早稲田大学は2021年11月に「早稲田大学カーボンニュートラル宣言」を行い、研究と教育を連動させてCarbon Net Zero Challenge に取り組んできております。「カーボンニュートラル社会の実現」を目指し、理工系を中心とするテクノロジー分野にとどまらず、人文系、社会科学、総合・新領域系に至る分野も参画する「カーボンニュートラル社会研究教育センター(WCANS)」を設置し、私が所長を務めております。一方ACROSSでは、私が機構会長となり、ACROSSを構成する研究所の全所長がWCANSを兼務する体制をとっております。これにより、ACROSSでの取り組みがカーボンニュートラルに向けた全学的な活動と有機的に結びつくようにして参りました。
カーボンニュートラル社会の実現には、技術的な課題解決のみならず、社会・経済の仕組みの変革、すなわちGXの推進や、新たな価値の創造、ビジネスモデルの構築、人々の意識変革、行動変容などを両輪として進めていくことが不可欠です。このような観点からACROSSでは、理工系の研究分野に、商学、社会科学、政治経済学の分野を加えた13研究所体制で、これまで以上に文理融合による活動を強化しております。
ACROSSの特徴の一つとして、研究成果の社会実装を活動目標の中核に位置付けております。具体的には、EMS実証センターにおけるスマートメータやDRready機器の技術実証、スマートグリッド実験サイトにおけるDER機器も含めた電力ネットワークの電力制御実験、デジタルツインシミュレータによるスマートシティのダイナミズムの評価試験等に取り組むとともに、その成果を実際の都市や島嶼での実装へと展開しています。これらは国の政策において重要な役割を担うものであり、国内外の標準にもつなげていきます。カーボンニュートラル社会の実現に向けた技術的な課題や政策上の課題と、それらの解決方法探索のアイデアや諸活動で得られた知見を共有しながら、会員企業の皆様と密接に連携・協働して取り組んで参ります。
引き続きご支援、ご協力をお願いいたします。
2000年代半ば以降、 私たちの生活のあらゆる場面でICT技術の活用が広がり、これまでにない新たな価値・サービスが生まれてきました。早稲田大学では、この状況を「スマート社会」到来の胎動ととらえ、2014年7 月、産学連携拠点の一つとして「スマート社会技術融合研究機構(ACROSS)」を設立し、活動を進めてまいりました。
この間、社会の基盤であるエネルギー領域においては、電力システム改革の進展、再生可能エネルギーの一層の拡大、需要家側エネルギーリソースの利活用推進、ZEB/ZEHの拡大、VPPの実用化など、多くの変革が進みました。本機構では産学連携の枠組みである「スマート社会技術推進協議会」や「スマート社会技術研究会」の協力体制を基盤として、多様な領域で数多くの研究成果を上げるとともに、制度や標準化にも貢献し、確かな成果を重ねてまいりました。
本機構では、2024年度からの5年間を「ACROSSフェーズIII」と位置づけ、新たな研究所の設置と産学連携の一層の強化を通じて、研究領域の拡張と研究内容の深化を推し進めております。
2026年7月に閣議決定された「日本成長戦略」では戦略17分野の1つとして「資源・エネルギー安全保障・GX」が掲げられ、官民でGXの中長期的な方向性を共有するために策定された「GX2040ビジョン」では「エネルギー、蓄電池、次世代自動車、鉄道、物流・人流、住宅・建築物、食料・農林水産業」などが個別分野として重視されています。これらはACROSSが主要課題として取り組んできた研究領域であり、住宅×エネルギー、電力×交通、食×エネルギーなどのセクター間連携によるマネジメントや最適化において、先駆的な成果を上げていると自負しております。また、「第7次エネルギー基本計画」で示された2040年度温室効果ガス73%削減や再エネ比率4〜5割という挑戦的な目標に加え、2026年の改正GX推進法施行に伴うGX-ETSの開始やGX投資の実行など、社会全体が「目標設定」から「義務化・実行」へと移行しています。こうした転換期においてこそ、我々の研究成果が「GX目標達成」や「スマート社会の実現」を支える技術や社会制度の礎となるよう、絶え間ない活動を続けてまいります。