ツアーガイドを通じて多様な人との接し方や実践的な日本語力を修得
出身国の韓国でも知名度の高い早稲田でアジア経済を学ぼうと、大学進学時に日本留学を選びました。入学後は周りの日本人学生と同じ授業を受けましたが、当初は日本語能力が不十分で、特に法学系の科目は苦労しました。友人たちが親身に助けてくれたことを思い出します。
1年の秋、所属していたピアノサークルの先輩からキャンパスツアーガイドの話を聞き、興味を持ちました。留学生がガイドになった例はそれまでなく、不安もありましたが、主催する広報課に問い合わせたところチャレンジを歓迎してもらえました。学生ガイドは、キャンパスの建物の歴史などを細かく覚えるだけでなく、幅広い年代や立場のお客様を考慮した話し方や歩き方も身につける必要があります。私はガイドの研修と並行して、日本語教育科目も履修して日本語の発音を猛特訓。晴れて1年の終わりにガイドデビューしました。高校生を案内する際は授業について紹介したり、年配のグループの場合は歴史的な建物に重点を置いたりと、相手の関心に合わせたガイドを行い楽しんでもらえるよう努めました。
学部での専攻を通して金融分野に関心が芽生え、加えて、ツアーガイドの経験から「人と接する仕事」という軸が定まっていきました。初めから業種を絞り込まず、できるだけ幅広い業種の情報に触れながら就職活動を進め、最終的に、大手外資系銀行に営業職で就職しました。その後、専門性を磨ける環境を求めて転職し、現在に至ります。業務で英語を使う機会が多く、目下の目標は、韓国語や日本語と同じ水準まで、英語での交渉力を高めること。今後も多様な人と出会いながら、グローバルコミュニケーションのスキルを磨いていきたいと考えています。
相手を思いやり対話を重ねる大切さを学びました
曖昧な表現が好まれる日本に比べ、韓国ではものの言い方が率直で、私も入学当初はそれをよく指摘されました。意図せず友人を傷つけたこともあったと思います。ツアーガイドを通して、相手を思いやった表現方法や接し方を身につけました。1人の人間として、日本社会で人と協働していくために必要なコミュニケーションの基礎を学べたと感じています。
聞く側の立場でより分かりやすいプレゼン方法を工夫
金融に関する各国のルール改正点などを社内の関連部署に伝えることも私の仕事の一つです。大勢を前にプレゼンをする機会も多く、そんな時でも落ち着いて話せるのはツアーガイドで鍛えられたからこそ。「いかに分かりやすく話すか」「興味を持ってもらうか」を意識しながら、情報の受け手の立場に立って伝え方を工夫する姿勢が今に活きています。
朴 希卿
野村證券株式会社
2012年 政治経済学部卒業
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キャンパスツアーは、広く一般の方にも早稲田に親しんでもらうため、1989年にスタートしました。年間参加者は、約15,000人にものぼり、日本で最古にして最大規模となっています。ガイドを担当するのは、厳しい研修によって、早稲田に関する知識とコミュニケーション能力を身に着けた早大生。早稲田の顔として、それぞれが創意工夫を凝らした魅力的な案内を行っており、国内外から好評を得ています。ガイドとして培った高いスキルと豊かな経験を活かし、卒業後はアナウンサーや航空会社など幅広い分野で活躍しています。
※掲載情報は2016年度内の取材当時のもの