開催日時
2024年7月8日(月)12:25-13:00
場所
ZOOMウェビナー
参加資格
WIAPS専任教員・助教, GSAPS兼担教員, WIAPS受入の交換研究員・訪問学者・外国人研究員, GSAPS修士課程・博士後期課程在学生
報告1
報告者
ブフ アレクサンダー(早稲田大学アジア太平洋研究科 教授)
報告テーマ
韓国のナショナル・アイデンティテと日本:歴史認識を越えて
要旨
冷戦後の韓日関係に関する既存研究の中で、ナショナル・アイデンティティという要素が最も広く議論されている問題の一つである。韓国側に焦点を当てた研究は、大きく「植民地体験派」と「冷戦後派」に分けられる。前者は韓国のナショナル・アイデンティティにおける反日感情、又は日本の他者性を日本の植民地政策の直接的な経験に遡っていると主張する。他方、後者は、冷戦終焉後の韓国国内の諸展開に焦点を当てて、共産主義の脅威の衰退や民主化後の保守と進歩の対立のような要因の重要性を訴える。ここではこれらの分析の妥当性を否定するつもりはないが、韓国のナショナル・アイデンティティにおける他者としての日本の位置づけを形成させたのは「歴史」が唯一の要因ではなかったこと及び冷戦期の重要性を指摘するつもりである。つまり、本研究においては、1970-1980年代に焦点を当てて、この時代の日韓の経済関係と「日本の経済侵略」という言説の分析を目指す。この言説は民主化運動の担い手となった「386世代」のアイデンティティ形成過程の中で重要な役割を果たし、1990年代に浮上した歴史問題の重大な背景となった。