School of Culture, Media and Society早稲田大学 文化構想学部

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学部長挨拶

文化構想学部長 小田島 恒志

新型コロナウィルスが猛威をふるい始めた頃、感染予防対策として、多くの自治体の首長が声を揃えてこう言っていました―「社会的距離を取りましょう」。今聞くと、え?と思いませんか?「社会的距離を取る」って、なんだか「世間に背を向けて生きていきましょう」とか「反社会的な活動をしましょう」とか言っているみたいに聞こえませんか?もちろん、当時これは「ソーシャル・ディスタンス(social distance)」という言葉を直訳したもので、カタカナ語の多用を避けるべく日本語に置き換えたものだと国民皆が了解していたので、誤解されることもなく済みました。とは言え、「社会的距離」というそれ自体意味不明な言葉を、行政もメディアも何の疑問も持たずに連呼していたのには驚きました。きっと最初にこう訳した人は「ソーシャル・ダンス(social dance)」も「社会的舞踊」と訳すのでしょう。

そうです、social という言葉を辞書で引けば、「社会の、社会的な」に続けて「社交の、社交上の」という意味が挙げられています。そもそも英語メディアがコロナ対策にこの言葉を用い始めたときは、「social distancing」と動詞(動名詞)で表していました。これは「社交の際には=人と接するときには、(それにふさわしい適切な)距離を取ること」という行為を示すもので、コロナ以前から感染予防対策に使われる言葉でした。別に「社会的」な「何か」を示すものではありません。

ソーシャル(social)という言葉の語源はラテン語のソキウス(socius)、「仲間」という意味の言葉で、「結びつけられた、分かち合っている」状態を表します。そこから「社会」の意味にも「社交」の意味にも繋がることは連想できる(=associate これもsociusからきた言葉)と思いますが、一つの言葉で表される概念を日本語では別々の言葉で表しているわけです。言葉にはそれぞれ固有の文化的背景が反映しています。そうした文化を、文化の違いを意識しないで、まるで万国全ての言葉が一対一対応で直訳できるかのように決めてかかると、「社会的距離」のような可笑しな言葉を生み出してしまうのです。

文化構想学部は多種多様な学問領域と多種多様なアプローチを用意しています。何をどのように学ぶにしても、行政やメディアがこうした可笑しなことを言い出した時には、なんかヘンだな、それは違う、と気が付く感性を養ってもらいたいと思います。え?それは違うって?そう、その意気です。

 

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