ニュース 
News

ニュース詳細

2020年5月20日

林泰弘機構長の研究成果として「早稲田大学 E-MaaS構想」を公表しました

スマートシティ実現へ向けた電力・交通の最適化を目指すE-MaaS構想
~「時空間マルチダイナミクス予測エンジン」の開発~

 

早稲田大学理工学術院 林泰弘教授のチームは、JST(国立研究科学法人科学技術振興機構)未来社会創造事業「超スマート社会の実現」領域における研究成果として、電力・交通・人流データの統合的な活用によりスマートシティの実現を目指す「早稲田大学 Energy, Environment and Mobility as a Service(E-MaaS)構想」を発表しました。

この構想は、従来個別に研究されてきた電力セクター、交通セクターを一体的にモデル化し、シミュレーションの実行で統合的に最適化する「時空間マルチダイナミクス予測エンジン」の開発により、都市行政に科学的根拠と指標を提供し、CO2の削減と公共交通分担率向上の同時達成など、我が国の様々な社会課題の解決の支援を目指すものです。

図1:都市課題とE-MaaS構造

図1:都市課題とE-MaaS構造

 

■従来の電力セクター、交通セクターにおける研究とE-MaaS構想

国内でのスマートシティ実現へ向けては、内閣府を中心に、総務省、国土交通省、経済産業省などが連携して多くの実証事業を推進しています。SDGs(持続可能な開発目標)に掲げられている、クリーンエネルギーの活用による脱炭素、健康的な生活の確保と福祉の推進、安全で強靭なまちづくりなどへ向けた研究開発が展開されており、様々な成果が得られてきています。
しかしながら、従来の研究開発では、スマートシティ実現の主要要素となる電力セクターと交通セクターにおいて個別にデータ分析や最適化が進められてきたため、例えばいずれのセクターでも大きな役割を果たす電気自動車をはじめとする電動車両について、各セクターでの利用最適化に留まり、それぞれの異なる制約条件を同時に満足する全体最適な活用を検討することは困難でした。

E-MaaS構想では、電力と交通のセクターカップリングにより、電力・交通インフラの全体効率化を実現します。

図2:電力と交通のセクターカップリングの例

図2:電力と交通のセクターカップリングの例

 

■インフラデータ利用へ向けた動向と「時空間マルチダイナミクス予測エンジン」

従来、電力セクターでは月に一度記録される電力メーターのデータ、交通セクターでは運行ダイヤの情報などが利用可能でしたが、各々、情報更新が遅い、実際の運行データが入手できない等の理由で、分析や最適化には限界がありました。

近年、電力セクターにおいては、事業者によるスマートメータの導入により、家庭をはじめ各需要家における30分毎の電力消費・発電データの収集が可能になったこと、交通セクターでは公共交通機関におけるリアルタイム運行情報のデータ化と公開が進んでいること、さらに、両セクターのデータと強い関連をもつ人の滞在・移動について、スマートフォンの普及によりGPS位置データが得られることなど、各セクターにおいてビッグデータの分析と最適化が可能になってきました。

林泰弘教授のチームでは、電力、交通、人流のデータを一体的に分析し予測する「時空間マルチダイナミクス予測エンジン」技術を提案、その開発に着手しました。再生可能エネルギーの最大活用による「CO2排出のない都市」の実現、公共交通のダイヤ運行最適化による「移動ストレスのない都市」の実現、へ向けた政策立案に資する技術の社会実装を目指します。

既に、電力セクターでは、宇都宮市におけるスマートメータの1年間のデータを分析し、マップで動的に表示させる「見える化」を進めており、また交通セクターでは宇都宮市で行った「宇都宮MaaS社会実験」によって得られたデータの分析を行っています。

 

■今回研究の社会的意義

「時空間マルチダイナミクス予測エンジン」の開発により、電力、交通、人流のビッグデータを分析することで各データ間の因果関係を解明するとともに、シミュレーションによって自治体の政策実行、インフラ企業の新サービス導入、都市への太陽光発電、電気自動車の導入などの効果を定量化・可視化でき、全体最適化な都市計画策定の支援が可能となります。

 

■今後の展開・課題

林泰弘教授のチームでは、JST未来社会創造事業において、継続的にスマートメータデータや交通に関するデータの分析とモデル構築を進めていく予定です。また、これらにより得られた知見を学術体系としてまとめ、都市運営に新たな手法を提供します。

 

本発表に関する詳細情報はこちらをご覧ください。

 


 

【用語解説】

※1 スマートシティ

国土交通省の定義では、「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」とされる。

 

※2 公共交通分担率

人が移動するときの代表的な移動手段に占める公共交通機関(鉄道、バスなど)の割合を示したもので、過度に自動車に依存しないまちづくりに行うにあたっての重要な指標となる。

 

※3 SDGs(持続可能な開発目標)

2015年に国連総会で採択された、2030年に向けた具体的行動指針で、17の目標と169の達成基準からなる。

 

※4 電動車両

電気をエネルギーとして走行する車両であり、電気自動車(Battery Electric Vehicle; BEV)、プラグインハイブリッド自動車、燃料電池自動車などが含まれる。BEVにおいて、積載バッテリー容量は現状でも20~60kWh程度あり、家庭における電気使用量の数日分をカバーできるため、移動する蓄電池としての活用が望まれている。

 

※5 セクターカップリング

単独のセクターごとの個別最適ではなく、各セクターにまたがった影響を与える要素を分析することで、都市の全体最適を図る考え方。

 

※6 宇都宮MaaS社会実験

2019年8月から10月にかけて行われた、宇都宮市内のバス・鉄道に対するフリーパスを発行した際の、人の行動変容に関わる調査。詳細はこちら

 


 

【研究助成】

研究費名:JST未来社会創造事業「超スマート社会の実現」領域

研究課題名:超スマートシティ・サービスマネジメント・プラットフォームの構築

研究代表者名(所属機関名):林泰弘(早稲田大学)

Page Top