開催日時
2014年7月14日(月)16:00-16:40
場所
早稲田大学19号館(西早稲田ビル)7階713教室
参加資格
WIAPS専任教員・助手, WIAPS受入の交換研究員・訪問学者・外国人研究員, GSAPS修士課程・博士後期課程在学生
報告1
報告者
石田 友梨 (アジア太平洋研究センター助手)
報告テーマ
イスラーム改革思想における南アジアの役割
要旨
現在世界各地において、クルアーンとハディースに基づく厳格な宗教実践を求めるムスリムの動きが活性化している。イスラーム金融やハラール食品産業の発展は、この現象の一部と捉えることができよう。最も厳格な宗教実践を唱えることで知られているのはワッハーブ派であるが、その名祖は18世紀アラビア半島でイスラーム改革運動を指導したムハンマド・イブン・アブドゥルワッハーブである。巡礼のために各地からムスリムが集まるアラビア半島において、イスラーム改革思想は17世紀前後から形成されていったと考えられている。しかし、形成の過程が明らかになるにつれ、ムハンマド・イブン・アブドゥルワッハーブをイスラーム改革思想の代表とみなすことによって生じる矛盾が指摘されることとなった。
そこで本報告では、南アジアのイスラーム改革思想に着目した考察を行なうことにより、この矛盾を解消するための糸口を提示したい。南アジアにおいてイスラーム改革思想を唱えていたのは、シャー・ワリーウッラーであった。彼のイスラーム改革思想については、アラビア半島への留学時に学んできたものとする見方と、ムガル朝インド特有の政治社会状況により生まれたものとする見方の二つがある。これに対して本報告は、シャー・ワリーウッラーの著作に依拠しながら両者を架橋する見解を示し、アラビア半島を中心に論じられてきたイスラーム改革思想に対して、南アジア出身の学者たちが果たしてきた役割を明らかにすることを試みる。