第21回ジャーナリズム大賞作品決定

第21回(2021年度)
「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」発表

「大賞」3作品、「奨励賞」2作品  が決定

2021年度第21回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」の授賞作品を、受付期間内に応募・推薦された164作品の中から、次のとおり3部門にて「大賞」3作品、および2部門にて「奨励賞」2作品を決定致しました。

大賞

公共奉仕部門 大賞

『ルポ入管ー絶望の外国人収容施設』 書籍(筑摩書房)

草の根民主主義部門 大賞

ムクウェゲ 女性にとって世界最悪の場所で闘う医師 (TBSドキュメンタリー映画祭 上映作品)

 文化貢献部門 大賞

『ロッキード疑獄 ―角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』 書籍(KADOKAWA)

奨励賞

公共奉仕部門 奨励賞

 2020 熊本豪雨 川と共に  (熊本日日新聞)

 草の根民主主義部門 奨励賞

ドキュメンタリー 「永遠の平和を あるBC級戦犯の遺書」 (RKB毎日放送(テレビ版)・RKBラジオ(ラジオ版)・YouTube)

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早稲田大学は、建学以来多くの優れた人材を言論、ジャーナリズムの世界に送り出してきました。先人たちの伝統を受け継ぎ、この時代の大きな転換期に自由な言論の環境を作り出すこと、言論の場で高い理想を掲げて公正な論戦を展開する人材を輩出することは、時代を超えた本学の使命であり、責務でもあります。

石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」は、このような背景のもと、社会的使命・責任を自覚した言論人の育成と、自由かつ開かれた環境の形成への寄与を目的として2000年に創設され、翌2001年より毎年、広く社会文化と公共の利益に貢献したジャーナリスト個人の活動を発掘、顕彰してきたものです。

大賞受賞者には正賞(賞状)と副賞(記念メダル)および賞金50万円が、奨励賞受賞者には正賞(賞状)と副賞(記念メダル)および賞金10万円が贈られます。また受賞者には、ジャーナリストを志す本学学生のための記念講座に出講いただく予定です。

「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」についてはこちら⇒

※以下、各部門・各賞ごとに応募受付順で掲載しています。

第21回(2021年度) 大賞

公共奉仕部門 大賞: 『ルポ入管ー絶望の外国人収容施設』

受賞者氏名

平野 雄吾

発表媒体名

書籍(筑摩書房)

授賞理由

-収容された外国人への、入管職員による非人道的な扱いが話題になり、入管への関心は高まっているが、実態についてはあまり知られていない。
そもそもは戦前、出入国管理を担っていた警察が「治安維持」の発想から、外国人を取り締まった歴史が、底流に潜んでいるらしい。成り立ちから紐解くこの本によって、いま入管が抱える矛盾、理不尽があぶり出される。同時に大勢の収容者への歳月をかけた丁寧な取材により、祖国を出て、行き場のない外国人が、日本という国でどういう扱いを受けているのか、その苦しみ、悩みが生々しく伝わってくる。なぜ、これほどの理不尽がまかり通るのか。衝撃的な事実を伝える文章が、深い憤りと共感によって、血の通った「情報」になっているのを感じる。少子化・労働力不足の日本で、移民・難民にどう向きあうのか、私たちは考えるべき瀬戸際に立っている。今こそ必読の書である。(山根基世)

受賞者コメント

-司法審査のない無期限拘束を特徴とする日本の入管収容制度。在留資格のない外国人を拘束する入管施設では、暴行や隔離、医療放置が相次ぎ、毎年のように死者が出ている。入管の実態は、一見豊かに見える現代日本の深層を映し出す。この受賞を機に、本書が多くの市民に読まれ、この国のあり方がさらに議論されれば、とてもうれしい。

草の根民主主義部門 大賞: ムクウェゲ 女性にとって世界最悪の場所で闘う医師

受賞者氏名

立山 芽以子

発表媒体名

映画 「TBSドキュメンタリー映画祭」にて上映

授賞理由

-大粒の涙を浮かべ、性暴力によって妊娠したと告白する少女の衝撃的な場面から始まる本作品は、これから示される現実に目を背けてはならないと私たちに迫る。思わず耳を塞ぎたくたるような残虐な性暴力の数々が、素顔の被害女性によって語られる。性暴力は欲望のはけ口だけでなく、住民に恐怖を与え、隷属させるための手段でもある。その背景には、コンゴの豊かな鉱山資源を巡る争いがあり、それは私たちが日常的に手にするPCやスマホの原料にも使われている。コンゴの性暴力被害が日本と一直線に結びつくと知った時、私たちはこの問題に無関心でいることはできないだろう。巧みな構成である。作品の後半、凄惨な現実にも希望があることが示される。ムクウェゲ氏によって救済された女性たちが前を向き、力強く再生しようとする姿は感動を呼ぶ。これまでメディアで取り上げられなかったアフリカ問題を粘り強く、覚悟を持って取り組んだ本作品は草の根民主主義部門の大賞に値する。(髙橋恭子)

受賞者コメント

-わたしたちの豊かで便利で清潔な暮らしは何によって支えられているのか?そんなことを考えてもらうきっかけになる映画を作ろうと思いました。世界で起きていることを「遠い」「自分には関係ない」と思わず、自分事として想像し、共感する。知って、考え、できることから行動する。その行動が、きっと、世界を変えていく。作品のメッセージが一人でも多くの人に伝わればと願っています。

文化貢献部門 大賞: 『ロッキード疑獄 ―角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』

受賞者氏名

春名 幹男

発表媒体名

書籍(KADOKAWA)

授賞理由

-戦後最大の疑獄と言われるロッキード事件について、著者の15年に及ぶ緻密な調査に基づく論考を集大成した労作である。冒頭で掲げた五つの陰謀説を、日米の公文書を渉猟し、政治家・ジャーナリスト・諜報関係者へのインタビューなど広範囲に渡る取材によって崩しながら、未解明の部分に切り込んだ。それとともに戦後の日米中ソをめぐる国際政治史に対する疑問を提示し、インテリジェンス方面の重要性を浮かび上がらせた。ロッキード事件とウォーターゲート事件のつながり、日米同盟を温床とする疑獄に関係した岸信介、中曽根康弘などの日本の政治家たちや児玉誉士夫などのフィクサー、さらにキッシンジャー元国務長官など米国高官の言動を、根拠となる資料に基づき丁寧に検証し記述した本書は、事実に基づくジャーナリズムとして高く評価されるべき著作である。また著者自身が記者として活動した戦後メディア史の貴重な記録にもなっている。(土屋礼子)

受賞者コメント

-田中角栄元首相が「巨悪」とされたロッキード事件。しかし、真の巨悪の正体は、その後発覚した「ダグラス・グラマン事件」でも浮かび上がりました。彼らは日米安保体制の根幹に絡む利権に群がっていました。角栄逮捕によって国民の不満はガス抜きされていました。取材協力者、選考委員の皆さんに深く感謝します。

 

第21回(2021年度) 奨励賞

公共奉仕部門 奨励賞: 2020 熊本豪雨 川と共に

受賞者氏名

2020熊本豪雨取材班 代表 亀井 宏二

発表媒体名

熊本日日新聞(朝夕刊、電子版)

授賞理由

-年間企画を通して、被災した地元の人々に寄り添うだけでなく、豪雨被害をもたらした原因を構造的に解き明かした。線状降水帯の予報の限界や、避難指示の伝え方の難しさなどは、どの自治体も直面する問題であり、普遍性がある。知事がいったん白紙撤回したダム建設を、環境負担の軽い「流水ダム」として容認する過程を、自治体や住民の声を交えながら丹念に追った。これも、政策プロセスに地元の声を反映させる報道の基本的な使命に応える姿勢といえる。さらに斬新だったのは、2016年4月の熊本地震や2011年3月の東日本大震災と比較し、過去の教訓が、どこまで防災・減災に活かされているのかを検証した点にある。自然災害には、地域や態様にかかわらず共通する諸問題がある。災害が多発する今日、地域に根ざしながら、列島すべてに通じる問題を立体的に提起した点に、高い評価が集まった。(外岡秀俊)

受賞者コメント

-2020年7月4日、球磨川流域を中心に熊本県を襲った豪雨は70人近くの命を奪いました。熊本地震、新型コロナに続く三重苦の災禍。「もう災害で命を失ってほしくない」「この犠牲を無駄にしない」。取材班はそんな思いを胸に遺族や被災者に心を寄せて話を聞きました。涙をこらえ切れなかった時もあります。その結晶が「川と共に」です。受賞を励みに、被災地の復興を共に考え、災害から命を守る方策を探る報道を続けます。

草の根民主主義部門 奨励賞: ドキュメンタリー「永遠の平和を あるBC級戦犯の遺書」

受賞者氏名

大村 由紀子

発表媒体名

RKB毎日放送(テレビ版)・RKBラジオ(ラジオ版)・YouTube

授賞理由

-戦争の不条理と非情さを、とても静かに、それでいて圧倒的な力強さで訴えかけてくる作品である。一人のBC級戦犯の遺書を手がかりに戦争と国民の関係を描いており、草の根民主主義部門・奨励賞に相応しい。
ドキュメンタリーでは、戦争犯罪が問われた石垣島事件の真相にも迫る。そこには、戦争という異常な環境で米国兵士を殺害する日本兵があり、怒りと憎しみと悲しみの連鎖の中で、戦争が終わった後に処刑される彼らがあった。BC級戦犯たちに判断や選択の余地がなかったことは、戦争の本質を伝えて余りある。
遺書や公文書や写真から見えてきた実態に接し、遺族たちの誰もが訴えたのは「戦争さえなかったら」である。本作品は、テレビ・ラジオ・YouTubeなど、多彩なメディアでの発信に工夫がある。ぜひ幅広い世代に視聴してほしいものである。(中林美恵子)

受賞者コメント

-A級戦犯に比べてBC級戦犯はいまだに良く知られていません。黒塗りの公文書から人物を割り出して調書を特定する作業は骨が折れましたが、遺族すら知らなかった真実がそこにはありました。多くの人々が口をつぐんできた加害と被害の両面をいま、検証すべきだと思います。ご評価いただいたことを糧に、これからも向き合っていきます。

 ファイナリスト作品

※応募受付順

ファイナリスト作品①  BS1スペシャル「謎の感染拡大」 前編:新型ウイルスの起源を追う 後編:空白の3週間に何が

【候補者】NHK「謎の感染拡大」取材班 代表 善家 賢
【発表媒体】NHK・BS1

ファイナリスト作品②  戦没者遺骨取り違え問題のキャンペーン報道

【候補者】NHK遺骨問題取材班 代表 木村 真也
【発表媒体】NHKニュース7、NHK取材ノート(WEB)

ファイナリスト作品③ キャンペーン報道「決別 金権政治」 ~河井克行元法相夫妻の大規模買収事件を巡る一連の報道~

【候補者】中国新聞「決別 金権政治」取材班 代表 荒木 紀貴
【発表媒体】中国新聞、中国新聞デジタル

ファイナリスト作品④ 「ネアンデルタール人は核の夢を見るか~高レベル放射性廃棄物の行方~」

【候補者】澤出 梨江
【発表媒体】北海道放送株式会社

ファイナリスト作品⑤ 「報道特集」 「スリランカ人女性・遺族の訴え」の特集企画

【候補者】樫田 小夜
【発表媒体】TBSテレビ「報道特集」

ご参考

選考方法

下記10名の選考委員からなる選考委員会により、本賞の主旨に照らして、商業主義を廃し、中立公平な立場から厳正な審査を行います。

  • 瀬川至朗:早稲田大学政治経済学術院教授(ジャーナリズム研究)
  • 外岡秀俊:元朝日新聞東京編集局長、北海道大学公共政策学研究センター上席研究員
  • 高橋恭子:早稲田大学政治経済学術院教授(映像ジャーナリズム論)
  • 武田徹:ジャーナリスト、専修大学文学部教授
  • 土屋礼子:早稲田大学政治経済学術院教授(メディア史、歴史社会学)
  • 中谷礼仁:早稲田大学理工学術院教授(建築史、歴史工学研究)
  • 中林美恵子:早稲田大学社会科学総合学術院教授(政治学、国際公共政策)
  • アンドリュー・ホルバート:城西国際大学招聘教授、元日本外国特派員協会会長
  • 山根基世:アナウンサー
  • 吉岡忍:作家、日本ペンクラブ前会長
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