、時間をかけて集めた一つ一つのディテールを積み重ねていくと、巨大な原発事故の全体像が浮かび上がっていきます。それは、「アンダーコントロール」などとは、とても言えない姿です。

片山さんは本日、福島の現場に行っておられますが、長い年月にわたる粘り強い努力、大変、ご苦労様でした」

【草の根民主主義部門 奨励賞】
NHK BS1スペシャル「封鎖都市・武漢〜76日間 市民の記録〜」
房 満満(株式会社テムジン)

「草の根民主主義部門奨励賞の「封鎖都市・武漢〜76日間 市民の記録〜」は株式会社テムジンの房 満満さんが、ディレクターを務め、NHK BS1スペシャルで放映されました。中国の巨大都市・武漢が、新型コロナウィルスで都市封鎖されていた2020年の冬から春にかけての76日間のドキュメントです。

中国政府、武漢市当局による厳しい情報統制が続く中で、閉じ込められている武漢の人々の苦しみ、悲しみ、息遣い、本当の姿を伝えたいと、奮闘努力をした中国の若い人たちがいました。自分も感染しながら、日々の記録「武漢封城日記」をインターネットで発信し続けたソーシャルワーカーの郭晶さん、そして、遠い北京から、ネット上の武漢市民の多様な声を集めて発信し続けた、北京のインターネットラジオ局「故事FM」で働いている若い人たちです。

房満満さんはこれらをドキュメンタリー番組にまとめて、日本の視聴者に伝える役割を果たしてくれました。これによって、新型コロナウィルスがいかに深刻な感染症であるのかが、初めてよく分かった人も多かったと思います。房満満さんありがとうございました。

この映像のなかに、未知の感染症発生を警告して、当局から睨まれつつ亡くなった武漢の李文亮医師の残した言葉が出てきます。「健全な社会の声は、一つであるべきではない」、という言葉です。世の中には、様々な意見があり、対立がある。支配者から見ると「不健全」な、流動的な社会こそが、実は、「健全」な社会なのではないか。李文亮さんは、そう言いたかったのではないでしょうか」

【文化貢献部門 奨励賞】
サクラエビ異変
静岡新聞社「サクラエビ異変」取材班代表 坂本 昌信(静岡新聞社編集局社会部)

「文化貢献部門の奨励賞は、静岡新聞社の「サクラエビ異変」取材班が2018年11月から折々にキャンペーンを続けてきた連載「サクラエビ異変」です。

駿河湾で獲れるサクラエビは、色がきれいで、とても美味しく、静岡を代表する海産物です。ところが近年、漁獲量が大きく減ってきました。その原因は何か。取材班の皆さんは、様々な角度から、実に粘り強い取材を続けました。その結果、いくつもの複雑な問題点が浮き彫りになってきます。

山梨県から駿河湾に流れ込んでくる富士川の上流の生コン工場による不法投棄、アルミ精錬工場の汚泥垂れ流し、問題を抱える企業と山梨県庁との馴れ合いに近い関係、富士川の漁業組合が企業からこっそり補償金をもらっていた問題、一方では、駿河湾の漁民の漁業権の在り方にも微妙な問題があること…。関係者それぞれの立場で、「本音」と「建て前」が交錯し、利害が絡みあう人間社会の姿が浮かびあがってきます。地元新聞社ならではの力作であります。取材班の皆さん、長期間の連載、ご苦労様でした。

以上、今年も、とても良い作品を選ぶことができました。受賞された皆様、おめでとうございます。そして今後とも、ジャーナリズムの旗を高く掲げて戦い続けるよう、ご健闘をお祈りいたします」


各受賞者の方々の挨拶

各受賞者の方々の挨拶につきましては、準備整い次第、以下からご覧いただけます。

【公共奉仕部門 大賞】
  かんぽ生命不正販売問題を巡るキャンペーン報道

【公共奉仕部門 大賞】
  「桜を見る会」追及報道と『汚れた桜「桜を見る会」疑惑に迫った49日』の出版 ネットを主舞台に多様な手法で読者とつながる新時代の試み

【草の根民主主義部門 大賞】
  『証言 沖縄スパイ戦史』

【公共奉仕部門 奨励賞】 ※公開準備中3/26
  『ふくしま原発作業員日誌 イチエフの真実、9年間の記録』

【草の根民主主義部門 奨励賞】
  NHK BS1スペシャル「封鎖都市・武漢〜76日間 市民の記録〜」

【文化貢献部門 奨励賞】
  サクラエビ異変

本賞は広く社会文化と公共の利益に貢献したジャーナリスト個人の活動を発掘し、顕彰することにより、社会的使命・責任を自覚した言論人の育成と、自由かつ開かれた言論環境の形成への寄与を目的としています。
第21回(2021年度)「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」の受付期間は2021年4月20日(火)~ 2021年6月1日(火)です。応募詳細につきましては今春に発表いたします。たくさんの作品の応募・推薦をお待ちしております。

石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞20周年記念展示

「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞 -20年の歩み」を2021年5月に開催いたします。お近くにお越しの際は、是非、お立ち寄りください。

詳細はあらためて本賞WEBサイトにてお知らせいたします。

開催場所)早稲田大学歴史館
開催期間)2021年5月14日(金)~6月20日(日)
開館時間)10:00~17:00
休館日)6月2日(水)、9日(水)、16日(水)
※開館時間等は変更になる場合がございます。

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