教員からのメッセージ
渡辺 徹也 教授
法学学術院教授。実務家であった父親の影響を受けて法律の世界に入る。専門は租税法で、同大学で唯一租税をテーマにしたゼミを担当。司法試験考査委員や公認会計士試験委員を歴任。内閣府の税制調査会など多くの政府の会議にも専門家委員として参加。著書に『スタンダード法人税法 第3版』(弘文堂)など。
法律に関することは、日々の新聞記事だけでなく、小説やマンガにおいてさえ頻繁に目にするのに、大学の法学部となるとお堅いイメージを持つ人が多いのはなぜでしょう。法律とはそもそも皆さんのとても身近にあるものです。
私が専門とする租税法関連では、最近、所得税の支払いが生じるボーダーライン「103万円の壁」の 問題が、多くの人たちの関心を集めました。これも法律改正に関わる問題です。このように法律というものは、とても身近で実社会に深く根ざしています。したがって、法律を学ぶと、社会の動きや仕組みが理解できるようになりますし、これまでとは違った目で世の中を見ることができるようにもなります。日常生活でも、法的な思考をする人とそうでない人には差が出ます。
でもそれは、裏を返すと絶対的な正義や正解がないことの証しでもあります。裁判ひとつ取ってみても、立場によって法律の見方や解釈が異なるのです。法は生き物です。さまざまな法改正や判例等を通して構造化された法的な思考プロセスを習得することで、全体を把握する理解力、相手の考えを敬う想像力、良い結論を導く洞察力が磨かれ、鍛えられていきます。私のゼミでも、条文を暗記するのでなく、対話を重視しており、また学生どうしの議論によって相手を説得する術を学ぶようにしています。租税法は法学における最先端領域ですので、私も常に知識をアップデートしながら、学生からも多くの刺激を受けています。
「法を知り、使いこなす」 とは、複雑な社会を逞しく渡り歩くための ”知性の武器“を手にすることにほかなりません。きっと、人生の彩りを豊かにしてくれるはずです。
(2025年6月時点の情報です)