1882年に早稲田大学を創立した大隈重信が、「東西文明の調和」を唱えたことはよく知られています。それから1世紀以上を経た20世紀末、早稲田大学は、「アジア太平洋」、「メディアネットワーク」、「生涯学習機関化」という3つのコンセプトのもとに大学改革を推進しました。その中で、本アジア太平洋研究センターが、アジア太平洋地域の共生と発展に貢献すべく1997年7月に開設されました。
本センターは、長年にわたって近代日本の社会科学的研究およびアジアの地域的研究を進めてきた<社会科学研究所>と、産官界からの受託研究・共同研究をはじめ、社会人を対象としたビジネス教育の実績を持つ<システム科学研究所>との合併により創立されました。そのため、当初は国際関係・地域研究部門と国際経営部門との2部門から構成されていました。しかし、2008年に後者は本センターより分離しました。現在の本センターは、大学院アジア太平洋研究科運営委員会(教授会)のメンバーである専任教員を主要な研究員として、早稲田大学アジア太平洋研究センター規則に則り運営されています。また、学外から交換研究員、訪問学者、外国人研究員等を受入れています。
本センターは、成長と変化の著しいアジア太平洋地域に焦点を当て、この地域における研究・教育のネットワークの構築を図るとともに、多様な研究成果、情報の発信拠点となることをめざしています。なかでも世界のトップレベルの研究者と互角の戦いができるような質の高い成果の発信を重視しています。
本研究センター研究員の現在の主要な研究活動は、(1)研究部会(本センター研究員および外部の特別センター員により構成)の研究活動、(2)科学研究費を用いた研究、(3)早稲田大学が助成する特定課題研究費および個人研究費を用いた研究から成っています。その研究成果は、主として『アジア太平洋討究』、『リサーチ・シリーズ』および『研究資料シリーズ』によって発表されています。『アジア太平洋討究』は2000年に創刊され、2025年3月現在で50号まで刊行しています(詳細は、本WEBサイトの出版活動の項をご参照下さい)。『研究資料シリーズ』および『リサーチ・シリーズ』の刊行は2010年より開始され、2025年3月末時点で、リサーチ・シリーズは7冊、研究資料シリーズは11冊を刊行しています。この外に、アジア太平洋研究科博士課程所属の大学院生の紀要である『アジア太平洋研究科論集』も、アジア太平洋研究科および本センターの合同の編集委員会によって編集出版されており、2025年3月現在で第49号まで刊行しています。
また、研究、出版活動に加えて、本センターでは、成果を広く普及すべく講演活動も随時実施しています。
こうした活動を通じ、本センターは研究の一層の質的量的向上を目指しておりますので、ご鞭撻ご指導を賜りますようお願い申上げます。
本センターの教員のほか、学内の学部・大学院・研究所、そして学外の領域を同じくする専門家の横断的な研究活動。
本センター教員・助教等の科研費採択課題一覧は以下の通りです。
2025年度採択
代表者 | 研究種目名 | 研究課題名 | 研究期間 |
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植木 千可子 | 基盤研究(C) | 台頭国の不満の源泉:ナショナリズムの要因 | 2023-2025 |
遠藤 環 | 基盤研究(A) | インフォーマリティと新しい社会契約:アジアのメガ都市を事例に | 2025-2029 |
ガーニエ大蔵 奈々 | 基盤研究(C) | Anthropological Analysis of Infertility and Diversification of Families in Low-fertility Japan | 2025-2028 |
菊地 朋生 | 基盤研究(B) | The Mechanism and Stability of Global Imbalances | 2022-2025 |
黒田 一雄 | 国際共同研究加速基金(海外連携) | 平和のための予防外交・活動としての国際教育に関する共同研究 | 2024-2028 |
篠原 初枝 | 基盤研究(B) | 満洲事変以後の国際連盟―戦後国際連合体制への継承と断絶 | 2024-2027 |
瀬田 真 | 基盤研究(B) | 海戦法規の現代的課題とその克服に向けて | 2023-2027 |
中嶋 聖雄 | 基盤研究(C) | Dream Factory, Chinese Style: Institutional Changes in the Film Industry, 2001-2024 | 2025-2028 |
鍋嶋 郁 | 基盤研究(C) | NTMsが国際貿易・地域経済に与える影響の実証分析 | 2022-2025 |
鍋嶋 郁 | 基盤研究(B) | NTMsが産業間貿易に与える影響の実証分析 | 2025-2029 |
早瀬 晋三 | 基盤研究(C) | 東・南シナ海の領有権問題への社会史的アプローチ-海洋漁業、海運、環境保護 | 2022-2025 |
ファーラー グラシア | 基盤研究(B) | Determinants of International Students’ Educational Mobility: a Comparative Study of Japan and Germany | 2021-2025 |
ファーラー グラシア | 外国人特別研究員奨励費 | フランス文化外交政策の一環としての在日フランス国際学校についての人類学的研究 | 2024-2026 |
ファーラー グラシア | 基盤研究(C) | Making transnational labor markets: an economic sociological study of Indonesian healthcare workers’ migration to Japan, Germany and Taiwan | 2025-2028 |
松岡 俊二 | 基盤研究(B) | 巨大地震予測の不確実性を踏まえた長期的災害対策と世代間公平性に関する研究 | 2024-2027 |
見市 建 | 基盤研究(C) | ムスリム社会における「進歩的」なジェンダー思想の形成 | 2025-2028 |
レーニー デイビッド | 基盤研究(C) | Pandemic Narratives in the Asia-Pacific: COVID-19 and the Contest over Global Status | 2022-2025 |
大貫 真友子 | 若手研究 | 開発途上国における拡張接触と障害者差別と偏見 | 2021-2025 |
グエン アン ハオ | 若手研究 | Developing and Validating a Sense of Urgency Scale: Unveiling the Psychological Mechanisms for Performance Enhancement | 2025-2028 |
鄭 康烈 | 特別研究員奨励費 | 日本企業による高度外国人材の雇用実態に関する社会学的研究:在日コリアンを事例に | 2023-2025 |
原田 明利沙 | 若手研究 | 19世紀半ばから20世紀初頭の軍縮・軍備制限制度化構想の検討 | 2024-2025 |
原田 明利沙 | 特別研究員奨励費 | 第一次世界大戦前の仲裁促進運動と国際紛争防止・解決の法枠組み | 2024-2026 |
本センター教員・助教の2025年度特定課題研究助成費採択一覧は以下の通りです。
代表者 | 研究種目名 | 研究課題名 |
---|---|---|
遠藤 環 | 特定課題(基盤形成) | バンコクにおける格差の動向と労働市場の分析 |
加藤 篤史 | 特定課題(基盤形成) | インドにおける州レベルの労働政策に関する政治経済的研究 |
勝間 靖 | 特定課題(基盤形成) | サステイナビリティ向上とSDGs達成における高等教育機関の役割と課題 |
菊地 朋生 | 特定課題(基盤形成) | The Distance Puzzle and Tax Havens: A Comparison of Portfolio Investment between China and USA |
黒田 一雄 | 特定課題(基盤形成) | 平和と紛争解決のための教育グローバルガバナンスに関する研究 |
篠原 初枝 | 特定課題(基盤形成) | 国際連盟から国際連合へーイギリスとアメリカの協調 |
瀬田 真 | 特定課題(基盤形成) | 国連海洋法条約における外部規則の位置づけ |
中嶋 聖雄 | 特定課題(基盤形成) | 現代中国映画産業の制度論 |
早瀬 晋三 | 特定課題(基盤形成) | アジア・太平洋地域における「戦争の記憶」の追跡調査・補足調査 |
ファーラー グラシア | 特定課題(基盤形成) | Visa schemes and care worker migration from Indonesia to Japan |
松岡 俊二 | 特定課題(基盤形成) | 厄介な問題に挑戦する新しい「対話の場」のデザインに関する研究 |
グエン アン ハオ | 特定課題(基盤形成) | Developing and Validating a Sense of Urgency Scale: Unveiling the Psychological Mechanisms for Performance Enhancement |
本センターでは、各種出版物を通じて、日頃の研究・教育活動の成果を広く社会に還元しています。
本センターでは、その学術的な研究成果を広く社会に還元すべく、年間を通じて講演・セミナー・シンポジウムを開催しています。
講演等においては、本センターおよび早稲田大学内の教員にとどまらず、国内・海外の教育機関、公的機関ならびに民間企業等から積極的に講師を迎え、多彩なテーマをとりあげています。