先を見てばかりいると現実の物事が見えなくなる アサヒカルピスウェルネス社長・千林紀子さん

第二世紀へのメッセージ

早稲田大学にゆかりのある方に、早稲田の魅力や目指すべき姿を語っていただきます。

今回は、昨年アサヒカルピスウェルネスの社長に就任された千林紀子さんに、大学時代の思い出や大学に期待することをお聞きしました。

仕事と学業 充実した学生生活


どのような大学時代を過ごされましたか。

千林さん

日本史か国語の先生になろうと考えて文学部に入学し、第二外国語で選択した中国語との出合いがきっかけで、中国文学を専攻しました。今年退職された稲畑耕一郎先生の指導のもと、「楚辞」をテーマに卒論に取り組んだのですが、シャーマニズムなど、文化人類学の側面もあり、興味は尽きませんでしたね。中国文学との出合いは後に仕事にも役立ち、大学で得た大きな収穫でした。

就職先を決めた経緯や当時お考えになっていたキャリアプランについてお聞かせください。

千林さん

在学中に企業や研究所で事務職のアルバイトをしていたのですが、学生にして会社組織の中で働く楽しさを覚えてしまい、教師になるよりも民間企業で活躍したいと思うようになりました。なかでも、商品そのものにストーリーが色濃く感じられるお酒に関心を持ち、酒類メーカーを志望することに。当時、革新的なものづくりでアサヒスーパードライを生み出し、起死回生の奇跡を起こしていたアサヒビールの勢いに魅力を感じて入社し、現在に至ります。当時のアサヒビールはトップ企業ではありませんでしたが、ナンバーワンよりオンリーワンであることにこだわりました。

ワセジョ魂で得た自分の仕事


社会に出てから、大学での学びは役立ちましたか。

千林さん

私が就職した当時は、中国の経済的成長が著しい時期で、アサヒビールも中国市場に参入しようと準備を始めていました。私は中国語を学んでいた経験が買われ、市場調査のメンバーとして登用され、中国の田舎を視察し、冷蔵庫の普及状況やビールを飲むシーンなどを調べてまわりました。現在も、中国の子会社とコミュニケーションする際は、文化的な背景を学んだことが役立っていると感じています。

千林さん

また、早稲田で学生時代を過ごしたことは、少なからず仕事のスタンスにも影響していると思います。自立性が求められる学風でたくましいワセジョ魂を育んだことが、仕事が与えられるのを待たずに、自ら提案して獲得していくという姿勢につながりました。というのも、私の場合は、女性の総合職2期生で、会社側もどう扱ったらよいかわからなくて構えているし、気を使われる立場。どう会社と調和したらよいか考えて、自ら積極的に提案することを心掛けました。同期の女性はみんなそんな姿勢で仕事に取り組んでいたと思います。

組織のトップとして心掛けていらっしゃることについてお聞かせください。

千林さん

部下を初めて持ったのは、アサヒ飲料に出向しマーケティングの仕事をしていたときです。それまでは、課長の肩書きはついていたものの部下は一人もいなかったのですが、あるとき上司がいなくなって突然35人の部下を任されることになりました。しかも業績が悪く、一つでも施策を失敗したら後がないというプレッシャーの下でのことでした。初めての組織運営に試行錯誤し、一日一日を精いっぱいやり切っているうちに、徐々に経験を積んで部下が可愛いと思えるように。リーダーであることの楽しさを感じ、チームで目標を成し遂げる喜びを感じられるようになりました。どんな困難も一歩一歩、足元を見つめることが大切だと思っています。それは社長になった今も同じです。リーダーは先を見よと言われますが、先を見てばかりいると現実の物事が見えなくなる。長期ビジョンと日常の両軸で考えることを大切にするようにいつも自分に言い聞かせています。

バイオの力で世界の食糧事情に貢献


今後、事業を通じて実現したいことについてお聞かせください。

千林さん

アサヒカルピスウェルネスは、乳酸菌や酵母などの有用な微生物活用技術で、人と動物の健康に寄与し、世界の食糧事情を改善することを目指しています。「食の未来に貢献し経済的な価値を生む」ことを実現し、存在意義を感じられる会社にしていきたいですね。そして、この会社で働く喜びを社員と分かちあっていきたいと考えています。

学生や若者に伝えたいこと、キャリアアドバイスをお聞かせください。

千林さん

挑戦しない夢はかないません。何かにこだわることも大切ですが、自分の可能性をせばめず、さまざまなことに挑戦したほうがよいと思います。私も配属先の仕事に必要なことを勉強し、その仕事を楽しんだことで視野が広がりました。

早稲田大学に期待することをお聞かせください。

千林さん

グローバル化が進み、海外で仕事をすることが当たり前の時代になりました。当社も19ヵ国に参入し3分の1が外国籍の社員です。外国人との付き合いに抵抗を感じずに済むように、大学で、外国人の仲間と自然体で付き合えるような機会をより多く創出していただきたいですね。そして、自由闊達な校風で育った元気な学生を社会に送り込んでくださることを期待しています。

千林紀子さん アサヒカルピスウェルネス株式会社代表取締役社長

早稲田大学第一文学部卒業。アサヒビール入社。営業、商品開発、宣伝、M&Aなどを担当。2015年にカルピスに出向、機能性食品・飼料事業担当役員付き担当部長に。2016年にアサヒカルピスウェルネス取締役。2017年3月から現職。

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