第18回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」贈呈式 受賞者挨拶 ―遠藤大志氏

※第18回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」贈呈式 式辞・講評 はこちら

【草の根民主主義部門 奨励賞】
キャンペーン報道「旧優生保護法を問う」 毎日新聞

「旧優生保護法を問う」取材班代表 遠藤大志氏の挨拶

毎日新聞の遠藤と申します。本日はこのような名誉ある賞を承り光栄に存じております。宮城県で、優生手術を受けた60代の障がい者の方が初めて仙台地裁に提訴すると、その特報を打ったのがちょうど1年前の12月3日です。その当時、優生保護法について、私はほとんどなにも知りませんでした。その提訴の取材にあたって法律の条文を読んだとき、第一条が「不良な子孫の出生を防止する」とあり、驚愕したそのときの感覚は今も、ありありと覚えております。法律、国を定める疾患に該当すれば、障がい者らに強制的な不妊手術を可能としていたのです。なぜこのような法律が戦後に生まれ、1996年まで続いていたのか。この問いが取材の出発点となりました。

弊紙の報じているところですが、行政から開示された手術関連文書からは、行政側に人権に対する意識はほとんど感じられませんでした。むしろ、予算消化を優先する凡庸な役人根性や職責遂行のもとに政策が進められていたことがわかります。ある国会議員は、手術増を執拗に要請し、犯罪者への拡大も求めていました。強制手術の対象とされてきたのは、障がい者や弱者です。当事者が声を上げられなかったこと、そのことがこの問題が放置されてきた大きな要因の一つと考えられます。

ある人は言います。「当時と今では、人権の意識が違うのだ」と。簡単に片づけることも出来ます。しかし、それにとどまらず、報道を通じ、優生保護をめぐる問題を現在の社会を考えるべき課題として、再発見したのはほかでもない、報道の力だと考えています。

昨年12月3日の女性の提訴方針を特報した後、広がりを持ったキャンペーン報道として、結実したのは全社的な協力があったからです。東京本社地方部の栗田慎一デスクを始め、各部局の協力なくしてはここまでの展開はなかったと思います。

現在、各地裁で、手術当事者が訴えています。国会は、超党派で当事者を救済する法律を、昨年一月の通常国会に提出する方針を示しております。今後の国の動向をチェックし、当事者の救済の弾みをつけるのがメディアの責務だと考えています。あらためて本日はどうもありがとうございました。

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