モジュール「事業創造とアントレプレナー」
責任者:長谷川 博和教授
1.目的
このモジュールのねらいは、「事業創造とアントレプレナーに関するマネジメント」の分野における高度な専門性を獲得することである。その中心的研究分野は、①ベンチャー企業の創造と成長、②大企業の新規事業の創造と成長(ファミリービジネスなどの創業一族の経営も含む)、の2つである。この2分野における成功・失敗要因を評価・分析し、不連続な技術革新についての対応力をつけ、更にはオープンイノベーションを推進するために、大企業とベンチャー企業等の連携の在り方等を検討することによって、専門職学位論文を仕上げることを目的とする。これら2分野は独立して存在するのではなく、相互に関連しながらダイナミックに成長してゆくものであり、その相関性について重点を持って議論していきたい。
このモジュールの基本姿勢は、実践と理論の融合を重視して進めてゆくことである。
2.内容
上記の目的を踏まえ、当モジュールでは、①ベンチャー企業の創造と成長、②大企業の新規事業の創造と成長(ファミリービジネスなどの創業一族の経営も含む)、の2つの領域において、基礎理論と先端的理論を学ぶと同時に、多くの事例研究やケースディスカッションを多用した実践的な能力を蓄積できる科目群を配置した。
具体的には、①ベンチャー企業に関する科目としては、日本・欧米・アジアのベンチャー企業の成功事例、失敗事例を中心としてベンチャー企業のビジネスモデル、差別化、人材採用、知的財産戦略などを学ぶ「事例で学ぶベンチャー経営・新規事業の創造」と、ベンチャー企業の成長に伴うキャズムを超える手法としての「ベンチャー・ファイナンス」、②大企業の新規事業に関する科目としては、日本の製造業がコモディティ化に対応するために必要な高い独自性と真の顧客価値がそなわったものづくりのあり方について議論する「価値づくり経営」と、企業競争の現場で起きているケースを通じて議論する「仕組み革新」、先端技術が新規事業創出や経営改革に果たす役割を解説しつつ、具体的な民間企業の技術戦略のあり方について考えていく「経営システムと新規事業創造」を配置した。
さらに、当モジュールでは、この2つの領域において、基礎理論と先端的理論を学んだ後に「スタートアップ・ファクトリー」を用意している。これはビジネスアイディア・ビジネスプランを創出する醍醐味が体験できる貴重なプログラムである。この「スタートアップ・ファクトリー」では、1 部上場会社となったミスミの創業者である田口弘氏が経営するベンチャーキャピタルである株式会社エムアウトと連携して、実際に大企業の新規事業やベンチャー企業が創業できるレベルにまで徹底的に指導する。また、この中で優秀なチームは、本場シリコンバレーでベンチャーキャピタリストやスタンフォード大学教員などの前でプレゼンテーションし、実現性を高める機会を設けることも検討している。
当モジュール履修生は、上記のような科目群の他、コア科目と他モジュール設置科目から履修科目を選択して、「事業創造とアントレプレナーに関するマネジメント」に関する体系的な学習を行うことになる。そのうえで、各自の関心領域に応じて研究テーマを設定し、最終的には専門職学位論文としてまとめてもらう。
早稲田大学では、①ベンチャー企業、②大企業の新規事業において、本気で革新を伴ったビジネスを構築しようとする学生に対しては、実践的なプログラムをいくつも用意している。当モジュールではこちらも並行して活用しながら勉強を進めることができる。
例えば、年1回、早稲田大学のすべての学生、大学院生、若手研究者を対象に開催されるビジネスプランコンテスト、毎月、実際に起業を目指す学生と若手起業家との交流会をしているアントレプレヌール研究会、インキュベーションのスペースを提供するインキュベーション推進室、ベンチャー企業の創業や大企業の新規事業に対して資金提供するベンチャーキャピタルのウェルインベストメントなどの活発な活動がある。当モジュールの履修生も連携を深めた活動をすることにしたい。
3.対象とする学生
『将来グローバルリーダーとなることを目指す人』
当モジュールの目指すところは「夢と覚悟と実行力を持つグローバルリーダーの育成」である。これは、「豊かな教養、鋭い洞察力、優れた人間性、進取の精神を備えたグローバルリーダーの育成」という当ビジネススクールのポリシーとも合致している。
履修に当たって、業種や勤務経歴、専門分野などは問わない。特に、将来、大企業の起業家的リーダー、自ら創業する起業家、ファミリービジネスなどの経営者などを目指す学生に向いている。
当モジュールで経験することをビジネススクール時代だけでなく、修了後も社会人として以下の6つの喜びを追求し続ける契機としたい学生に強く勧めたい。
- 挑戦する喜び
- 達成する喜び
- 人を知る喜び
- 知識を得る喜び
- 成長する喜び
- 社会に貢献する喜び
このモジュールは、「アントレゼミ」と略称されるようになりたい。アントレプレナーシップ(精神)は大企業の経営幹部もベンチャー企業の創業者も、ファミリービジネスの経営者、さらにはソーシャルアントレプレナーに至るまで、すべてのグローバルリーダーが保有すべきものである。みなさんと切磋琢磨しつつ、「明るく厳しいモジュール」にできればと希望している。
4.モジュール専門科目
- 仕組み革新
- 価値づくり経営
- 経営システムと新規事業創造
- ベンチャー・ファイナンス
- スタートアップ・ファクトリー
- 事例で学ぶベンチャー経営・新規事業の創造