みなさんこんにちは。LIVSスタッフの市村です!
去る9月13日は、中秋の名月。この機会に月を眺めた方もいらっしゃるのではないかと思います。
ずっと昔から、人々の夜を照らしてきた月。
人は、そんな月に何を見出してきたのでしょうか。そういえば、日本では「兎が餅をついている」といった見方をすることが一般的なように思いますが、他の国では違うと聞いたこともあるような・・・。
国や時代、文化が違えば、同じ月でも、見方は変わってくるかもしれません。
人は、月を見上げて何を思い描き、月に何を見出してきたのか、探っていきましょう。
WINEで「月」について検索する
まずは、新しくなったWINEで検索しましょう。
旧WINEの「件名」検索に近づけるため、「主題」に検索範囲を限定し、「月」で検索します。主題とは、資料に付与された件名などのキーワードのことです。
更に、所蔵場所を中央図書館、資料を「所蔵資料と電子資料」に限定しました。
すると、多くの資料がヒット!この多さの理由は、画面左にある「主題」のタブをクリックすると分かります。「月」以外にも、「修二月会」や「月夜野町」など、「月が含まれる語」まで表示されているのです。
ここで、更に絞り込むために「月」と、「月 文学上」を選択し、これらに関する資料だけを表示します。
月と文化や信仰
この結果を基に、さっそく資料を見ていきましょう。
結果を見ていく中で気になった資料は、『世界の太陽と月と星の民話』。
この資料は「388 伝説、民話」に分類されており、近くには様々な民話の本がありました。中には、『世界の猫の民話』という本も。こちらも気になるところですが、今回の関心は「月」に留めておきましょう。
この本には、月の黒斑に関する様々な国や地域の民話が、数多く収録されていました。
ロシアのバシキール(現在のバシコルトスタン共和国)には、継母にいじめられ、水汲みをさせられた少女が月に救いを求めたために、月には「天秤棒を持って立っている女の子」が見えるとされているそうです。アイヌでも、月には水汲みをいやがった子どもの姿が見える、というそうで、共通点が見られます。
また、ヨーロッパでは、月には「男の罪人が罰として閉じ込められている」話が多く、キリスト教化の早かった国ではその影響で、「男の罪人」がロシアではカイン、フランスではユダなどのキリスト教における罪人になっている場合もあるそうです。
文化や信仰が違えば、同じ月でも見え方や背負う物語が変化するのですね。
月を信仰の中で解釈する場合もあれば、月自体を信仰する場合もあるようです。
月の神秘性
WINEを見て次に気になったのは、『月 人との豊かなかかわりの歴史』。
こちらは「446 月」の棚に配架されており、他にも月に関する資料が集められそうです。
この書籍には、月の神秘を表わす例として、月の神秘を治療に取り入れた「月医者」というものがいたことも書かれていました。この月医者がいたというのは18世紀末のベルリンだそうで、窓から月に向かって患部を突き出すと、骨折が治るのだそうです。本当かどうかはさておき、それを信じたくなるような神秘性が、月にはあるということなのでしょう。
科学的な視点からの月
さて、ここまでは、眺められる月、物語られる月について見てきましたが、続いては少し科学的な視点からの月も見てみましょう。
WINEの検索結果には、目を引く『月』というシンプルなタイトルが。
これらの『月』という、著者も時代も違う本が、地下書庫にそれぞれ所蔵されていました。
1冊は大正元年、1912年に発行された、『月』。
月の大きさや月食など、科学的に月を分析したものでした。巻頭には「月世界より地球を望む圖」がついており、「かりに月の世界の住民となつて、地球が充分に耀いた所を想像的に示したもの」であるとされています。
切り立った岩山のようなものの間から地球が見える想像図は、当時の人々の想像を今に伝えてくれます。
一方、もう一冊の『月』という題名の本は、1968年に刊行されていました。この本にはアポロ計画の実行を前に、月に対する関心が高まっていると書かれており、月を科学的に、わかりやすく紹介していました。
月と、人間の歩み
同じ『月』というタイトルでも、月からの景色が想像だった時代の本、それが実現しようとしている時代の本、そしてそれらを、月面着陸が実現した後の時代に生きる私たちが手に取ることができるというのは、なんだか不思議な感覚がしてきます。
遙か昔、信仰の対象となり、神秘を纏って物語られ、見上げられていた月は、いまや人間の手の届く場所になりました。
この探検を経て、「月」が、人間の歩みを教えてくれたかのようでした。
さて、今回はここまで。次回の記事もお楽しみに!
今回の発掘成果
- 『世界の太陽と月と星の民話』日本民話の会,外国民話研究会 編訳、三弥井書店、2013年
- 『月 : 人との豊かなかかわりの歴史』ベアント・ブルンナー 著 ; 山川純子 訳、白水社、2012年
- 『月』一戸直蔵 著、裳華房、1912年
- 『月』古在由秀 著、岩波書店、1968年
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