第19回ジャーナリズム大賞作品決定

2019年第19回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」授賞作品決定

10月29日、第19回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」最終選考会を行い、下記の通り、「大賞」3作品、「奨励賞」2作品を授賞作品として決定致しました。後日、贈呈式を開催します。

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ジャーナリズム大賞メダル

早稲田大学は、建学以来多くの優れた人材を言論、ジャーナリズムの世界に送り出してきました。先人たちの伝統を受け継ぎ、この時代の大きな転換期に自由な言論の環境を作り出すこと、言論の場で高い理想を掲げて公正な論戦を展開する人材を輩出することは、時代を超えた本学の使命であり、責務でもあります。

「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」は、このような背景のもと、社会的使命・責任を自覚した言論人の育成と、自由かつ開かれた環境の形成への寄与を目的として2000年に創設され、翌2001年より毎年、広く社会文化と公共の利益に貢献したジャーナリスト個人の活動を発掘、顕彰してきたものです。

大賞受賞者には正賞(賞状)と副賞(記念メダル)および賞金50万円が、奨励賞受賞者には正賞(賞状)と副賞(記念メダル)および賞金10万円が贈られます。また受賞者には、ジャーナリストを志す本学学生のための記念講座に出講いただく予定です。

※以下、各部門・各賞ごとに応募受付順で掲載しています。

第19回(2019年度) 大賞

公共奉仕部門 大賞: 公文書クライシス

受賞者氏名

「公文書クライシス」取材班代表 大場弘行(毎日新聞東京本社編集編成局特別報道部)

発表媒体名

毎日新聞

発表年月日(期間)

2018年1月15日~継続中

授賞理由

この連載は公文書問題に切り込み、日本の民主主義および歴史の積み重ねから成る国のかたちを問い質した。公文書は「国民共有の知的財産」(公文書管理法)であるにもかかわらず、その実態は米国などと比べて大きく見劣りしている。「クライシス」を認識させる発端となった加計学園問題は、将来もまた日本で繰り返されるのだろうか。この問いに答えるヒントが本報道にある。この報道シリーズでは公文書管理の状況や制度に着目し、政策現場の実態、日本の政治文化や私的メールの抜け穴、地方自治体の例、さらには欧米との制度比較などにも及び、多岐にわたる調査で日本の実態を明らかにし、さらなる課題を提起しており本賞に相応しい。公文書管理の発展には、国民およびその代表を務める者たちの問題意識が鍵を握る。メディアの力が試される領域でもあり、継続的な調査報道が期待される。(中林美恵子)

受賞者コメント

官庁の隅々に根を張る隠蔽体質を明らかにしようと始めたキャンペーンでした。首相と省庁幹部の面談記録すら作られず、重要政策がブラックボックスの中で決められています。「国民共有の知的資源」とされる公文書の危機は、民主主義の危機とも言えます。公文書は誰のものかを問いかける取材、報道を続けていきます。

草の根民主主義部門 大賞: 調査報道「呼吸器事件」 司法の実態を告発し続ける連載「西山美香さんの手紙」

受賞者氏名

呼吸器事件取材班 取材班代表 秦 融(中日新聞社:名古屋本社編集局編集委員)

発表媒体名

中日新聞・中日web

発表年月日(期間)

2017年5月~継続中

授賞理由

連載のきっかけは、当時大津支局にいた一記者が感じた疑問だったという。呼吸器事件で有罪判決を受け服役していた12年間、西山美香さんが両親に宛てて書いた350通あまりの手紙。切々と無実を訴える内容に「借り物の言葉」ではないと冤罪を直感。供述調書の自白の言葉を有罪の根拠にしながら、これだけの手紙には一顧だにせず出された判決は「おかしくないか」と。素朴な疑問からスタートしながら、嘘の自白をした西山さんの心理を精神医学的な見地から分析したり、粘り強い取材を重ね、共感できる普遍性に至っている。大阪高裁で再審開始を決定するまでの裁判長の心の動きを、足利事件で冤罪に関わった体験と結びつけてひもとく辺り、読者をひきこむ力もある。連載に関わった記者たちの憤り、息づかいが感じられる記事だ。
10月24日、西山さんの弁護団団長は「(検察は)事実上、有罪立証を断念したと理解した」と発表した。記者たちの信念がこの結果を導いたといえるだろう。(山根基世)

受賞者コメント

障害のある西山美香さんが両親に無実を訴え続けた獄中からの350通余の手紙を、若い記者たちが「真実の声」だと確信し、再審を訴え続けた報道を評価して頂き、心から感謝します。西山さんとご家族、弁護人の皆さんらのご協力に深くお礼申し上げるとともに、再審を認めた心ある裁判官に改めて敬意を表したいと思います。

文化貢献部門 大賞: 『資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界』

受賞者氏名

佐々木 実

発表媒体名

書籍(講談社)

発表年月日(期間)

2019年3月27日

授賞理由

言うまでもないことだが、近代経済学は近代の集権的国民国家の形成・発展と二人三脚で歩んできた。その経済分析や政策提言はつねに国家を前提とし、今日のグローバル経済の分析においても国家単位から抜けだせていない。宇沢弘文は若き日、新自由主義経済学の台頭するアメリカで学究生活を始め、やがてその流派が「ベトコン1人を殺すコストは30万ドル」などとはじき出す知的頽廃を目の当たりにして日本にもどり、水俣病や三里塚空港反対の運動にコミットしつつ、市場に委ねてはならない社会的共通資本(交通・教育・医療・一次産業・自然など)の重要性に気づき、それらを支える共同体の歴史文化(コモンズ)の深い根を発見していった。その姿を経済論史に沿って丹念に描いた本書は、近代経済学の前提を踏み越え、その先にリベラル=分権的経済学の可能性を展望して、すぐれた社会論・文化論ともなっている。(吉岡忍)

受賞者コメント

世界的な名声を得た経済学者宇沢弘文は、難解な数理経済学を得意としたことから、類い稀な自由主義思想の持ち主である事実は見逃されがちだった。私はむしろ、苦闘しつづけた「Liberalist」の姿を描きたかった。彼がたいへん尊敬していた先達のリベラリスト、石橋湛山の名を冠した賞を頂き、とても光栄です。

 

第19回(2019年度) 奨励賞

公共奉仕部門 奨励賞: 県知事選などを巡るファクトチェック報道とフェイク発信源を追う一連の企画

受賞者氏名

琉球新報ファクトチェック取材班 取材班代表 滝本 匠(琉球新報社)

発表媒体名

琉球新報

発表年月日(期間)

2018年9月30日~2019年5月22日

授賞理由

2018年9月の沖縄県知事選挙で、琉球新報の記者たちは「ファクトチェック」とSNS(会員制情報サイト)のツイッター情報分析に取り組んだ。辺野古の基地問題が問われる注目の選挙戦だったが、ネット上に溢れるのは特定候補者に対する中傷、攻撃がほとんど。真偽不明な情報が組織的、機械的に拡散されていた。
選挙後の連載記事などで情報発信者やサイト運営者を追いかける。人々の憎しみを煽り「炎上」させることでサイトが広告収入を稼いでいること、沖縄の基地問題はその「餌食」になっていたことなど、「フェイク拡散の構造」に迫ることができた。ネット時代にあって、新聞やテレビなど既成のジャーナリズムの使命が、「事実の検証」と「責任ある報道」にあることを示す取り組みである。(秋山耿太郎)

受賞者コメント

反基地運動などを攻撃する「沖縄フェイク」をただす報道の延長で、昨年の沖縄県知事選からファクトチェック報道を始め、背景を探る取材も続けてきました。受賞を励みに取り組みを深化させたいと考えます。今年に入り新聞や民放でも「ファクトチェック」が散見され、「ファクトチェック元年」とも言える状況が到来しています。この動きが広がることを期待しています。

文化貢献部門 奨励賞: 報道ドキュメンタリー「SCRATCH 差別と平成」

受賞者氏名

鳥山 穣(TBSラジオ)、神戸 金史(RKB毎日放送)

発表媒体名

TBSラジオ、RKB毎日放送

発表年月日(期間)

2019年3月4日・5日

授賞理由

障害のある子を持つ記者が、障害者46人を殺傷した事件の被告と面会、差別の根底に流れるものを探ろうとした作品だ。ここでは内容だけでなく、発表の場となったラジオというメディアに注目してみたい。同時に多くの人の神経を直接刺激するラジオの性格をマクルーハンは「部族の太鼓」に喩えた。実際、ラジオは国民共同体を強く共振共鳴させて第二次大戦に向う総動員体制を作り上げた。しかし今のラジオは往年とは異なる。広く直接的な影響を社会に及ぼす役割をテレビ、ネットに譲ったラジオは、個々のリスナーの心の深層に言葉を届けるメディアとなった。本作を聴取したリスナーは、視覚情報に惑わされることなく、静かに考え始めるだろう。この内省の促しこそ複雑な構造をなす差別の問題と向き合う際に必要とされるものだ。こうしたメディア特性を生かす番組作りにおいて後続作品の範となることも期待される点で本作は奨励賞にふさわしいと考えた。(武田徹)

受賞者コメント

この番組は、戦後史に残る殺傷事件の被告への取材を重ねながら、社会に通底する差別意識を描いたものです。ネット上で拡散・増幅する善意と悪意に現在を感じ、安易に「生産性」という言葉が連呼される事態に、時代を超えた普遍的な危機を感じます。またラジオならではの音声的な演出にも苦心しました。偉大な先人の名を冠した賞を頂き、非常に光栄です。

 

 ファイナリスト作品

※応募受付順

ファイナリスト作品① 琉球難民 ~証言と記録でたどる台湾疎開~

【候補者】野沢 周平
【発表媒体】琉球放送、BS-TBS

ファイナリスト作品② 『暴君 新左翼・松崎明に支配されたJR秘史』

【候補者】牧 久
【発表媒体】書籍(小学館)

ファイナリスト作品③ ETV特集 シリーズ データで読み解く戦争の時代

【候補者】「ETV特集 シリーズ データで読み解く戦争の時代」取材班代表 塩田 純
【発表媒体】NHK ETV特集

ファイナリスト作品④ 「水増しインフルエンサー」や「漫画村の裏広告」「フェイク広告」などネット広告の闇を追跡した一連のキャンペーン報道

【候補者】NHK ネット広告の闇取材班 取材班代表 蔵重 龍
【発表媒体】NHK NEWS WEB、NHK総合テレビ、NHK新書

ファイナリスト作品⑤ 西日本豪雨の一連の報道と連載「いのちを守る 検証西日本豪雨」を中心としたキャンペーン

【候補者】中国新聞社災害取材班 城戸 収
【発表媒体】中国新聞、中国新聞デジタル

ファイナリスト作品⑥ イージス・アショア配備問題を巡る一連の報道

【候補者】秋田魁新報イージス・アショア問題取材班 代表 松川 敦志
【発表媒体】秋田魁新報

ファイナリスト作品⑦ ぼけますから、よろしくお願いします。

【候補者】信友 直子
【発表媒体】映画(ネツゲン、フジテレビ、関西テレビ)

ご参考

選考方法

下記10名の選考委員からなる選考委員会により、本賞の主旨に照らして、商業主義を廃し、中立公平な立場から厳正な審査を行います。

  • 秋山耿太郎:朝日新聞社元社長
  • 瀬川至朗:早稲田大学政治経済学術院教授(ジャーナリズム研究)
  • 高橋恭子:早稲田大学政治経済学術院教授(映像ジャーナリズム論)
  • 武田徹:ジャーナリスト、専修大学文学部教授
  • 土屋礼子:早稲田大学政治経済学術院教授(メディア史、歴史社会学)
  • 中谷礼仁:早稲田大学理工学術院教授(建築史、歴史工学研究)
  • 中林美恵子:早稲田大学社会科学総合学術院教授(政治学、国際公共政策)
  • アンドリュー・ホルバート:城西国際大学招聘教授、元日本外国特派員協会会長
  • 山根基世:アナウンサー
  • 吉岡忍:作家、日本ペンクラブ会長

記念講座『ジャーナリズムの現在』(全学部生対象)

2002年4月より開講。前年の本賞受賞者、選考委員、活動が注目されたジャーナリストの方々を講師として迎えています。また、講義内容を再構成した書籍を刊行。最新刊は『ジャーナリズムは歴史の第一稿である。』(編著:瀬川至朗 2018年12月 成文堂)。2019年度講義分は本年12月に刊行予定。

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