開催日時
2019年12月9日(月)12:15-12:50
場所
早稲田大学19号館(西早稲田ビル)7階713会議室
参加資格
WIAPS専任教員・助教, GSAPS兼担教員, WIAPS受入の交換研究員・訪問学者・外国人研究員, GSAPS修士課程・博士後期課程在学生
報告1
報告者
佐々木 俊介 (早稲田大学アジア太平洋研究センター助教)
報告テーマ
【業績発表会】
廃棄物最終処分場スラム街におけるウェイスト・ピッカーの生活とインフォーマル・リサイクル:インドネシア共和国バンタル・グバンを事例に
要旨
途上国においてウェイスト・ピッキングは、貧困層にとっての重要な収入源であるのみならず、廃棄物処理の一翼を担っており、近年、ウェイスト・ピッカーによる廃品の回収(インフォーマル・リサイクル:ウェイスト・ピッカーによる廃品の回収を起点とするリサイクル)を行政による廃棄物回収に組み込み統合的廃棄物処理に関する議論が研究者や国際援助関係者などの間で盛んに行われている。しかしながら、ウェイスト・ピッカー社会の構造やリサイクルへの貢献については明らかにされていない事が多い。そこで本研究では、インドネシア共和国西ジャワ州バンタル・グバンに設置された廃棄物最終処分場の周囲に形成されたスラム街を事例に、1)社会関係、2)アクター、3)リサイクルへの貢献、4)収入レベルに関する報告を行う。本発表で用いるデータは、2010年2月より発表者が876日間(渡航回数30回)行ったフィールド調査で得られたものである。なお、下記の調査結果について構造化インタビューの結果は、構造化インタビューの実施時期と調査対象者数を括弧書きで示した。
調査地のスラム街は、世帯主の97.2%がインフォーマル・リサイクル従事者であり、インフォーマル・リサイクルにおける地位に基づいて8種類の社会関係が存在し、インフォーマル・リサイクルにおいて従事する作業により6種類のアクターが存在している(2013年の504世帯への調査より)。調査地のウェイスト・ピッカーたちが収集している廃品は80%以上がプラスチック系の廃品で占められている(2013年から2014年に行った78世帯への調査より)。ウェイスト・ピッカーたちの1日あたりの平均個人収集量は81.0kg、平均世帯収集量は126.7 kgであり、廃棄物最終処分場に運び込まれる廃棄物の総量の1.6%、プラスチック系の廃品の10.9%をリサイクルしていると推定される(2013年から2014年に行った78世帯への調査より)。ウェイスト・ピッカーの平均個人月収はUSD114.8であり(2013年から2014年に行った78世帯への調査より)、これは当地におけるインフォーマル部門の平均収入とおおよそ一致している。平均世帯月収はUSD179.5であり(2013年から2014年に行った78世帯への調査より)、これは当地における法定最低賃金と一致し、フォーマル部門におけるいくつかの職種および産業の平均収入を超えている(ただし法定最低賃金も職種および産業別収入も個人収入であり、世帯収入とは単純比較できない)。ウェイスト・ピッカーの個人収入は世帯内の労働者の人数によって大きく異なり、世帯内におけるウェイスト・ピッカーの人数が一人の場合を1とすると、2人に増えると約0.5に、3人になると約0.3になる。なお、一人世帯の平均個人収入(USD169.2)は調査対象者全体の世帯収入(USD179.5)と一致している。今後の課題として、本研究の結果は、バンタル・グバンという一つの場所についての結果であるため、今後の研究では、対象地を拡大し、本研究の一般化および相対化を行って行く。