第23回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」贈呈式 受賞者挨拶 ― 萩原 豊 氏

【草の根民主主義部門 奨励賞】
「南米アマゾンの”水俣病”」に関する報道

TBSテレビ・Web

萩原豊 氏の挨拶

この度は、このような賞をいただきまして大変光栄に思います。南米のアマゾンという、日本から見れば地球の裏側で、関心が持たれにくい、この問題の報道に光を当てていただいて心より感謝申し上げます。ありがとうございます。

取材したのは、ニューヨーク駐在時代で、ちょうどコロナ禍と重なりまして、中南米の国々では国境を封鎖する国も出てきて、取材は難航したんですが、関係者のご協力によって、なんとか継続的な取材が実現しました。南米のアマゾンは、皆さんもご承知の通り、森林の消失が加速度的に進んでおり、深刻な事態に陥っています。その陰で進んでいるのが、先住民の子どもたちの健康被害です。脳の異常、突然死、あるいは身体の障害、この実態を目の当たりにして、何故こんなことが起きているのか、何としても伝えなければ、という思いに駆られました。要因と見られている水銀は、森や川での金の違法採掘に大量に使われていまして、現地の関係者は、「日本の水俣病」との共通点を認識し始めています。だからこそ、私たち日本メディア、日本人の取材に応えていただけたのだろうと思います。現地では「日本の人々にこそ知ってほしい、助けてほしい」という切実な声を聞きました。

そして、この問題を大きな視野でとらえますと、当時のボロソナル大統領は、アマゾンの開発に肯定的な姿勢を見せていまして、一方で国内外ではアマゾンを守ろうという環境保護の声も高まっていました。つまり、この問題というのは、「開発か、環境保護か」という、世界の分断によって、何の罪もない、弱き立場の人々に現れている“ひずみ”だと、つまり「世界の片隅にある不条理」と言えるものだと思うんですね。並行して取材しましたハイチ難民についても、「難民を排斥するか、それとも包摂するか」という、この分断によって翻弄されている人々と言えます。こうした弱き立場の人々が直面する、この「世界の片隅にある不条理」に、私たちは向き合って、これを伝え続けることが、ジャーナリズムの重要な役割の一つだと考えて、今後も、取り組んでいきたいと思います。

改めまして、ともに取材したスタッフ、先住民ムンドゥルク族の皆さん、一連の報道を評価してくださった皆様に心より感謝申し上げます。そして賞を機会に、この問題が広く伝わることを願っております。本日はありがとうございました。

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