遠回りをしたっていい。好きなものがあれば人は強くなれる レストラン「Dersou」オーナーシェフ・関根拓さん

第二世紀へのメッセージ

早稲田大学にゆかりのある方に、早稲田の魅力や目指すべき姿を語っていただきます。

今回は、フランス・パリでレストランを開き、世界中の食通から高く評価されている関根拓さんに大学時代の思い出や社会に出てから役立った大学での学びなどについて、お聞きしました。

語学に打ち込み関心は海外へ


大学時代はどのように過ごされましたか。

関根さん

大学時代に打ち込んだのは、語学の勉強でした。もともと好きだった英語に加えて、高校からドイツ語を、大学ではイタリア語・フランス語・スペイン語を学びました。中でも、原章二名誉教授に教わったフランス語の授業は、厳しいけれど面白かったので、よく覚えています。政治に興味があって政治経済学部に進学したのですが、専門的に研究に打ち込むほどにはパッションが入らなかった。一方で語学は、パソコンのように使えば使うほどできるようになるし、言語の背景にある文化や地理もわかってくるのが楽しくて、すんなりと体に入ってくる気がしたんです。語学をきっかけに外国自体にも興味が湧いてきて、海外旅行や留学にも行くようになりました。

料理人を目指されたのはなぜですか。

関根さん

はっきりとしたきっかけはありませんでした。小さい頃から食べることが好きだったし、大学時代に、イタリアンレストランでアルバイトをしていたことも影響しています。大学3年次の終わりにイタリアへ語学留学した際、料理の授業を受けた時にも「料理が好きだ」と自分の熱意を再確認しました。そうして就職活動の時期を迎えた時、自分は何がしたいのか考えたら、自然と「料理人になりたい」と思っていました。世界を股にかける料理人になるには、英語とフランス語の習熟が必要だと考え、原先生の勧めでモントリオールへ。料理人を目指すのは「もう遅い」と言われながらも、諦めずに道を模索したことで、日本、フランス、アメリカなど各国で料理に携わることができました。

料理人とは文化人多様な学びが料理を作る

陶芸家・二階堂明弘さんの器に、小鳩のローストと野菜を盛り付けて


10代の頃から料理の道に専念する人も多い中で、大学での学びは今の仕事にどのように活きていますか。

関根さん

現代において、料理人とはただ料理を作って提供するだけでなく、見た目、味、店内の雰囲気も含めて、人を楽しませることが大切な仕事になってきています。そういう意味で、料理人は調理師から文化人になったといえます。ですから私は、料理人こそ、人を楽しませるためにさまざまな分野の勉強が必要だと考えています。私が大学に入って良かったと思えるのは、そのような多様な勉強ができたこと。さらに言えば、勉強の仕方自体を学べたことです。

関根さん

多くの大学生が経験する卒論も、勉強の仕方を学ぶ機会です。私は卒論で、ヨーロッパにおける食の交わりをテーマに選びました。ヨーロッパの食という一点に焦点を絞っても、オリーブが育つ土地を語るには気候の知識が必要ですし、ドイツのジャガイモ料理を語るなら、飢饉に見舞われた歴史を知らなければなりません。そうして卒論を執筆するうちに、一つのものをベースにして歴史・文化・気象などあらゆる物事を見渡すことができるようになりました。今も同じように考えているからこそ、食の歴史や慣例を踏まえつつ、そこから外れた味の付け方や、違った素材の組み合わせでおいしい一皿を作ることができるんだと思います。

関根さんの考える料理の魅力とは何ですか。

関根さん

私は、100ユーロのディナーコースと、ラーメンとの間に優劣はないと思います。人や状況によって“おいしいもの”は異なるからです。世界中の料理人が、それぞれの技術や発想を使って自分の“おいしいもの”を作ろうとしている。だから料理の世界は面白いと思っていますし、私も自分の“おいしいもの”を作ることで、料理人としての役割を果たしたいと考えています。

可能性を広く持ち好きなものを見つけよう

オムニヴォールに歴史を刻んだ15人のシェフとして選ばれたときの記念写真(左から4人目が関根さん)


学生へ向けたメッセージをお願いします。

関根さん

大学は、好きなことを見つけられる時間であり、自分の道を走る助走の場でもあります。好きなことを見つければ、人は強くなれる。例え遠回りをしても、道を切り開けるはずです。そのためには、自分の可能性を限定せず、広く構えておくことが必要です。学びたいものを何でも広く深く学べる機会を、存分に利用してください。

早稲田大学に期待することをお聞かせください。

関根さん

私は大学時代、一見、料理人には関係のなさそうな簿記を学びました。当時は何の役に立つのかわかりませんでしたが、自分の店を持った今、貸借対照表を理解できることが店の切り盛りに大いに役立っています。どんな学びがいつ実を結ぶのかわからない世の中で、大学は、学部にかかわらず縦横無尽に学べる場所であってほしいと思います。早稲田大学の学生はモチベーションが高く、世界をリードできる人材になるはずです。学生の視野が広がるように、面白い授業をたくさんの学生に提供していってほしいですね。

レストラン「Dersou」オーナーシェフ・関根拓さん

1980年、神奈川県生まれ。2003年、早稲田大学政治経済学部卒業後、料理人を志してカナダ・モントリオールに留学。フランス料理店「ベージュ アラン・デュカス 東京」で3年半勤務し、フランスや米国での経験の後、2014年、パリにレストラン「Dersou(デルス)」をオープン。世界的料理イベント「Omnivore 2015」で最優秀賞、またグルメガイド『Fooding』では、2016年のベストレストランに選ばれた。

Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/top/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる