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Vol.16 スポーツ社会学(1/2)/【汗をかかないゲームは“スポーツ”なのか?】
eスポーツが問い直す,競技の新しい境界
/ 高橋義雄教授
Wed 05 Aug 26
Wed 05 Aug 26
【リアルなスポーツと画面の中のeスポーツ。その境界が溶け合いはじめた今、スポーツは私たちの暮らしや地域をどう変えていくのか? 】
今回のゲストはリアルなスポーツの世界からeスポーツ研究の最前線へと踏み込んだ、スポーツ科学学術院の高橋義雄教授。2回にわたって「eスポーツとバーチャルスポーツが開く未来」をテーマにお届けします。
そもそも「スポーツ」とは何か——素朴な問いを入り口に、アジア大会での正式競技化、リアルとバーチャルが溶け合う最新の競技、そして高校の部活動を通じて見えてきた意外な効用まで、話題は多岐にわたります。
ゲームを「悪者」と決めつける前に、その可能性と課題を科学の視点から捉え直す。スポーツの「境界」がゆらぐ時代に、私たちの知見をそっとアップデートしてくれるエピソードをお届けします。
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ゲスト:高橋 義雄
早稲田大学スポーツ科学学術院教授。1994年東京大学大学院で教育学修士、2021年筑波大学で博士(スポーツウエルネス学)を取得。名古屋大学総合保健体育科学センター助手・講師、筑波大学大学院人間総合科学研究科准教授等を経て、2024年4月より現職。スポーツ社会学・スポーツ経営学の視点から、スポーツビジネスやスポーツによる地域活性化、eスポーツなどを研究。
ホスト:井上 素子
研究戦略センター准教授。専門は研究戦略・推進、美術史学、文化財保存学。2014年 筑波大学大学院人間総合科学研究科芸術専攻博士課程後期修了 博士(芸術)。2013年 独立行政法人国立文化財機構 東京国立博物館保存修復課、2018年 東京工業大学研究・産学連携本部主任URA等を経て、2025年4月から現職。
左から、井上素子准教授、高橋義雄教授。
早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリ)のスタジオで収録。
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エピソード要約
-eスポーツの可能性
eスポーツは単なる「ゲーム」ではなく、新しいスポーツ文化として広がりつつあり、教育や社会に与える影響について考えます。
-部活としてのeスポーツ
高校のeスポーツ部の調査から、適切な指導やルールづくりが、生活習慣の改善や生徒の成長につながる可能性を紹介します。
-地域を支えるバーチャルスポーツ
バーチャルスポーツの発展により、リアルスポーツとデジタル技術が融合する最新の動向や、その可能性について解説します。また、情報通信技術を活用したスポーツは、高齢者の健康づくりや地域コミュニティの再生、被災地支援など、社会課題の解決にも役立つ可能性を秘めています。
エピソード書き起こし
井上素子准教授(以下、「井上」):
早稲田大学ポットキャスト博士一歩前。
本日も早稲田大学早稲田キャンパス内にある村上春樹ライブラリー国際文学館2階の収録スタジオから、前回に引き続きスポーツ科学学術院シリーズをお届けします。
今回と次回の2回にわたり、早稲田大学スポーツ科学学術院でスポーツ社会学、スポーツ政策、スポーツマネジメントをご専門とされている高橋義雄先生をお迎えし、「その境界を問い直す、eスポーツとバーチャルスポーツが開く未来」と題しまして、デジタル化や少子高齢化が進む社会の中で、スポーツが教育、地域、産業、そして人と人とのつながりにどのような役割を果たしうるのか、その革新的な問いと社会への示唆を探ってまいります。高橋先生、どうぞよろしくお願い致します。
高橋義雄教授(以下、「高橋」):
どうぞよろしくお願いいたします。
井上:
まずはじめに、先生のプロフィールをご紹介させていただきます。
高橋義雄先生は、東京大学で修士号を取得された後、名古屋大学、筑波大学を経て、2024年4月より早稲田大学スポーツ科学学術院で教授を務めておられます。
2021年には筑波大学で博士号を取得され、研究分野は社会学、経営学、スポーツ科学、体育、身体教育学にまたがります。
現在は、早稲田大学総合研究機構のスポーツ未来研究所の所長としても、少子高齢化、デジタル化、グローバル化という社会の変化を踏まえ、持続可能な未来に向けたスポーツの役割と可能性も研究されています。
先生からもぜひ研究分野の概要をご説明いただけますでしょうか。
高橋:
はい。こんにちは。早稲田大学スポーツ科学学術院の高橋です。
私は最近、eスポーツの関連の論文を書いています。
ただ、私自身はeスポーツのプレイヤーでもありませんし、ゲーマーではありません。
eスポーツという、新しいオンラインゲームが多くのZ世代と言われるような若者に流行ってきまして、その影響が日本の社会や経済、文化にどのような影響を与えているのかを、まず手始めに、高校生のeスポーツ部活動について調査をしたり、eスポーツの部活動に入っている高校生たちはどのような生活をしているのかっていう研究をしています。
eスポーツっていうと、最近の言葉として多くの方は感じているかと思いますが、実際には、僕はリアルなスポーツの世界から来ているわけですが、リアルなスポーツの世界においても、IOCが2017年にeスポーツについての研究会を始めたり、実は2021年コロナ禍後に行われた東京オリンピックの最中にもIOCは一つの大会を東京で行っているんです。
アジアに目を向けますと、2018年にアジア大会、インドネシアのジャカルタで開催されたんですけれども、そこでもeスポーツが、当時はまだメダルの競技ではなかったですが、開催されております。
その後の次の杭州のアジア大会ではメダル競技としてeスポーツが開催され、なんと今年の9月に行われる愛知名古屋のアジア大会では、eスポーツがメダル競技として、正式な競技として、日本代表も出ます。
なんと日本代表の中には、十歳のユキ君という小学生が入ってまして、おそらくアジア大会最年少で、おそらく金メダル取るんじゃないかというふうに言われています。
もともとはファミコンとか、ゲームであったものがネットにつながってオンラインゲームになり、今、世界を巻き込んで、ムーメントになっているということを研究しています。
井上:
今、eスポーツの話を少し伺いましたが、おそらく皆さん関心があるところかなと思いますので、少し詳しくお尋ねしたいなと思います。
スポーツというと、一見その体を動かす競技ということをイメージしますけれども、eスポーツは少し違うというふうに、理解しております。
従来のスポーツ、体を動かすスポーツと比べて、eスポーツは何が根本的に違うのか、先生の研究者としての観点からご覧いただいた時に、スポーツを研究対象として見た時に、先生はどのあたりに一番面白さを感じていらっしゃいますか?
高橋:
これは国会議員の先生方と話して言われたのですが、汗をかかないeスポーツは本当にスポーツか?って言われるんですよ。
スポーツ=汗をかく、体を動かす、大きな筋肉を動かすみたいな考え方は、もともと日本が明治以来、スポーツを欧米から輸入して、いわゆる体育というの世界で身についた考え方が感じ方なんですね。それが今大きく変わってきて、“ゲーム”なんですね。
ゲームを通じて相手と競い合うっていうことが汗をかかなくてもできる。
ただ、脳の活動から言えばすごい活動してるし、指先の活動から言えば小さな筋肉で動かしているわけですけど、そうしたゲーム性ということはスポーツにも当然競技であってあるんですね。で、そういう形から言うと、大きな筋肉を動かさないけれども同じゲーム性を持つ遊び、としてeスポーツというのもスポーツの一分類であるなっていうふうに思っています。
モータースポーツなんて言ってね、自動車運転することでレースなのかって言われるかもしれないけど、まぁあれは実際にGがかかって汗かいてですね、すごい心拍数も上がってやってるわけですけど、実はeスポーツもね、やってる間、心拍数が上がるってことはデータ出てまして。
と考えると、その大きな筋肉を動かさなくても同じ競技をして争うとか、自分の成長を考える、なんていう点で考えると、非常に根本的なゲーム性という点では一緒だなっていうふうに思っています。
ただ、同じ空間にいるかというところだけは違っていて、情報通信技術で繋がっているので、場所が違っているところで行っている。だから日本人が、例えば韓国やヨーロッパの方と一緒にゲームすることができます。
ただ、これが大きな問題になっていて、最初韓国の人とやってるとあまり時差がありません。その後、ロシアの人とやってると時差が徐々に出始めて、ヨーロッパの人とやり始めると、日本人は朝型になっていると。ゲームが終わってたらもう寝なきゃいけないけども、興奮した頭では寝れないと。
そうすると学校に行けなくて不登校、みたいなことが起きて、eスポーツはゲーム障がいだっていうイメージで、悪いイメージがついちゃってると思うんですよ。
そういったところがですね、今のeスポーツの現状ですが、これ、使い方によっては大きくeスポーツの可能性ってあるんじゃないかなっていうふうに私は思っているところです。
井上:
プラスの側面と、ある意味では負の側面というのもあるというふうに、見ていらっしゃるということですね。
例えば夜中までゲーム付けになってしまって、時差のこともあって不登校になったり、依存性があるみたいなこともあるのかなという。
先ほど冒頭で学校の部活動のことを焦点に調べられていますというお話がありましたが、中学校なり高校なりの部活動として見た時っていうのは、どんなことが言えるでしょうか?
高橋:
部活動として行うということは、学校の授業後に、放課後に行う、大体3時から5時とか2時間行うわけですけど、そのことによって私は、逆に家に帰って夜中ずっと起きてゲームをしてるって事が無くなるという風に考えています。
それは今、実際に高校のeスボーツ部の生徒さん達と話を聞いても、体のコンディショニングを整えて大会で勝とうと思うと、夜中中起きて学校に行けなくなって電車に出れないっていうのは問題があるって事を引きし出すとですね、自分の体のコンディショニングを考えてeスポーツをするようになるんです。
僕は逆に言うと、本当に学校の中に取り込んでいくことがeスポーツにとってはプラスだと思っていて、これ実はリアルなスポーツが明治時代に経験したことと一緒です。明治時代に野球が入ってきたんです。野球は子どもたちに魅力的であったので、生徒や、もっと言うと学生、早稲田大学もそうですけどが野球にのめり込んで、勉学をおろそかにするって野球害毒論って言われるぐらい野球は害毒だっていうふうになってきて、野球を政府が統制しようっていうふうになったわけですよ。
リアルな世界であっても、スポーツは楽しいから、どんどんのめり込んでいって、本来しなきゃいけないことをしなくなってしまうっていうことがあるわけですね。
部活の中で、リアルなスポーツテストはそうならないようにコントロールして野球をやっていったように、eスポーツも楽しい、もっというと、eスポーツはゲーム会社が意図的に上手くなるようにできてるんです。上手くなるのに時間かかったら嫌になっちゃうんですよ。すぐに上手くなるから、ゲームをやって自己肯定感が上がってくる。上手くなって何かポイントが来ると報酬系が働いてですね、もっとやりたくなる。脳はどんどんどんどんのめり込んでいくようにゲームはプログラミングされているので、どんどんどんどんのめり込んでしまうんですね。
だからこそ、そうでないような環境を大人たちが作ってあげないと、自由に夜中やってってなっちゃうと朝方起きないということが起きるということなんですね。
井上:
部活として勝っていくためには、チームとして勝ち上がっていくためには生活のリズムも整えなきゃいけないということで、こうプラスにリズムを整えようっていうことも働くと。
高橋:
実際に調査してみると、部活動でeスポーツ部の部の方向性をしっかりと提示して、生徒さんたちがそれを守るっていう部ほど、実は競技成績が高いっていうことも調査で出てくるんです。
生徒たちが集まって適当にゲームで遊んで帰ってくるような部は勝てないっていうことだと思うんですけど、まあこれリアルなスポーツでもそうだと思います。
しっかりとした部があって、指導の方向性がある部ほど高校野球でも強くて、ただ単に放課後集まって野球やろうぜ、みたいな高校だとまず予選で勝てないというのと一緒なんです。だから、しっかりとした教員の指導が実は必要なんです。
ここはまた問題で、eスポーツ部って教員がゲームを教えられないっていう問題があるんですよ。体育の教員が教えているかと言ったら、ほとんどが情報の先生とか、数学の先生、物理の先生なんです。体育の先生でゲームを教えられる先生は本当にいない。
まあ、我々スポーツ科学部で体育の教員指導してますけど、eスポーツを教えてない、できないわけです。なので、部活動の指導は物理の先生や情報の先生がやっているわけですね。
で、その先生方がちゃんと、大会で勝っていこうとか、部の方向はこうしようっていうのをしっかりと生徒さんたちと話していくと、部員たちはまあ対面で練習はしているので、学校内でお互いの友達ができるとかいうことがプラスに働いています。
インタビューすると面白いのはですね、多くの校長先生含めて、多くの先生はeスポーツ部を作ることに反対をすると、気難しい顔で対応されるっていうのが出てくるんですけれど、大会で勝つと、よくやったなとか言われて、eスポーツが認められる。
だから僕は高校生の大会、中学生の大会を逆に作った方がいいと思っています、公式に。大会で勝つという経験で、その方向性に向けて部が一丸となって、どうしたら勝てるんだろうってことが大事です。
あと、eスポーツ部が面白いのは、指導者が先ほど言ったように、なかなかいないっていうことがあるので、ネットでゲーマーたちとね、コミュニケーション取りながら教えてもらうんですよ。
だから中学生や高校生にして、僕の調査高校なんですけど、高校生にして社会のゲーマーたちと連絡を取り合って指導してくださいっていうことがあるんですね。
僕、高校時代野球部だったんですけど、外部の人にね、高校生が連絡とって野球を教えてくださいって、まあ、しないです。監督さんがいるしね。
だから、そういうことが社会とのつながりを持つ能力にもなるし、これ、eスポーツって面白い現象だなって思いました。あと、もう一つ追加で言うと、高校一年生の時にゲームをしてなかったからeスポーツ部でついていけるかわかんなかったんですけどっていう人が高三になるとめちゃめちゃうまくなっていて、高一を指導してるんですよ。これリアルなスポーツでありますかって感じです。
高校一年生の時まで野球やサッカーをしてませんでした、入部しました、高三なったら堂々と先輩として教えてますかって。やっぱり、2、3年じゃリアルなスポーツは上手くならないんですよ。でもeスポーツは十分になって、しっかりとその部の中のポジションが得られるっていうのがeスポーツの良さだなっていうふうに観察してて思いますね。
井上:
大変興味深いですね。
先生一点あの、ちょっとお聞きしてみたいんですけど、先ほどあの部の方向性がしっかりしているところがやっぱり強い、eスポーツ部の部の方向性っていうのは、例えばどんなことが示されているんですか?
高橋:
まず大会でしっかりと勝とうというようなこともそうですし。
まあ、eスポーツをする人たちの一つの問題点は、対面でゲームをしてないっていうことから、暴言を吐きやすいって言うんですよ。画面を通じてやってるから、もう失敗した、「ピー」って鳴るような言葉を言ってしまうっていうね。それってやっぱりあの対面でやってると出ないんですね。
だからそういう言葉を言わない、とか、一人でやってるとマウス投げる奴がいる、とか、先生が言うわけです。そういうような自己抑制、自己コントロールというのも、しっかりと部の中の方針としてやって、先輩後輩でちゃんと会話をしましょうとか物事を考えましょうみたいなことを常に言っていくと変わっていくって、先生は僕がインタビューした時にはね、おっしゃっていまして、ああ、確かにそうなんだろうなって思います。
対面で会っているから抑制が効くんですけど、バーチャルで明日合わないかもしれないような人だったら暴言吐くだろうなっていう。
井上:
勝ちへのこだわりというか、こうボルテージも上がってて、みたいなところですかね。
高橋:
なんとですね、筑波大学の松井先生っていう先生が今、eスポーツ科学ってのを立ち上げてまして、脳科学的に見てもeスポーツは一緒の場に集まって練習した方がいい、ゲームをした方がいいっていう研究をしています。
その時は脳がオキシトシンっていう相手をいたわるようなホルモンが出るそうなんです。
で、オンラインでやっちゃうとそれが出ないそうで、やっぱり人が同じ空間で一緒にやってると、相手とコミュニケーションとったりとか、相手とのいたわりを感じるというのが実際に生理学に出るから、やっぱり部はね、一緒に集まってやったほうがいいのかなっていうふうに、僕の観察もだし、生理学的にもそうなんだなっていうふうに、論文で松井先生、出されてますね。
井上:
なるほど。
ありがとうございます。
高橋:
あとですね、あのリアルなスポーツがバーチャル化する、デジタル化するっていう流れもあります。
例えば、ボート漕ぎは水の上で焦がなくてもVR眼鏡をかけながらローイングマシーンを漕げばレースができたりとか、今、自転車もですね、部屋の中において大画面でですね、画面上で自分が自転車をこぎばアバターが動くみたいなゲームがあったりしてですねっていうふうに、バーチャルなスポーツにリアルなスポーツがなっていくってこともあります。
アメリカのプロゴルフで、TGLっていうのがあって、トップ選手がですね、大画面に向かってボールを打つんですよ。そうするとボールの初速と回転数と回転角度を計算すると、どこにどのように曲がったかがわかるので、映像でボールがヒューっていって、何打目ですみたいなことをまた打っていくという競技が実際にあって、グリーンに乗ると、その後ろでアンジュレーション機械で変わるようなグリーンが作られていて、室内ですべてが完結するというゴルフが実はできています。
ゴルフってリアルで見ると、歩いていかなきゃいけないし、どのホールで誰がやってるか分からないので、見るのは大変なんですけど、体育館内でできればまあ簡単なわけです。
というのが今アメリカでも始まっています。
僕の知り合いでですね、本当のリアルのレーサーがいるんですよ。
トヨタのチームのレーサーがいるんですけど、彼の話ですとグランツーリスモっていうゲームがあるんですが、そのゲームは非常にリアルで練習になるって言って練習するんですけど、大会に出ると勝てないそうです。Gがあれば勝てるけどねって言ってました要はGがあるとそのGに耐えなきゃいけないからレーサーは勝てるんだけど、ゲーム上だと勝てない。技術があるのかな、なんて話だけど、本当のレーサーがグランツーリスモのゲームをやる、実はグランツーリスモのゲーマーが本当のF1レーサーになるっていう映画、実際にあったんです。
という相互のバーチャルとリアルの関係が近づきつつあるっていうのは、まあ私にとっても新鮮で、そのあたりの研究を今しているところですね。
井上:
早稲田大学でスポーツ未来研究所というのはあの率いてらっしゃるかなと思うんですけど、そちらでの研究テーマも現在はeスポーツに焦点を当てていらっしゃる?
高橋:
この大きな流れは日本の中でも止まらないなと思っていたので。
法律用語で言うとですね、情報通信技術を用いたスポーツという、ちょっと硬い感じですけど、これスポーツ基本法が改正されまして、情報通信技術を用いたスポーツを推進するっていう流れを日本政府が今、後押ししてます。
まあ、アジア大会があるので後押ししなきゃいけないわけですね。
それって単なるeスポーツだけではなくて、情報通信技術を用いたスポーツを使えばですね、例えば少子化、高齢化して、過疎地の高齢者がそれを使って、都市部に移り住んだお孫さんとゲームをしてコミュニケーションをとるとか、体も動かすことができるとか、これから日本が抱えるであろう少子高齢化、それから都市の縮小みたいなところに関してはスポーツという人の興味関心を惹きつける文化を利用して、情報通信技術を使えばで、解決できる糸口があるんじゃないかなっていうふうに考えています。
実際に、福島県の富岡町っていう町にご協力いただきながら、富岡町のフィットネスクラブで自転車を漕ぐ方とで、その同じ系列の湘南藤沢店で漕ぐ方がネット上で、その時はズームで繋いだんですけども、ズームで繋いでお話をしながら自転車を漕ぐと、「桜の時期ですね、実際にこんな綺麗なんですか?行ってみたいですね」とかいうコミュニケーションが生まれてきて、要は運動しながら、心と体が解放されてる時に、映像を見ながら解放するっていうことが、非常にコミュニケーションを高めるんだなっていう実感はあります。これ、ちょっと数は増やしてエビデンス集めていかないといけないんですけど。
そうすることによって福島の被災地で多くの方々が避難されているんですね。そうした方々がeスポーツ情報通信技術を用いて交流する、ってことで、コミュニティを再活性化することができないかなっていう大きな夢を抱いています。
そのことによって繋がっていけば、おそらく、交流人口といかなくても、今の言葉で言うと、関係人口、関係する人口として持てば、例えば、その土地に出てきたお米を買ってみるとか、産業にもつながるかなと思っています。スポーツを使って情報通信技術で繋いでいくっていうことに可能性を感じて研究所を立ち上げました。
井上:
スポーツ未来研究所についてお尋ねしてまいりましたけれども、eスポーツにとどまらずですね、IT技術を使った新しeスポーツっていうのを、地域や高齢化、被災地支援にも生かそうとされているということですが、先ほどの福島のお話がありましたが、それ以外にも何か今取り組んでいらっしゃるようなことはございますか。
高橋:
やっぱり情報通信技術をどのように使ったらいいかってことは今考えてまして。
ラインもグループパーティーみたいな機能を使うと、みんなが同時に入って、同じ画面を見ながら一緒の時間を共有できたりする。それも実は1回やってみて、この時は福島県立医大の先生方と協力してやったんですが、福島県医大の教室、もう一人は湘南の鎌倉の海辺でですね、つなげて、お互いが海辺の景色を見ながらとか、話しながら、じゃ、歩いてみましょうとかスクワットやってみましょうっていうと、すごい盛り上がります。
今、湘南の海にいないけど、海の感じがする映像が来るから、それが自分たちのグループで出してくれてるっていう安心感というのがあって。
多分これは実はMCのような、場をうまく和ませるような人の仲介がすごい重要だなってことは気づいたのですが、そうした同時並行的に体を動かしながら同じ画面やコミュニケーションをとるっていうことが、MCがうまくやれば色んなところで出来てくるんじゃないかなと思います。
多分、テレビを見るときに、ワールドカップもこの前やったダラスにいる人とラインでつないでダラスの様子をつなげてたら、テレビを見る以上に盛り上がったと思うんですよ。
そういう可能性を考えると、eスポーツってゲームに限らず運動すると。我々は今e運動って言ってて、オンラインで繋げた運動なんかも面白いなと思ってます。
実はこれ、コロナ期にヨガとかをZoomで先生と繋げてってやってたんですが、今コロナが終わるとなかなか廃れちゃって、Zoomレッスンってあんまりなくなっちゃったんですが、必要な場所にはそのやり方は重要だし、先生と生徒以外に生徒同士がコミュニケーションとるような運動機会っていうのができると、バーチャル上ではあっても、コミュニティが再生するんじゃないかなっていう感じているところです。
まあ、これをどうやってデータとってうまくやるかっていうのが今考えるところで、研究所の中の研究員とともに、今、試行錯誤しながらで、いろんな機器を使いながらやっているっていうところですね。
井上:
確かになんか孤独感みたいなのが薄まりそうです。
どうしてもコロナの時、孤独感っていうのは問題になりましたけれど、そういうのがあのやわらぎそうな気がします。
高橋:
健康っていうのは、孤独は一番まずいんですよ。
孤独っていうのは今一番問題になっているので、孤独にさせないことがすごい大事なので、情報通信技術はその活用をしなきゃいけないのですが、高齢者にとって今何ができるかなと。
おそらく、LINEぐらいはできるように皆さんなり始めてるんですよね。スマホでLINEぐらい。Zoomを繋げてってなかなかできなくて、その辺が情報通信技術の手軽さっていうものの開発も実は必要だなとはちょっと思っているところです。
これ追加ですけど、東京ゲームショーって、私、毎年行っているんですけど、東京ゲームショーで、スウェーデン人だったと思いますけども、新しいゲームを開発したって言って出していたゲームがあってですね。水槽の絵がずっと映っているゲームなんですよ。
でね、餌をポロポロってやるだけで、なんか魚が増えたり、藻が出ちゃったりみたいな。「一日中これつけっぱなしでやるんですか?」と聞くと、「YES」とか言われて。
でもそれでは、一人の心の癒しなんです。
で、僕はね、アドバイスで、「これ、色んなとこで繋げて同じ水槽が見えたら面白くないですか?」って聞いたら、「グッドアイディア」とか言われましたけど。
例えばね、高齢者の家にもその水槽があって、離れてた子供の家にもあって。
で、「お母さん餌やった?やってないでしょ」みたいな会話が同じ水槽でできるって凄い大事なんですよ。
昔、あのポットのお湯が沸いたかどうかで元気かどうか、みたいなのがありましたけど、それのゲームバージョンってあるんじゃないかなって。
やっぱり水槽で魚が大きくなったら、お年寄りは画面タッチで餌が出てきたらやるじゃないですか。それが離れた家でも分かっていれば、「お母さん餌やりすぎよ」って言ってあげるとかねできるっていうね。ゲームはね、使い用なんですよ、本当に。
井上:
なるほど。
そういった事って、今コロナの話も出ましたけれど、通信技術、通信速度とか、デバイスの問題とか、まあサイズの問題とか、が追いついてきたから、整ってきたから、一般の方でも楽しめるようになってきた、みたいなところがあるのかなと思いました。
そういった点では、デバイスの開発ですとか、通信技術ですとか、大きく産業や政策にも関わっているところがのかなと感じるところです。
eスポーツと産業、あるいは政策、あるいはメディアとか、もしくはですね、日本が強いとされているコンテンツ産業、そういったところともつながっているのかなと思いますけれども、先生からご覧になって、eスポーツやバーチャルスポーツを広げていく上で、どんなところにこれから広げていくべき、もしくはここはこうある程度ルールを持って制限をかけていくべきとか、そういったところにご見解があればお伺いできますか?
高橋:
今のご指摘、非常に鋭いです。
eスポーツとはいうものの、実は巨大な産業が表現された一部なんですね。
世界全体がデジタル化していく中で、ゲームを使うとeスポーツなんですけど、通信の速度とコンピューターのCPUのスピード、グラフィックボードのスピードって非常に実は大事で、ゲームも、通信速度が遅い環境にいると、通信速度の速い人には勝てないんです。
なぜか?っていうと、数手先の画像を見ているからです。
一人の人は細切れしか見れないからねっていうことなんですね。
やっぱり推移速度が遅ければ画像も遅くなるので勝てないんですね。
だから、これって実は世界的な競争であって、厳格的に言っても、コンピューターの速度は二番目じゃダメなんです。
必ず一番じゃないと、ボタンを押した相手の方が速かったらもうミサイル飛んできちゃうんですね。だから、常にコンピューター速度ナンバー1にする科学技術の競争の一端でもあるし、通信速度も全く一緒です。
ただ、これが日本全国一律でないっていうところが今問題で、やはりあの経済格差とか地域格差が生じていまして、場所によっては通信速度が遅ければ負け組に入っちゃう、というような環境になりつつあるなと思ってます。
なので、こうした環境、情報通信技術の環境の整備が、eスポーツをやっている人は如実に感じており、本当に必要なんですね。
あと、この産業っていうのは、先ほど先生がおっしゃったように、ゲームで言えば、ゲームを作れる国ってですね、日本、それからアメリカ、アメリカの会社を買収して、今伸びている中国がだいたい中心なんですよ。あと買収してるサウジぐらいなんです。
日本にとっては最先端の技術、最先端のこういうコンテンツとか、知的財産IPを持っている分野なんです。だから、この分野は世界的に日本がリードできる分野なので、日本のゲームが世界中の人がやるようになっていくと、すべての課金は日本に来るみたいな、経済にもつながってくるわけです。
今、僕、学生にも言ってるんですけど、皆さん電車の中でゲームをやってますよね。
「スマホのゲーム何製かちゃんと調べた?アメリカ製、中国製、日本製って君の課金はどこの国に行ってんの?」みたいなことを気にしてやらないと実はいけなくて。
リアルなスポーツってボールを蹴ったら課金はされないけど、バーチャルスポーツ、eスポーツはすでに知的財産を使ったということでお金が生じるわけですよね。
この辺り、産業としても実はすごい重要で、日本としては、コンテンツ産業として一番に押していかなきゃいけないところ。
今リーダーだから、そのリードしているところを守っていくような制度設計とかを作らなきゃいけなくて、海外のルールに合わせる必要がない分野かもしれません。
スポーツって、例えばドーピング検査ってなると、結局ヨーロッパのルールに従ってちゃうんです。ルール設計をするのはヨーロッパの人たちだから、欧米の人たちだから。
だけど、eスポーツはそのルール設計を日本を中心にできるんです。だから日本のルール設定を世界標準にしていくっていう時には、ゲームとかeスポーツもっと言うとアニメとかもそうなんですけど、そここそ、今、リーダーとして制度設計をしていくことが必要かなと思ってます。
井上:
スポーツですとか、他のいろんな産業、まあデジタル系もそうですけれど、先例を作れたところ、もしくはまあその時点で経済大国なところが、やはりルールを引っ張っていく。
今のこの時点では、eスポーツにおいては、日本がそのルール設計をリードすることができる立ち位置にいると。
高橋:
まだ日本のゲームメーカーが世界を抑えているので、ただ今後は分かりません。
それをアメリカとか中国とかがもっともっとルール設計をされちゃうと、まあ日本のゲーム会社はそれに従わざるを得なくなる。
これ映画だと何歳以上しか見れませんみたいな映画倫理ってありますよね、あれと一緒で、ゲームも年齢制限があって、日本でいうとセロっていう機関が日本の文化にあったゲームは何ですかっていうのを全てのゲームをチェックしながら年齢設定をしているんですね。それって実は世界の基準とは違うんですよ。
アメリカだったらこのゲームは16歳以上だけど、日本はこれはちょっと18歳以上じゃないのっていうような、コンテンツの内容によっても変わってくるわけです。
そういったところに関しても、日本の基準を世界に押し出していくっていうことが実は大事で、いわゆる文化の需要の基準作りってとこなんだけど、そういったところも今、各国がバラバラだから、世界をリードして、まとめていくみたいなこともやってもいいだろうなとは僕は思うんだけど、それをじゃあ誰がリーダーで引っ張っていくのかっていうところなんですよね。
ちなみに追加で言うと、「アジア大会のゲームの種目はどこの国のゲームですか?」ってぜひ、調べてもらうといいんです。
アジア大会のゲームは中国製のゲームか日本製のゲームです。で、中国製のゲームに対しては日本代表を出していません。要は中国製のゲームはあまりやってる人が日本国内いないからっていうのがあります。
リアルなスポーツでも、派遣標準記録を達成しないと代表出さないってこともよくある話なんですけど、日本でもやる人がほとんど少ない競技については出していないわけですけど、多くは中国製のゲームですね。
日本のゲーム会社としては、やっぱり日本のゲームでみんなが強いから、そこを中心に選手を派遣したいって気持ちがあるのは、まあわかるわけですよ。
だから、そういうところを裏読みすると、本当にまあ、コンピューターゲーム業界の産業の争いもそこに見えくるかな?っていうふうに思います。
井上:
国同士の覇権争いみたいなことにも絡むのかなと。いつの時代もあることではありますね。
ありがとうございます。
先生の今日のお話、福祉の観点、あるいは今おっしゃったような産業の観点ですね。あるいは教育現場の観点というところからお話しを伺ってまいりましたが、今、覇権争い、どこの国がリードしていくかという時点に、今、日本がいるとすると、人材育成っていうのが今後大切になってくるのかなと感じながらお話を伺いしておりました。
後半にぜひそこは改めて深くお伺いしたいなと思います。
前編は一旦ここまでとさせていただきます。
後編では、高橋先生ご自身がなぜスポーツを社会の側から研究するようになったのか、日本サッカー協会でのお仕事、Jリーグや2002年ワールドカップ、そして現場を見ながら問いを作る研究者としての歩みについて、さらにお話を伺ってまいります。
早稲田大学ポットキャスト博士一歩前、次回のエピソードもお楽しみに。
高橋先生、ありがとうございました。
高橋:
ありがとうございました。




