今日も原ぺこ!食いしん坊のLIVSメンバー原が
今回の「わせとしょ探検隊!-発掘!早稲田のBBN-」を担当させていただきます!!!
さて、2018年が始まって1か月が経ちましたね。私は現在大学1年生なのですが、もうすぐ新年度、つまり大学2年生になるかと思うと時間が経つのがはやすぎて、恐ろしいです…。
でもこうして、一年間無事に過ごすことができたのも、
美味しいものを毎日たくさん食べていたからかなぁと。ありがとう、食事!
今年は自分でも、料理にもっと挑戦してみたいと思い、
レシピを探しに年末に近くの公共図書館にいったとき、気づいたんです。
公共図書館でよく見るレシピだけど、早稲田大学の図書館にもあるんじゃないか?と。
というわけで、今回のテーマは、
「早稲田に眠る秘密のレシピを発掘せよ!」
あわよくば、古いレシピが見つかることを内心期待しながら…
それではいってみましょう!
食に関連しそうな分類を調べる
さて、まず、いつものようにWINEのタイトル検索で「料理」や「献立」などをひいて見ました。
が、如何せん結果多すぎる!!
しかも、「料理」や「献立」というワードが入っていなくても、レシピ的なものは他にもあるだろうし、実際に触ってみて中を見て選びたい
…ということで、今回はNDC、日本十進分類法を使います!
日本十進分類法とは、簡単に言うと、本をジャンルごとに番号をつけて分類するもの。
なんと、この番号を見れば大体その本がどんな内容なのか分かっちゃうんです。
WINEのNDC検索の画面にはそれぞれの番号の意味が書かれています。
今回は、WINEのNDCのページを手がかりにして、レシピがありそうな、
596(食品.料理)
383(衣食住の習俗)
これらの食に関する分類のところに行って、現地調査してみることにしました。まさに、発掘作業という感じでワクワクですね!
まずはお目当ての3類(300番台)と5類(500番台)の一般図書が並ぶ3階へ。
中央図書館3階フロア図
実際に行ってみると、予想していたよりずっと多くの食に関する本がありました!
しかし、大学図書館だからか、どれもレシピというより研究結果をまとめたものが多かったです。
しかしせっかく3階まで来たのだからと、レシピはないかないかと手当たり次第に探していると…、
596のほうにありました!とんでもなく素敵な一冊を紹介しましょう!
『グリム家の食卓 : 手作りのオリジナルレシピ210』/ W.シュトゥーベンフォル 編 ; 石川光庸,石川サスキア 訳
東京:白水社, 2000.11
この本はグリム童話で有名なグリム兄弟の弟の妻であり、グリム童話の語り手でもある女性、
ドロテーア・グリムさんが書きためていたレシピ集!
グリム童話といえば、ヘンゼルとグレーテルのお菓子の家、
だからでしょうか。このレシピにもあま~いお菓子がたっぷり。
1800年代のレシピがそのまんまわかりやすい言葉でのっているので、実際作れちゃうんですよ。
読むだけで、あまりにも美味しそうな例をここで1つご紹介しますね
161 いちごをのせたスライスパン
フランスパンを適当な厚みの輪切りにし、つぶしたいちごをたっぷりのせ、バターを溶かしたフライパンでこんがりと焼く。砂糖をふりかけてふたをし、強火にして短時間そのままにする。食卓に出すとき、もう一度砂糖をふる。(『グリム家の食卓:手作りのオリジナルレシピ210』p.137より)
カリッとほわぁっほわのフランスパンに、
いちごがたっぷり。砂糖の甘さといちごの酸味ぴったり。
これはもう、今週末にでも作らなくては!ですね。
こんな風にグリム家の食卓に並んだであろう食事を見ていると、なんだかグリム童話がもっと身近に感じます。
文学に関する棚で予想外の出会い!
さて、一般図書を見終え、いざ、地下書庫へ!
と行きたいところですが、その前にちょっと2階の文学に関する9類(900番台)の本が並ぶエリアへ寄り道。
個人的に好きな作家の本を借りようとチラ見したのですが、なんとここで!食に関する本と遭遇!
『食卓の文学史』。そそるタイトルですね…。
早速中を開いてみると、料理の出てくる文学をずらっと紹介している書物でした。
レシピではありませんが、すごく面白い。
12月の目玉イベント、クリスマスにへろへろとワンタンをすする描写があったり、
松尾芭蕉がお酒とお菓子を楽しむ描写があったり。どうしてその食べ物なのか思いを巡らせるもよし、自分の好きな食べ物の出てくる作品から読み始めてもよし、この本は新しい文学の楽しみ方を教えてくれるようです。
こうしてここでこの書物とあったのも何かのご縁!なんだかワクワクしてしまいますね。
こんな風に、何かを探しているときに、偶然素晴らしいものに出会える幸運のことをセレンディピティ(Serendipity)というらしいです。蔵書がたくさんある早稲田大学の中央図書館には、こんなふとした出会いがたくさん転がっているのかもしれませんね。みなさんも是非、体験してみてください。
地下1階で食に関係しそうな書架に向かう
さて、長らくお待たせしました!とうとう大本命の地下書庫に入って行きますよ。
今回、わたしが調査に入ったのは、地下1階。
中央図書館地下1階フロア図
この画像を見てもわかるように、地下1階の本にはNDCの代わりに、カタカナでなんだかよくわからない分類のされ方をしています。実はこの分類方式、第1回の記事でも紹介した早稲田分類と呼ばれるもので、NDCが使われるより前、中央図書館が今の場所に移る1991 年 3 月までに受け入れられた本に対して使われていた、早稲田独自の分類なんです。つまりどういうことかというと、中央図書館が今の場所に移転するより前からあった、特に昔の資料が地下1階には揃っているということなんです!
さぁ、どんどん発掘っぽくなってきましたね。さて早稲田分類で、レシピがありそうな食に関連するところは…
早稲田分類 和漢書・文庫
「ヲ 社会」
この辺りが怪しそうですね〜。ということで早速現場にGo!です。
ここですね!書庫への扉が開きます。
一歩足を踏み入れると、目の前にはえんじ色が広がり、本が奥までずらっと並んでいます!
書棚に近づいてみると、ありました!
「ヲ8」早稲田分類では家事を指すところですね。なんだか名探偵にでもなったような達成感があります。宝探しですね。
それにしても、『嫁入文庫』や『東京味覚地図』など、タイトルだけでもすごく目を引きます。そんな逸材揃いのこの場所でわたしが厳選したレシピ集が、
この2冊です。左から『実用和洋惣菜料理』『今日の料理 : 一品五銭』です。
実は両方とも同じ著者、櫻井ちか子さんのもので、なんと!大正元年と大正五年 のものなんです。
いやぁ、早稲田の地下書庫恐ろしや。
黄緑色のほう、『今日の料理 : 一品五銭』は一品一人前が五銭以内で作れるようになっているレシピ集です。とんでもない主婦目線ですね。
下のように、材料の量もお金の単位で書かれているんです。
すいとん
材料
茄子 一銭
饂飩粉 五銭
計 六銭 (『今日の料理:一品五銭』p.97より)
この写真でもわかると思いますが、この本自体も美味しそうな色をしています。
なんとも言えない香ばしい少し甘い香りが紙からするんですよ。
さて、次は橙色の表紙の『実用和洋惣菜料理』。
何度見てもよくこんなに綺麗に本が残っていたなと感動します。しかもこの時代にカラー表紙。
著者の写真や自宅の台所の写真まで。
おしゃれですね、とても。こちらは今でも使えそうなお料理本。
例えばこんなメニュー。
ライスカレー
材料
牛肉又は鳥肉 一斤
馬鈴薯 二個
玉葱 二個
胡羅萄(中位の)一本
青豆 青く茹でたもの
湯煮玉子 三個
饂飩粉 大匙二杯
カレー粉 大匙三杯
熱湯 凡三合製法
ライスカレーとはライス卽(すなは)ち米(こめ)にカレーといふ粉(こな)を掛(か)けた物(もの)といふ意味(いみ)ですが材料(ざいれう)は右(みぎ)に擧(あ)げてある様(やう)に隨文種種(ずゐぶんいろいろ)な物(もの)を用(もち)ゐる料理(れうり)です、(後略)
(『実用和洋惣菜料理』p.144-145より)牡蠣のスープ
材料
牡蠣 六合
牛乳 六合
バタ 大匙一杯
水 五勺位
胡椒 少量製法
牡蠣(かき)の捕(と) れる時分(じぶん)に拵(こしら)へるスープで製法(せいはふ)は先(まづ)牡蠣(かき)の汁(しる)を能(よ)く絞(しぼ)り取(と)つて其(そ)の汁(しる)の中(なか)へ水(みづ)を入(い)れて(後略)
(『実用和洋惣菜料理』p.112-113より)
本当に今でも使えそう。
ということで、この二品、実際に祖母と作ってみちゃいました!!!
地下書庫で発見したレシピを実際に作ってみた
〈本日のメニュー〉
カレーライスならぬ「ライスカレー」
海のミルク牡蠣と本当のミルクで作る「牡蠣のスープ」
美味!普段のカレーよりも塩気はないのですが、いつもより時間をかけて煮込んだ野菜が甘くてとても美味しい。よく噛みたくなるお料理。
ライスカレーと銘打っているだけあってか、ルーがサラサラしていて、お米が美味しく食べられるカレーといった感じだった。
いや、もうめちゃくちゃミルク。とろけました。冬にありがたい体があったまるクリーミーなスープ。でもしつこくないんです!これは塩を少し足したら、しょっぱいくらいだったので、次回はもう少し薄くてもいいかも。
正直、大正のレシピだし、と期待していなかったのですが、本当においしかったです。櫻井ちか子大先生と出会いをくれた早稲田大学図書館に感謝ですね。
是非みなさんもこの本を手にとって試して見てください!本当にお薦めです。
わたしもこれからもっといろんなわせとしょレシピに挑戦していこうと思います。
逍遙文庫にも食に関する本が
ここまでたくさん回って来ましたが、最後に「逍遙文庫」を覗いて帰りたいと思います。逍遙文庫は、我らが早稲田大学文学部文化構想学部の前身を築いた坪内逍遙の旧蔵書で、その一部は地下1階に保管され、自由に閲覧することができるのです。何を隠そうわたしも文化構想学部なので、見ないわけにはいきません!以前職員さんに、逍遙文庫には風俗研究に関する書物もあるという話も聞いたので、ちょっと期待もあります。
逍遙文庫は入るとグリーンなんですね。
ありました!ありました!食に関する本。
中でも強烈なオーラを放っている本が…『味覚極楽』。字面だけでも濃いですね。中を見てみると食に関するたくさんのエッセイらしきものが載っています。ですが、驚くべきは裏表紙や巻末についている広告のページに、食に関するニュースや調理法がスクラップして貼ってあることです。とんでもない使用感が残っています。これを坪内逍遙がやったのかもしれない…とすると、なんだかゾクゾクしますね。やっぱり人間にとって食欲というものは揺るがないものなんだと確信。急に坪内逍遙にも人間味が感じられます。坪内逍遙は料理好きだったのでしょうか。彼の手料理が俄然食べたくなって来ました。
いい友達になれそうです。
さてさて、ここまでぐるぐるとたくさんの場所を巡ってきました。坪内逍遙とも友達になれた気がして大満足です。たくさん動いて、考えて、感じると人はお腹がすくもの、
もう腹ぺこです。ここまで読んでくださったみなさんもきっとお腹がすいてきたはず。
お腹いっぱい食べて、体力をチャージしたら、
ぜひぜひ今回のようにどっぷりと図書館の海に浸ってみてはいかがでしょうか?
今回の発掘成果
- グリム家の食卓 : 手作りのオリジナルレシピ210 / W.シュトゥーベンフォル 編 ; 石川光庸,石川サスキア 訳(東京 : 白水社, 2000.11)
- 食卓の文学史 / 秋元潔 著(福岡 : 葦書房, 1994.9)
- 実用和洋惣菜料理 / 桜井ちか子 著 (東京 : 実業之日本社, 1912.9)
- 今日の料理 : 一品五銭 / 桜井ちか子 著(東京 : 実業之日本社, 1916.1 )
- 味覚極楽 / 東京日日新聞社会部 編(東京 : 光文社, 1927.12)