Notice大切なお知らせ

第20回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」贈呈式 受賞者挨拶 ―三上 智恵 氏

※第20回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」贈呈式 式辞・講評 はこちら

【草の根民主主義部門 大賞】
『証言 沖縄スパイ戦史』 書籍(集英社新書)

三上 智恵 氏の挨拶

 

このたびは大変名誉ある賞をいただき恐縮しております。750ページという分厚い本でしたが、選考委員の皆様には深く読み込んでいただいたことに心から感謝しております。

私は小学校の頃から、沖縄のことをずっと考えて45年、沖縄に住んでから26年、生まれは東京ですが、沖縄以外には居場所がないような人間です。
ずっと思うのは、戦後75年経っても、今の沖縄、どうして戦争とかそれに匹敵する基地、その恐怖、人権侵害から自由になることができないのだろうと長い間考えております。たとえば、今月中に、宮古島に新しい自衛隊のミサイル基地のための弾薬庫が完成してしまい弾薬が運び込まれます。辺野古だけではなく、離島を含め沖縄で進んでいる軍事要塞化の問題は、本当に日本の運命を変えるようなことなのにほとんど報道されません。
現在でも、沖縄戦の遺骨は3000体くらい残っているとされ、それを一生懸命掘っている方々がいます。そのなかで、南部の土を、あの辺野古の大浦湾の埋め立てに使うという政府の計画があり、それを止めるためのハンガーストライキが先週1週間行われていました。国に計画の撤回を求めると同時に、玉城デニー知事に土砂採取の認可をしないで欲しいと訴えるもので、県民を分断する痛みも覚悟の壮絶なハンストでした。が、全国の人は知らない。こうやって戦争や基地の問題に抗う沖縄の苦しみが日常になってはならない、この状況をなんとかしたいと思って、この本を書きました。
たとえば未だ遺骨が回収されていない戦没者3000人は、今も、誰かが掘ってくれて、自分の家に帰りたいと願って75年沖縄の土に埋まっています。もちろん沖縄の住民だけでなくて、日本兵、朝鮮半島から来た方々、それからアメリカ兵も埋まっています。彼らの骨は辺野古に投下されたらなんというでしょうか。また沖縄が武力で襲われる日に備え、もっと強い軍隊と頑丈な基地を作った方がいい、その礎に喜んでなろうと、もし彼らの口があればそう話すでしょうか。これは戦死者を二度殺すくらいの冒涜です。

今、日本中が、隣の国が怖い、そのためには強い軍隊、強い兵隊に守られたい、安心したいんだ、と言います。沖縄からなにかSOSを発信しても、隣の国が攻めてきたらどうするんだ、という一言で聞く耳を持たないというかなり病的な状況が進んでいるわけです。
今回のこの本に出てくる沢山の証言は、決して戦争秘話を掘り起越すためのものではありません。もしも私たちがこれまで、戦争の本当の姿を75年学んできたのであれば、次に戦争に近づいていく状況は止められるのではと思いますが、現実は違います。繰り返されてきた報道や、ドキュメンタリーや平和学習が、実は本質をついていなかったのではないかという反省と焦りがあります。なぜ軍隊は住民を守らなかったのか、そんな一番大事なことが理解されていないんです。

平和の礎とかいて、へいわのいじし、と沖縄では読みますが「莫大な数の人々の犠牲があって、今の平和の日本がある」という言い方を私は90%疑っています。それは生き残った側の加害性を薄める常套句でしかない。彼らの犠牲がなくても平和の世のなかを希求することは幾通りも出来ただろうと思います。彼らが本当の意味で平和の礎、基盤として生かされるためには、この人たちの悲劇をもって本気で次の悲劇を止めるために、私たちが戦争の本質を掴みとって、次の不幸を未然に防ぐために汗を流す以外にないと思っています。

今回、早稲田ジャーナリズム大賞を戴き、報道されたり、世の中に知ってもらう機会が増えた事をとてもありがたく思います。私たちがやってきた地道な活動に光があたって、貴重なおじいおばあの証言に足が生えていろんなところへ独り歩きしていく。戦争を止める特効薬として機能していく。そういう可能性をいただき、非常に勇気づけられました。これからも次の戦争をとめるため、沖縄の土地に立ち、沖縄の土地の声を聴いて、それを大事に活かして頑張っていきたいと決意を新たにしています。ありがとうございました。

 

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/top/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる