研究テーマ
都市インフォーマリティに対する寛容性
Urban informality and tolerance
代表者
遠藤 環教授
(1)研究目的
アジアの新興国は、急速で圧縮した発展の結果、先進国型の課題と途上国型の課題を同時発生といった複雑な状況に直面している。特にアジアの新興都市は、グローバル都市を目指す都市間競争に参入する一方で、インフォーマルな制度や実践が広範に観察される。また、東京などの先進都市においても、労働市場や居住形態の「インフォーマル化」が進み、新興都市と共通の課題に直面するようになってきた。ただし、アジア5都市、およびメキシコの比較調査(科研研究「インフォーマル化するアジア」(2019-24年度)では、東京のみがインフォーマリティに対する社会の寛容度が非常に低いことが明らかになった。ただし、先行研究からは、日本における「非寛容性」は現代的な特徴であり、歴史的には異なっていたことが分かっているが、その変化の理由は明らかになっていない。またヨーロッパでは、類似調査で高い寛容性を示す先進都市もあるため、経済の発展度だけでは説明できない。
本研究の目的は、(1)インフォーマリティに対する寛容性や格差感などの変遷の背景と原因、(2)現代の寛容・非寛容の傾向と社会的属性(所得階層、世代、ジェンダー、地域など)の関係、を理論的・実証的に検討することである。その上で、(3)インフォーマリティの機能や諸制度との関りを、都市間比較を行いながら考察する。
(2)研究の意義
2010年代に入り、グローバル化やデジタル化、少子高齢化の進展を背景に、新興都市の都市インフォーマリティに対する国際的な注目が高まっている。様々な研究分野が、異なる観点から研究を進めているが、労働・居住・生活実践・制度など、諸領域の研究が縦割りに進んでおり、統合されていない。本研究は学際的なチームを編成し、現代分析と歴史的な観点を組み合わせることで、各都市に固有の文脈と地域横断的に共通する変化を明らかにし、議論の統合を図る。各社会の特徴を踏まえた上で、都市間比較を行うことで、理論的、実証的貢献に加え、地域に合わせた政策的な示唆を提示する。
(3)運営方法
ネットを活用して定期的なミーティングの場を持つとともに、産業界とも連携して研究調査プロジェワークショップ(ハイブリッド)や、外部の専門家を招いた講演会などを実施し、議論を進めていく。
(4)期待される成果
個人、共著(論文・書籍)での成果発表を行う。メンバーの一部と企画中の共著出版(書籍)の議論へも反映させる。必要に応じて、新しい共同研究に発展させる。