Comprehensive Research Organization早稲田大学 総合研究機構

Project Research Institutes

プロジェクト研究所

国際和解学研究所

Institute of International Reconciliation Studies

Research Theme 研究テーマ

「和解」とは、個人や集団などの主体を構成する要素が、相互的なコミュニケーション・対話のもとで変容するプロセスであり、また対話と同時並行で、新たな関係が形成されていく行為そのものである。しかし、そうした和解は、常に「現実界」での財の配分・そして労働と生産活動にさらされ、同時に、重層的社会の中で公共財の創出や配分を意味づける制度という「象徴」を介して展開される。現実界と象徴界という心理学的概念を使いながら、集合的感情と記憶を社会科学の土台に接合し、行為や意味をめぐる紛争の側面を、深く分析していくことを可能にする学知の探求を行う。
豊かさを手に入れた東アジアをヒントに、現在の世界の紛争において、国内のポピュリズム・ナショナリズムに内在する紛争原因を、国内政治と国際政治という分析レベルの境界を超えて、国際比較の観点も交えながら検証することが課題の一つとなる。

Research Director 所長

浅野 豊美
浅野 豊美 あさの とよみ
政治経済学術院

Member メンバー

  • 浅野 豊美 政治経済学術院政治経済学部教授
  • 稲村 一隆 政治経済学術院政治経済学部教授
  • 梅森 直之 政治経済学術院政治経済学部教授
  • 小野坂 元 政治経済学術院現代政治経済研究所次席研究員(研究院講師)
  • 川口 博子 政治経済学術院現代政治経済研究所次席研究員(研究院講師)
  • 黒田 一雄 国際学術院大学院アジア太平洋研究科教授
  • 小山 淑子 社会科学総合学術院社会科学部准教授
  • 土屋 礼子 政治経済学術院政治経済学部教授
  • 劉 傑 社会科学総合学術院社会科学部教授
  • 天江 喜久
  • 有光 健
  • 李 秉哲
  • 金 泰植
  • 熊谷 奈緒子 青山学院大学教授
  • 高 賢来 関東学院大学専任講師
  • 丁 智恵 東京工芸大学芸術学部映像学科准教授
  • 槌谷 裕司 国立公文書館
  • 長尾 龍一 東京大学名誉教授
  • 長澤 裕子
  • 宮本 悟 聖学院大学政治経済学部教授

研究キーワード

和解  ナショナリズム  記憶  人権  エスニシティ

研究概要

国際和解学は、内戦や民主化に伴う社会的紛争後の和解を志向してきた紛争解決学の延長に、想像の共同体としてのネーションとネーションの和解が、いかに可能となるのか、その社会的制約条件を追求せんとするものです。国民間和解という理想を規範として追求するアプローチもありえれば、それを阻む国内外の社会構造を現実的に分析するアプローチもあり得ます。また、和解という理想は、常に各主体が掲げる「正義」との緊張関係を孕んでおり、正義自体の研究においても、応報的正義と修復的正義という異なる概念が提出されています。さらに、主体としての国民という集団は、その内部に、政治外交指導者、市民運動家、メディア関係者、そして学者・研究者を抱えており、そうしたよりミクロの主体は、公共性や現実の政治の背後にある普遍的正義と結びつけながら、国民が共有する集合的記憶に訴えかけます。記憶と価値は、まさに結びついて生きた感情を生み出し続けています。
ゆえに、国際和解学が注目するのは、集団を生み出しているところの共有された記憶であり、それを現実と結ぶところの価値や正義のあり方です。それらに注目しながら、国民を超える想像力の可能性を探り、制約条件を探ることが探究の焦点となります。
また、集団や制度を構成する要素に注目しつつも、国民を超えていくトランスナショナルな活動や思想を支えるジェンダー、階級、エスニシティーが織りなす、人間の新たな活動や思想にも注目します。こうして和解は、達成されて終わる性格のものとしてのみならず、常に生み出され続ける行為としても、論じられることとなります(詳しくは『和解学叢書』明石書店、第1・2巻参照)。各々の正義が許容し得る国民相互の和解を論じるため、実証研究の切り口は、主体としての国民を集合的記憶の共有という形で成立せしめているところの、国民内部に存在する記憶と「正義」・価値に関わる集団です。それは、政治外交指導者、市民運動家、メディア関係者、そして知識人・研究者ということができるでしょう。そうしたよりミクロの主体は、公共性や現実の政治の背後にある普遍的正義と結びつけながら、国民が共有する集合的記憶に訴えかけます。記憶と価値は、まさに両者が結びつくことで、人間個人の生きた感情を生み出し、集合的感情をも支え続けています。
ゆえに、国際和解学が注目するのは、個人に意味を与え、集団を生み出しているところの共有された記憶であり、それを現実と結びつけるところの価値や正義です。それらに注目しながら、国民を超える想像力の可能性を探りながら、その制約条件を探ることが探究の焦点となります。国民を超えていく想像力を構想しようとするトランスナショナルな活動・思想、つまりはジェンダー、階級、エスニシティーという問題も重要です。国民を超えて織りなされてきた、人間の新たな活動や思想と、国民という想像の共同体を可能としている記憶や価値との間の、葛藤に目を向けながら、和解を、達成されて終わる性格のものとしてのみならず、常に生み出され続ける行為としても論じる必要があります(詳しくは『和解学叢書』明石書店、第1・2巻参照)。
まとめれば、国際和解学は、国民相互の和解に向けて、想像力に働きかけ集団や制度を構成する記憶や価値という要素に注目しつつ、「和解」という関係が想像されていくようになるための条件を、社会経済的な「(下部)構造」と、人間の想像力が生み出す世界(想像界)とを意識しつつ、その間に挟まれた集団や制度、そして行為のあり方をめぐって考察するものということができるでしょう。集団や制度を作り出す要素そのものが、いかにジェンダー、エスニシティ、そして人権をめぐって、国際的な紛争を生み出しているのかに注目することで、「真正の和解」をめぐる感情的な議論は、むしろ、現在の国際社会を理解し、グローバル社会で我々を導く有力なツールへの糸口となることでしょう。比較政治学と国際政治学を超え、経済学、社会学、人類学をも架橋しつつ、思考することが求められています。

関連資料

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連絡先

kokusaiwakai[at]list.waseda.jp

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