Graduate School of Asia-Pacific Studies早稲田大学 大学院アジア太平洋研究科

その他

中井 一芳

2002年9月修士課程修了
国際協力コンサルタント/民間企業

GSAPSでの経験は、現在の仕事(業務)においてどのように役立っていますか。

私の専門分野は教育(理科教育・教師教育)です。大学卒業後は中学校の教員をしていましたが、青年海外協力隊への参加をきっかけに、開発途上国における国際教育協力の仕事をライフワークとしてきました。現在は民間のコンサルタント会社からJICAに派遣され、南部アフリカのザンビアにある一般教育省に勤務しています。ここでの仕事は、教育省とJICAが共同で実施する技術協力プロジェクトで、技術協力専門家(チーフアドバイザー)として事業の運営管理や理数科分野の人材育成をすることです。効果的な事業の実施や教育関係者の育成には、教育分野の専門性と共に国際関係・国際協力の知識が必要です。私の場合は、大学教育学部で教育分野の知識を、GSAPSで国際関係や国際協力の知識を学び、二つの分野の知識を活用することで途上国における国際教育協力の実践が可能となっています。GSAPSでの経験は私の仕事を進める両輪の一つとなっており、同研究科での経験がなければ今の自分はありません。

在学中、特に印象に残っていることや忘れられないエピソードはありますか。

指導教官であった山岡先生が、ゼミ(アジア太平洋地域の国際関係)で繰り返し仰っていたことが、今の仕事でも拠り所となっています。ゼミではホーチミンやマルコス、孫文など、アジア各国のリーダーの軌跡を学んだり、山岡先生の専門分野でもある太平洋問題調査会の関係者だった渋沢栄一や澤柳政太郎といった人物の経歴を調べる作業を通じて、当時の国際情勢や日本の立場に関する議論をしました。その中で山岡先生が強調されたのは、「当時の人々の判断や彼らが行ったことを現在の社会の常識や価値観で見てはいけない」ということでした。私は今でもこれを途上国の開発現場に当てはめて、現地の人々が下す判断や事業の実施方法を日本や自分の価値観だけで見ないようにし、彼らの物差しを理解するように努めています。山岡先生には、時代や社会に即した考え方で物を見ることの大切さを教えていただきました。

あなたがGSAPSで培った財産は何ですか。

国際関係や国際協力に関する専門的な知識や最新の情報を、大学院修了後も興味を持って調べたり、学んだりする習慣といえます。例えば、経済発展論の授業で学んだ開発を捉える様々な理論が、その後どのような場で適応されたり変化したりしているのか、というようなことに今でも関心を持ち続け、関連書籍や学会で学ぶように努めています。大学院での勉強は2年間だけでしたが、修了後16年経った今でも、経済発展論や国際開発論、人的資本論、開発と環境など、大学院生だった時の関心が続いている分野が多いです。今思えば、そのようなテーマやトピックを授業で扱っていたのだと思います。

GSAPSでの生活は学部とはどのように違いましたか。また、大学院に入ったからこそ学べたことがあれば教えてください。

私の場合は、教育を専門としながらも実際にJICAの国際協力の仕事をする中で、国際関係分野の知識不足を痛感し、大学院への進学を決めました。将来も教育分野での国際協力事業に携わりたいという目標が明確でしたので、学部時代よりも一つ一つの授業に真剣に取り組むことができました。各授業で先生方が紹介してくれた参考図書や引用文献のリストは今でも保存しており、時々参考にしています。著名な先生方から直接授業を受けたこと、第一線の研究者が参考にしている文献を知ることができたことは、GSAPSならではだったと思います。

受験生・大学院進学を考えている方にGSAPSへの入学を勧めますか。その理由は何ですか。

私は大学卒業後、社会に出て15年経ってからGSAPSに入学しました。初めは30代後半の自分が若い学生の皆さんに迷惑をかけなければいいなと思っていましたが、入学してみると私よりも年輩の方々もおり、留学生も含めて幅広い年齢層や経験分野の学生が集まっている授業やゼミが楽しくなりました。また、社会人として身につけた時間の使い方や情報整理の方法、コミュニケーションのスキルは大学院でも役立ちました。したがって、私はかなりの社会経験をすでに持っている30歳代、40歳代の方々にこそ、GSAPSへの進学を勧めたいと思います。社会経験を若い学生の皆さんと共有し、自己を振り返る貴重な機会が持てるからです。

これからのVision,叶えたい夢などがあれば教えてください。

まずは現在ザンビアにて従事しているJICAのプロジェクト業務を成功裏に終えることです。プロジェクトは、教員養成校と周辺初中等学校が連携活動を通じて理数科教育の質を高めることを狙っています。また、ザンビアの教育省は、自国だけでなく南部アフリカ地域の教員に研修を提供するハブとなるべく種々の政策を行っています。教育の成果は数十年という単位で見ることが肝要ですが、次世代の子どもたちがその成果を享受できるよう、教育省の仲間の仕事を後ろから押していこうと思います。それがアフリカの人々の日本理解や両国の友好促進に繋がればよいと思っています。

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