School of Culture, Media and Society早稲田大学 文化構想学部

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小説「あん」⇒映画「あん」⇒朗読劇「あん」 完成までの物語(ドリアン助川さん)

2017年1月29日(日)に早稲田大学大隈講堂にて、朗読劇「あん」に出演するドリアン助川さん(早稲田大学第一文学部卒)。大ヒット小説となった「あん」が映画化され、朗読劇まで発展した経緯をお伺いしました。

小説「あん」

小説「あん」は2013年2月にポプラ社より刊行されました。ハンセン病元患者の高齢女性と、人生の半ばで転んでしまった男が出会い、小さなどら焼き屋を営んでいくところから物語は始まります。療養所内で50年間和菓子を作り続けてきた女性の技術が効を奏し、店はいったん繁盛します。しかし、ハンセン病に対する世間の無理解からやがて客は激減し、女性は自ら店を去ります。季節が過ぎ、男は療養所内の女性を訪れます。そこで彼が見たこと、知ったことは・・・。

1996年に「らい予防法」が廃止され、病気が完治したにもかかわらず、絶対隔離という状況に置かれてきた元患者の皆さんの人生が次々と明らかになってきました。当時、深夜放送のパーソナリティを務めていた私は人間の普遍的な存在価値を求める小説をこの絶対隔離を背景にして書こうと決意しました。ただ、言うは易し思うは易しで・・・なかなか療養所に入っていく勇気がなく、また執筆の自信もなく、この大きなテーマを抱えながらも無為な時間が過ぎていきました。実際に療養所内での取材が始まったのは2009年のことです。出版までにはさらに4年かかりました。

時間をかけた甲斐があったのか、こうしたテーマを求めていた皆さんが想像以上に多かったのか、この小説は刊行してすぐに話題になり始め、各新聞の書評欄でも好意的に取り上げられました。そして中高生を対象にした全国読書感想画中央コンクールで指定図書に選定され、NHKラジオの「新日曜名作座」において、竹下景子さんと西田敏行さんによる連続ドラマとなりました。現在ではフランス、ドイツ、韓国、台湾で翻訳刊行され、今年は英国、イタリア、ベトナム、中国で予定されています。

映画「あん」

こうした動きのなかで、映画化が実現しました。監督はカンヌ国際映画祭でグランプリを受賞され、日本人監督として初めて審査員にもなられた河瀬直美さんです。樹木希林さん、永瀬正敏さんを始め、日本を代表する俳優陣が出演しています。第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門のオープニング作品に選ばれ、2015年夏の段階で上映は45カ国となっていましたが、現在は何カ国まで増えているかは、もうわかりません。昨年秋に中国を訪れた際も、向こうの作家陣はネットですでに見ていました。昨年の11月に、ウイーンの文学祭にも招待され、映画「あん」の上映と私の朗読、講演などがありました。(他にも辻仁成さんや柳美里さんの講演がありましたが、映画上映は「あん」だけでした。)

朗読劇「あん」

映画製作と並行する形で、朗読劇「あん」の準備も進めていました。こちらは原作者である私ドリアン助川と、早稲田の卒業生であり、これまで全国千ヶ所以上で絵本の読み聞かせ公演を行ってきた女優、中井貴恵さんとの舞台です。私と中井貴恵さんが同じく早稲田出身なのも縁。早稲田大学大隈講堂で開催し、多くの学生の皆さんにも観ていただけないだろうか、という話になりました。

また、ここでさらにもうひとつのアイデアも出ました。元患者の皆さんから、ハンセン病の療養所である国立多磨全生園には、早稲田大学のボランティアサークルの「橋(チャオと読みます)」の学生さんもよくいらしてくださっていると伺いました。朗読劇「あん」とセットで彼らと、ハンセン病と療養所の歴史、現実、そして人間の尊厳についてのシンポジウムを行ってはどうかと考えました。

早稲田大学文化推進部に相談したところ大変前向きに考えてくださり、早速、2015年10月の早稲田最大の文化の祭典「早稲田文化芸術週間」で大隈講堂での朗読劇・シンポジウム上演が実現しました。橋(チャオ)を意識し、副題には「明日に架ける橋」とつけました。

今回は世界ハンセン病デーでの再演となります。語りだけでお届けする「あん」は声にならない部分も含めて、命あるものたちの言葉に満ちています。透明なその言葉を、どうぞ聴きにいらしてください。

世界ハンセン病デー特別企画 ~明日に架ける橋~ 朗読劇あん

日時

2017年1月29日(日)15:00~(開場14:00)

出演

1部 シンポジウム ドリアン助川、ハンセン病問題支援学生NGO橋-Qiao

2部 朗読劇あん 中井貴惠(朗読)、ドリアン助川(朗読)、ピクルス田村(ギター)

※日本財団フォトグラファー富永夏子写真展 『ハンセン病を考えることは、人間を考えること。』も会場ロビーで開催

場所

早稲田大学 大隈記念講堂
東京メトロ東西線「早稲田駅」3a出口徒歩5分
都営バス(学02:高田馬場~早大正門間) 早大正門停留所からすぐ

料金

¥2500(全席指定)

申込方法

・オンザフィールド ☎050-5525-1493(平日11時~18時) Web http://otf-webshop.com

・カンフェティ   ☎0120-240-540(平日10時~18時) Web http://confetti-web.com

・イープラス http://eplus.jp

主催・制作

オンザフィールド

協力

早稲田大学文化推進部|早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター

日本財団|ポプラ社|エレファントハウス

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