開催日時
2023年1月16日(月)12:15-12:50
場所
ZOOMウェビナー
参加資格
WIAPS専任教員・助教, GSAPS兼担教員, WIAPS受入の交換研究員・訪問学者・外国人研究員, GSAPS修士課程・博士後期課程在学生
報告1
報告者
井上 史(早稲田大学アジア太平洋研究センター 助教)
報告テーマ
講和後日本「従属独立」に対する異議申し立ての原風景
―日米行政協定第17条と帝国的主権をめぐるポリティックス―
要旨
本報告では、サンフランシスコ体制成立直後の日米行政協定第17条(裁判権条項)をめぐる外交交渉および日本の市民社会における同条項の公的議論の検証をつうじて、1950年代初期日米関係の再検討をおこなう。在日米軍の排他的刑事裁判権を規定した日米行政協定(1952年4月28日発効)第17条は、19世紀に日本が欧米諸国と締結した「不平等条約」に付随した治外法権条項を、広範な日本市民と政治エリートに彷彿とさせた。朝鮮戦争のさなかにあって、占領期から常態化していた在日米軍人事件ないし日本の裁判権不在が鮮明に可視化する前世紀以降の両国の非対称な関係性は、占領体制から解かれたばかりの言論空間で活発な議論を呼び起こし、超党派的「反米」世論を醸成した。日米関係史研究において、同時期の再軍備論争は通史的叙述の対象とされてきたが、とりわけ近年注目されている日米地位協定の前身である日米行政協定をめぐる議論については、局所的言及にとどまっているのが現状である。
本報告では、両国の国家主権の拡張をめぐる対立がいかなる政策議論や市民社会の介入をともなって展開し、それが占領直後の日米関係に影響したかを、日米行政協定発効から同協定第17条改訂に至った1953年秋までの期間に焦点を当てて明らかにする。