研究テーマ
プラネタリー・ヘルスへ向けたグローバルヘルス外交とグローバル・ガバナンス
Global Health Diplomacy and Global Governance Towards Planetary Health
代表者
勝間 靖教授
(1)研究目的
地球規模課題の1つであるグローバルヘルスをめぐる外交とグローバル・ガバナンスを議論するとき、大きく分けて2つの研究領域がある。狭義には、ヒトの健康を中心としたグローバルヘルスに直接的に関わるアクターのみに注目し、国際協力のための各国政府による外交と、それによるグローバルヘルス・ガバナンスの構築が論じられる。広義には、ヒトの健康だけでなく、動物の健康と、それらを取り巻く生態系を視野に入れたワン・ヘルス(one health)さらにはプラネタリー・ヘルス(planetary health)の立場から、より多様な分野のアクターが健康のために構築しようとするグローバル・ガバナンスが論じられる。
2025年度には、上の2つの領域を意識して、まず、感染症対策を中心としたグローバルヘルス外交の展開と、それによるWHOを中心としたグローバル・ガバナンスの構築について研究する。さらに、地球環境との関係で、気候変動をめぐる多国間外交と、そこでの健康との関係を強化するグローバル・ガバナンスを研究する。
(2)研究の意義
国連の会議のほか、G7サミットやG20サミットなどでも、グローバルヘルス外交や気候変動外交が展開されてきた。また、国連気候変動枠組み条約の締約国会議では、とくにアラブ首長国連邦で開催された2023年のCOP28を契機に、気候変動と健康との関係に注目が集まってきた。以上のように、研究テーマそのものの重要性に加えて、今まさに議論されている重要な国際公共政策に対して研究成果を還元できるという適時性と実践性も備えている。
(3)運営方法
国立国際医療研究センターの国際医療協力局に在籍する研究者と連携することで、医学・公衆衛生学・国際保健学の研究者と、社会科学の研究者が、グローバルヘルスの外交とガバナンスについて共同研究できる体制をつくる。また、2022年10月、学内において、グローバルヘルス研究所が設置された。そこで早稲田大学の研究者が共同研究できる体制をつくっているので、そことの協働を目指す。さらに、国連大学のサステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)をはじめとした研究所に在籍する地球環境とグローバルヘルスの研究者との協働も進める。
(4)期待される成果
グローバルヘルス外交、気候変動外交、それらのグローバル・ガバナンスについて共同研究を進め、その成果を論文などにして刊行する。また、政策提言に資するような実践的な研究もおこなう。