この「ダイバーシティ」という言葉が、 我々の社会で市民権を得たのはいつ頃でしょうか。この言葉が根ざす価値とはどのようなものでしょうか。
また、なぜこの「ダイバー シティ」を推進すべきなのでしょうか。
今次、ダイバーシティ推進を担う理事として就任するにあたり、私の頭をよぎったのはこの3点です。
現在の早稲田大学の組織である「ダイバーシティ推進室」はかつて「男女共同参画推進室」でした。それが2016年に現在の名称となりました。「男女共同参画」が「ダイバーシティ」に変更されたのは、対象とする人々の範囲が広まったからです。
「ダイバーシティ」を尊重すべきとする価値観には、多数者・力のある者だけが幸せな社会・職場・学校であってはならない理念があります。この理念は、人々は平等であるべきという普遍的価値を起源としますが、この原則が単に理念には終わらずに、実際に社会のなかで実行されるためには「推進」が必要です。
早稲田大学では、2017年7月「ダイバーシティ推進宣言」を定めており、「性別、障がい、 性的指向・性自認、国籍、エスニシティ、信条、年齢などにかかわらず、本学の構成員の誰もが、尊厳と多様な価値観や 生き方を尊重され、各自の個性と能力を十分に発揮できる環境が必要です」と謳っています。そして、この目標を少しでも達成できるように、 学生および教職員のために、早稲田大学はいろいろな制度をつくり実行してきました。たとえば、育児支援(学生・教職員用託児室の開設等)、女性研究者支援などの支援策です。また、LGBTQ+や障がい者のための支援策も今後さらに進んでいくことでしょう。
この「ダイバーシティ」という言葉を聞いた時に、「それって何ですか」と思う人々がいるならば、この理念が大事であり尊重すべきことを理解してもらうために普及していくことも重要だと思います。
我々が生きている社会はすべての人が、学び、働き、生活しやすいようにと徐々に歩みを進めてきました。早稲田大学のダイバーシティ推進事業が、この動きに寄与する一助となれば幸いです。
2016年7月1日より、男女共同参画推進室を発展的に改組し「早稲田大学ダイバーシティ推進室」を設置しました。ダイバーシティ推進室では、ダイバーシティを多角的に捉えることで、男女共同参画推進と同時に、障がい者およびセクシュアルマイノリティ支援の施策の企画を含めた活動を行います。
学生部では、「マイノリティにとって生きやすい社会がマジョリティにとっても生きやすい」との考えのもと、2017年4月より、障がい学生支援室およびICC(異文化交流センター)に、ジェンダー・セクシュアリティに対応するGSセンターを新たに加え、3オフィスを統合したスチューデントダイバーシティセンターを開設します。センター設置により、①大学生活全般において不利益を被りうる多様なマイノリティ学生が安心して学業に専念できる学生生活環境の確保、ならびに②本学に集う全構成員が多様な価値観や生き方を受容するキャンパスづくりの推進、が可能となり、アジアのモデル大学として創立150周年に向かう本学の進化の歩みに大いに貢献しうると考えています。
スチューデントダイバーシティセンターは、大学全体のダイバーシティ推進の施策を担うダイバーシティ推進室と連携を図りながら、学生支援を担う実行組織としての役割を果たしていきます。