みなさん、こんにちは。LIVSの小川です。
私は大学に入学してから茶道を始めました。始めた当時は手元に参考になるための本もなく、大学図書館に随分お世話になったものです。「え?大学図書館て勉強のための本だけじゃないの?勉強以外の本って小説しかないんじゃないの??」と思ったそこのあなた!
今回のわせとしょ探検隊では、早稲田大学図書館の持つ多彩な蔵書を「茶道」を元に紐解いてみましょう!以前の記事はこちら
はじめに
まずは、茶道のすばらしさを皆さんに感じていただける至極のエッセイをご紹介しましょう。
『日日是好日 お茶が教えてくれた15の幸せ』。森下典子さんのエッセイです。樹木希林さん、黒木華さんらが出演して映画化されたことでも話題になりました。
タイトルになっている「日日是好日(にちにちこれこうじつ)」とは、有名な禅語の一つで「良い日も悪い日も、その一日一日が素晴らしいものである」という意味です。森下さんの軽やか且つ繊細な言葉を通じて、茶道の奥深さを感じることができます。これを読めば、あなたも茶道を始めたくなること間違いなし?!
さて、このエッセイには「予習」「復習」という表現が出てきます。茶道の稽古では、先生に自分の点前(てまえ)をみていただきます。稽古がない時には、茶道の点前、つまり茶道におけるお茶を点てる手順や作法などが書かれている、いわゆる茶道のマニュアルのような本を使って自習をします。マニュアルというだけあって、この本には他にも、お客さんとしての作法やマナーなども書かれています。この本を「教本」と言います。
茶道を始めたばかりの頃、教本を持っていなかった私は、教本が必要な時には図書館頼みでした。
本を探す
WINEの画面で「茶道 教本」と簡易検索してみましょう。
全然関係ないものばかりが検索結果に表示されてしまいました。
やり方を変えてみましょう。茶道にはいくつもの流派が存在しますが、私は裏千家なので「茶道」と「裏千家」の両方を含むという条件で、WINEの詳細検索を利用して、
検索結果の画面をスクロールしていくと・・・
この『裏千家茶道 風炉編』という本は所属する茶道サークルの部室で見かけたような気がします。地下1階にあるようですね。
早稲田分類について調べてみる
『裏千家茶道 風炉編』の請求記号を確認すると「ヲ09 04060」とあります。地下1階の蔵書は、一般的な日本十進分類法ではなく、早稲田大学独自の早稲田分類に基づいて分類されています。少し脇道にそれますが、早稲田分類の内容について調べてみましょう。
「早稲田分類」とWINEに入力して検索すると・・・
結果は表示されましたが、早稲田分類とは何かを教えてくれる本がどれなのかわかりません。
早稲田分類について本を探す
そこで、早稲田分類という語句にこだわるのではなく、「早稲田大学図書館の沿革や歴史という切り口で、早稲田分類について記載されている本」を探します。
WINEで探しても、ぱっとしなかったので、こういうときはブラウジングをしてみましょう。ブラウジングは、「明確な検索戦略を持たないまま,偶然の発見を期待して漫然と情報を探すこと.(中略)ブラウジングにより,情報検索とは異なった方向から関心事に該当する情報を偶発的に得ることもできる.」(『図書館情報学用語辞典 第4版』より引用)というものです。
中央図書館2階の参考図書コーナーを中心にうろうろ。手がかりを得るために、参考図書分類を見てみることにしました。早稲田大学に関する本はR090に分類されているようです。棚でR090の本がある辺りを探してみましょう。
おや、『早稲田大学図書館史』という本がありますね。見てみましょう。・・・早稲田分類に関する表記が発見できました。早稲田分類とはそもそも、明治18年に新潟出身学生の「同攻会」という団体が刊行した蔵書目録が元になっているようです。
つまり、早稲田大学図書館に所蔵されている本の中でも、特に古い本には早稲田分類が用いられていることになります。具体的には、図書館が2号館(現在の高田早苗記念研究図書館)から19号館に移転する前に収集された資料が主に地下1階に所蔵され、早稲田分類が使われています。
早稲田分類におけるヲは「社会」を表す分類です。「社会」の中には、体育・スポーツ、娯楽といった項目も含まれています。
地下1階へ教本を探しに行く
茶道の話から始まったのに、いつの間にか早稲田分類の話になってしまいましたね。話を茶道の教本に戻しましょう。先に確認していた請求記号「ヲ09 04060」を頼りに、地下1階へ教本を探しに行きます!
・・・『裏千家茶道 風炉編』がありました!
教本を探しに来たついでに近くの棚を見てみると、『茶道太平記』もありました!『茶道太平記』とは、茶道の歴史を軸に、日本社会の動きと茶道に関わった人々の様々なエピソードを集めたものです。茶道がどのような過程を経て今に通じるものになっていったかがわかります。
さらによくみてみると、周辺には、茶道・華道など関連する分野の本のほか、囲碁、お酒など一見全く関係がないように思えるものも。写真には載っていないのですが、スキーや相撲の本も見つかりました。スポーツを風俗や社会分野と同じ分類にする早稲田分類ならではですね。
今回は、教本の話から始まって、早稲田分類について紐解くことになりました。次回は、本格的に「茶道」について、中央図書館を舞台に掘り下げます!次回もどうぞお楽しみに!!
今回の発掘成果
- 森下典子『日日是好日 お茶が教えてくれた15の幸せ』 新潮社、2008年
- 日本図書館情報学会用語辞典編集委員会編『図書館情報学用語辞典 第4版』 丸善社、2014年
- 早稲田大学図書館『早稲田大学図書館史: 資料と写真で見る100年』 早稲田大学図書館、1990年
- 千宗室『裏千家茶道 風炉編』 淡交社、1966年
- 原田伴彦『茶道太平記』 淡交新社、1959年
バックナンバー
- 第16回 ひとつの月、たくさんの見方
- 第15回 図書館から出発!100年前の海外旅行と留学をめぐる旅へ!【後編】
- 第14回 図書館から出発!100年前の海外旅行と留学をめぐる旅へ!【前編】
- 第13回 本と言葉と春の空-季節を彩る天気の言葉-
- 第12回 早稲田大学学生服にこめられた歴史
- 第11回 あなたの知らない東京オリンピック
- 第10回 改元をどう迎えた?昭和最後の日を覗いてみよう。
- 第9回 大隈重信と自動車
- 第8回 100年前、早大生はどんな学生生活を送っていた!?
- 第7回 図書館で解き明かす、ゴジラと日本・アメリカ
- 第6回 中央図書館に眠る資料(おたから)の山~早稲田大学図書館を調査せよ!~
- 第5回 早稲田生だけど意外と知らない!? 會津八一とは
- 第4回 逍遙文庫を探ってみよう!
- 第3回 バレンタインデーの秘密に迫る
- 第2回 早稲田に眠る秘密のレシピを発掘せよ!
- 第1回 年賀状から広がる図書館の世界