Graduate School of Asia-Pacific Studies早稲田大学 大学院アジア太平洋研究科

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アジア太平洋研究科修了を迎える皆さんへ:研究科長メッセージ

早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修了を迎える皆さんへ

アジア太平洋研究科長 黒田 一雄

皆様、ご卒業、おめでとうございます。

アジア太平洋研究科を代表して、皆さんのこの門出に、心からのお祝いを申し上げたいと思います。また、オンラインでこの修了式にご視聴くださっている、修了生のご家族の方々にもお祝いを申し上げ、あわせて皆さんの大学院での勉学を支えてくださったことに対して感謝の意を表したいと思います。

 

さて、皆さんのアジア太平洋研究科での最後の1年間は、コロナ禍のため、大変な1年となりました。昨年の春学期は、大学キャンパスは封鎖され、ほぼ完全に授業がオンラインとなりました。秋からは一部教室での授業は再開されましたが、留学生の多い私たちの研究科では、日本に帰国・入国できなくなった学生も多く、オンラインの授業やオンラインでの修士論文・博士論文審査等を継続することになりました。今日の修了式はどうにかこうして対面で開催することができましたが、修了生の約半数は、この場に来ることができず、この修了式もオンラインで視聴されている状況です。

 

コロナ禍は、国際社会の在り方にも大きな影響を与えようとしています。当初から、各国は国を閉ざすことによって、感染拡大をくい止めようとし、それは現在も続き、国際的な流動性は著しく制限されたままです。また、感染対策や、ワクチンの開発・接種は、まさに地球的規模課題ですが、これまでのところ、国際協力やグローバルガバナンスが十分にその機能を果たしているとは言えない状況です。しかし、私たちは、この経験から学び、新しい国際協力・グローバルガバナンスの体制を作っていかなくてはなりません。皆さんが、GSAPSで培った学知を糧として、そうした新しい国際社会を作る過程に貢献されることを願ってやみません。

 

本日、早稲田大学を卒業される皆さんに覚えておいていただきたいのは、そうした学知の社会への活用・貢献ということが、この大学の設立理念であるということです。早稲田大学は1882年(139年前)に大隈重信侯によって設立された大学です。設立当初より、大隈候は早稲田を世界に貢献する大学としたいという強い志をいただいていました。1913年の創立30周年記念祝典において、大隈候は「早稲田大学教旨」という早稲田大学の基本理念を示す文書を発表しています。この教旨には「学問の独立」「学問の活用」「模範国民の造就」という3つがうたわれており、現在に至るまで、早稲田大学の在り方を指し示す理念として、我々に受け継がれています。特に、「学問の活用」については、早稲田大学が「象牙の塔」ではなく、社会と連携し、社会に貢献する大学でありたいという強い問題意識として早稲田に集う我々に共有され続けてきました。だからこそ、この大学を卒業される皆さんに、早稲田で培った学知を基として、コロナ後の平和で豊かな国際社会の構築のために、それぞれの立場で貢献していただきたいと切に希望しています。

 

ところで、今月は、2011年3月11日に発生した東日本大震災からちょうど10年に当たります。社会への貢献をその設立理念とする早稲田大学は、10年前の震災発生後ただちに、大学としての支援方針をつくり、復興支援のために多額の募金を集め、延べ9000人あまりの早稲田の学生が被災地域でのボランティアに参加しました。ちょうどGSAPSのあります19号館の前が被災地へ向かう貸し切りバスの搭乗場所になっていたので、留学生を含む多くの早稲田の学生が毎週のように東北地方のがれき処理などのボランティアに出発していた姿を今もよく覚えています。

 

しかし、早稲田の震災復興支援は募金活動やボランティアを送ることだけにとどまらず、その支援方針には「研究を通じた復興支援」が掲げられておりました。ですので、この10年早稲田は様々な取り組みを行い、研究機関として被災された地域の復興や未来のためにできることは何かを模索し、研究し続けてきました。その中でも、私たちアジア太平洋研究科が誇りとし、ここでご紹介したいのが、当研究科松岡俊二教授の原子力政策・福島復興に関する研究です。松岡先生の研究の目的は、「普遍的な災害復興モデルを世界に提示すること」だそうですが、それは外からの理論を現場に押し付けるのではなく、福島の方々との密接な協働・協力により行われてきました。松岡先生は福島の方々が復興を議論する場を数多く作り、その議論をもとに研究を進め、そこから新たな学知を生み出し、それをさらに現場に還元させ、福島復興に貢献されようとしています。この研究への姿勢こそが、まさに本学が教旨として掲げてきた「学問の活用」を体現したものだと私は思います。

 

皆さんは、大変な努力をされて、GSAPSでの厳しい勉学を修了し、学位を取得されました。だから、今度は、その学位や獲得した知識を使って、就職したり、皆さんの生活をよくする番だとお考えかもしれません。それは間違った考え方ではありません。しかし、ぜひ早稲田の卒業生として、皆さんが培われた学知を社会に貢献するために使うこと、つまり「学問の活用」を真剣に考えてほしいと、皆さんを送り出すこの研究科の教員として、私は切に願っています。

 

早稲田大学の校歌の私の好きな一節に、「集まり散じて人は変われど、あおぐは同じき理想の光」という歌詞があります。皆さんは早稲田に集って、早稲田から巣立っていかれます。しかし、GSAPSで学んだ学知を使って、より平和で幸せな世界を作るという「同じき理想の光」を、皆さんに持ち続けていただきたいと心から祈念し、私の祝辞とさせていただきます。本日は、本当におめでとうございました。

 

 

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