異文化に出会い、自分を知る 早稲田大学ICC(異文化交流センター)

進化する大学

早稲田大学ICC(異文化交流センター)
異文化に出会い、自分を知る

外国人留学生の増加とともに、さまざまなイベントを通じ、学内の異文化理解を促進してきたICC。設立11年目を迎えた今、今後の課題と取り組みについて伺いました。

スチューデントダイバーシティセンター長・国際学術院教授 三神弘子

三神弘子教授

三神弘子教授

アルスター大学大学院修了(PhD). 著書に”Frank McGuinness and his Theatre of Paradox”(Colin Smythe, 2002)、編著書”Irish Theatre and Its Soundscapes”(Glasnevin Publishing, 2015)、共訳書『現代アイルランド演劇1〜5』(新水社 1991〜2001)など。

多様な文化的背景を持つ学生が自然に交流できる場を

ICC(異文化交流センター:Intercultural Communication Center) は、2006年に国際コミュニティセンターとして、外国人留学生とローカルスチューデント※1が交流する場の提供を目的に発足しました。その背景にあったのは、年々留学生が増加していたものの、どうしても同じバックグラウンドの学生同士で固まってしまうという現状があり、交流するための仕掛けが求められていたからです。

ICCは国際部ではなく学生部に置かれ、外国人留学生のみならず全学生に開かれたセンターとして、学生生活の中に多様性を根付かせるためのイベントを日々実施しています。発足当初は、3,000人強だった参加者も昨年度はその5倍をはるかに超える16,000人と、右肩上がりに増え続けています。イベントカテゴリー数、参加者数共に順調に伸ばしてきましたが、10年を機に、国際交流への関心の薄い学生サークル等との積極的な連携を図る方向に舵をきり、参加者の裾野を広げつつあります。

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偏見を乗り越えて真の友情を育む

ICCでは、ランゲージ&カルチャー・エクスチェンジやカントリー・フェスタ、スポーツを介して交流を深めるイベントなど多種多様なイベントがありますが、中でも紹介したいのが、ICCの姿勢を象徴するふたつのイベントです。「日中韓ホンネ交流キャンプ」は、文化的・距離的に近く、さまざまな利害関係から偏見も生まれやすいお互いの国について語り合うキャンプです。前半はスポーツを通して親密度を高め、後半で領土問題や慰安婦問題など、興味はあるが普段正面から議論できないテーマ別に語り合います。見解の違いから意見がぶつかることもありますが、学生たちは何が正しいのかではなく、未来に向けて自分たちはどうすべきかを語り合い、偏見を乗り越えた真の友情を育んでいます。もうひとつは、ノーボーダー・スキー&スノーボード・キャンプです。“キャンプ中はニックネームだけで過ごし、自分の本名、出身国、学部、学年等の属性をいっさい明かさない”というノーボーダー・ルールは、学生たちが先入観を持たずに友情を深める仕掛けになっています。

多様性への適応力を身に付ける学生スタッフ

ICCの最大の特徴は、学生スタッフリーダーの存在です。彼らはイベントを企画・運営するだけでなく、イベントに関わるボランティア学生の取りまとめや、広報活動の一環でのプレゼンテーションなど、カウンター対応やその他の運営業務に加え幅広いタスクを担います。現在は7ヵ国20人の学生が在籍しており、6人の職員がサポートしています。お互いの価値観の違いを認識し、日本人同士の暗黙知が伝わらないことを前提としたコミュニケーションを学びながら、イベント企画に生かしています。インターンシップの要素も備えるこうした経験は、社会に出てからも必ず役に立つことでしょう。昨年はICC稲門会も発足し、学生スタッフの先輩後輩のつながりもできました。現役学生たちは、国連をはじめとする国際機関で活躍する先輩たちに大いに触発されているようです。また、昨年からは学生スタッフ研修にボランティア研修を取り入れました。障がい学生支援などを通して視野が広がった結果、マイノリティ理解につながるイベント企画が増えました。

キーワードは“ダイバーシティへの理解と受容”

今後は、楽しくためになる交流イベントに加え、グローバル社会の課題やマイノリティについて理解を深める、一歩踏み込んだイベントに力を入れる予定です。今年度は日本にいるシリア難民の方を呼んでのトークセッションや、日本人の宗教観に触れる機会として明治神宮を訪問するイベント企画が進んでいます。

今年4月からはスチューデントダイバーシティセンターが設置され、その中の一部門として、これまで以上に障がい学生支援室GSセンター※2と連携を深めながら、相乗効果を図っていきたいと考えています。ICCのお膳立てがなくても、学生同士が自然に交流できることが理想です。しかし国連が必要とされるように、Waseda Vision 150 の目標どおり、外国人留学生が1万人になり、全学生が留学を経験する時代になってもICCが果たすべき役割がなくなるわけではありません。これからもICCをさらに多くの学生に知ってもらうために、本学全構成員にも働きかけながら、持ち味の機動力で時代の関心の先をいく活動を行っていきたいと思います。

  • ※ 1 ローカルスチューデント:国籍を問わず、日本で育った学生のこと
  • ※2 GSセンター:新たに開設されたジェンダー・セクシュアリティに対応する組織

学生スタッフリーダーの声 政治経済学部 3年 木村さん

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現在20名の学生スタッフが所属(後列左から2番目が木村さん)

言語や文化、価値観の違うメンバーが一緒に働くICCでは、お互いの考えをできるだけ言葉にし、率直に話し合うことを大切にしています。議論の決着がなかなかつかないこともありますが、自分の先入観を覆すような意見をもらいながら働けるのはICCならではの特長です。学生が異文化交流に触れるきっかけになる面白いイベント企画など、今後も新しい仕事にどんどん挑戦していきたいです。

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