第20回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」贈呈式 受賞者挨拶 ―宮崎 拓朗 氏

※第20回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」贈呈式 式辞・講評 はこちら

【公共奉仕部門 大賞】
かんぽ生命不正販売問題を巡るキャンペーン報道 (西日本新聞)

西日本新聞社 かんぽ生命不正販売問題取材班代表
宮崎拓朗(西日本新聞社 社会部)氏の挨拶

 

このたびは身に余る賞をいただき誠にありがとうございます。
地道な取材を高く評価いただき、記者としての遣り甲斐をあらためて感じるところです。

かんぽ生命の不正販売問題の取材をはじめたのは、ある郵便局員の方からの情報提供がきっかけでした。その内容は「郵便局に信頼を寄せる高齢者に保険をだまして売っている」、というものでした。実際に取材した認知症の女性は、1年間に11件もの保険に加入させられ、月額の保険料は25万円にもなっていました。現場の郵便局員たちに会うと、「本当はやりたくないけれど重いノルマを課され、やむを得ず不正をしている」、「営業成績がわるければ懲罰研修に参加させられて厳しい指導を受けなければならない」という声を何度も聞きました。

もともと国の事業であり、民営化された今も身近なインフラである郵政事業で、利用者が騙され従業員が苦しめられているという実態がわかり許せない思いでした。相手は国内有数の大企業なので、そう簡単には不正を認めるとは思えませんでした。何か月もかけて関係者に接触し、証言や内部資料を手に入れていきました。これに加えて、LINEなどのSNSでも情報が寄せられ、その数は1000件に上りました。このように昔ながらの取材手法に加え、新しい情報収集の手法を組み合わせることで、十分な証拠が集まり、今回の成果につながったのではないかと考えています。

今回の報道は西日本新聞だけが行ったわけではありません。他の報道機関も、独自の取材により不正の実態を明らかにしました。そのようななかで本紙の報道を高く評価頂き、誠に感謝いたします。

おかしいと感じたことを粘り強く報じ続けた姿勢を見て頂けたのではないかと受け止めております。既存のメディアに対しては、厳しい視線が注がれるようになっていますが、逆に言えば、意義のある報道の価値が以前よりも評価してもらえる世の中になったのではないか、それが今回の多数の情報提供につながったのではないかと考えております。今回の報道は私一人で続けたわけではなく、同僚たちの協力が不可欠でした。そしてなにより、郵便局の現状を変えたいと考え、取材に協力くださった多くの郵便局員の方々に敬意を表したいと思います。

今回の報道で、地方発のニュースでも世の中を動かせるという自信を持つことができました。受賞を励みに記者生活を続けていきたいと思います。このたびは誠にありがとうございました。

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