開催日時
2023年7月10日(月)12:25-13:00
場所
ZOOMウェビナー
参加資格
WIAPS専任教員・助教, GSAPS兼担教員, WIAPS受入の交換研究員・訪問学者・外国人研究員, GSAPS修士課程・博士後期課程在学生
報告1
報告者
見市 建(早稲田大学アジア太平洋研究科 教授)
報告テーマ
インドネシアにおける民主主義の後退と女性の権利向上政策の進展
The Advancement of Pro-women Policies under Democratic Recession in Indonesia
要旨
インドネシアのジョコ・ウィドド(ジョコウィ)政権下では、さまざまな分野の社会運動の抑圧や活動制限がなされ、民主主義の緩やかな後退が指摘されている。ところが、そうした傾向が強まる状況下の、2019年と2022年にフェミニスト諸組織が要求していた女性の権利向上についての二つの重要法案が採択された。いずれも、ジョコウィ政権の前半に一度は失敗したあと、政府や与党連合の支持を得て採択された。では、なぜこれらの法案は採択され得たのだろうか。本論は、民主主義が後退するインドネシアにおいて、フェミニスト運動の特定の要求が実現する理由を明らかにする。
本論が分析の対象とするのは、経済開発を最優先課題とするジョコウィ政権による、限定的な国家フェミニズムの特質である。すなわち、政権は経済開発の阻害要因となりうる野党勢力や社会運動に対しては抑圧的な態度を示すが、フェミニズム運動においては政権へのアクセスが確保されている。その理由は、政権および社会運動の構成と性質、国家と社会運動の相互関係によって説明することができる。本論は、ジョコウィ政権の性格について新たな側面を指摘するとともに、権威主義国家や不完全な民主主義国家における国家主導のジェンダー政策についての理論的な発展に貢献することが期待できる。