School of International Liberal Studies早稲田大学 国際教養学部

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卒業生および新入生の皆様へ  (学部長からのメッセージ)

卒業生および新入生の皆様へ

早稲田大学 国際教養学部長  池島 大策

ご卒業そしてご入学、誠におめでとうございます。心から祝福を申し上げます。
本来であれば、卒業・入学される皆さんは、個別に開かれる盛大な卒業式や入学式において、ご自分の保護者等の関係者とともに我々教職員一同が実際に出席する例年通りの形式で、祝福されるべき時季におられます。
しかし、ご存知のとおり、新型コロナウィルスによる感染症の蔓延により、早稲田大学は、2019年度卒業式と2020年度入学式を中止し、大学の新学年・新学期の開始を大幅に遅らせることを決定しました。これは、偏に学生皆さん、その関係者の方々の安全と健康を最重要と考えたうえでの判断によるものです。
同時に、皆さんは、楽しみにしておられた今夏の東京2020オリンピック(五輪)・パラリンピックが延期されたことを残念に思っておられるでしょう。皆さんの中には、その運営・実施等に関わる予定であった関係者・ボランティアとしても、ご活躍される予定の方がおられたかもしれません。
このように、皆さんはこの深刻な事態からの被害者ともいえます。とはいえ、皆さんにはここで考えてほしいことがあります。我々が直面しているこの疫病は、人類史上稀にみるインパクトをグローバルな規模で及ぼしているパンデミックであるということ、しかも、それがいつになったら本当に終息するのかは、現時点では不明であるということです。人類は、目に見えないウィルスという敵との長期戦を強いられているのかもしれません。
それでは、我々はどうしたらよいのでしょうか。
近代五輪史上、予定されていた大会が中止されたのは、夏冬合わせて5回あります。いずれの場合も、スポーツの祭典が戦争に翻弄された例といえましょう。例えば、今からちょうど80年前の1940年に予定されていた東京五輪も、「幻の五輪」の一つで、日中戦争や欧州での戦況の影響により中止の憂き目にあいました。
しかし、40年前の1980年のモスクワ五輪では、東西冷戦の最中にあって、西側諸国の一員として日本が米国に追随して同大会をボイコットした結果、一番割を食ったのは既に選出されていた選手たちでした。当時金メダル最有力候補と言われていた柔道の山下泰裕氏も、その一人でした。またしても、多くの選手たちが国際政治の犠牲となりました。
彼は、次の1984年のロサンゼルス大会で今度は東側諸国がボイコットをする中、大会中の負傷にもめげず金メダルに輝きました。最初の落胆とその後の4年に及ぶ血の滲むような努力やモチベーションの維持は、常人には計り知れないものがあったことでしょう。
その山下氏は、今回の東京2020五輪大会における日本オリンピック委員会(JOC)会長として、同大会の延期決定を受けた際、次のようにコメントをしています。

「私ももうちょっとで63歳。やっぱり、人生いろんなことがあります。自分の思うように行かないこと、予想もしないようなこともあります。モスクワ・オリンピック・ボイコットを経験した人間としては、そういう状況になったとしても、腐らず、あきらめず、やはりもう一回自分自身を奮い立たせて、そして気持ちを若々しく持って、来年に向けてチャレンジしていってほしいなあ。たとえ、オリンピックの今回内定を得て、選考の方法が変わったとして、代表になれない人は、そんなに多くはないかもしれませんが、その状況に真摯に向き合って、自分の全力を尽くして、新たな目標に向けて、頑張って行ったということは、私は、その人の人生に必ずプラスになると、そういうふうに思っております。」
(「東京五輪延期を受け JOC山下会長が会見」2020年3月25日付https://www.youtube.com/watch?v=j4a0-qaugu4 (23:43-25:09))

今の時期、我々は、この言葉をぜひ重く受け止めて、みんなで勇気をもって次の一歩を踏み出そうではありませんか。
この非常事態は、これほどグローバル化された世界では人類が初めて直面する難局であります。しかし、我々はこの世界でも一人ではないこと、皆さんの連帯感(sentiment de solidarité)の中で我々が相互に協力して乗り切る必要があります。皆さんは、孤独かもしれませんが、孤立はしていません。
また、‘Stay at home!’がキーワードとなる今は、一人で沈思黙考するもよし、自分の将来をじっくり考えて、普段は読んだり鑑賞したりすることができない古今の名作を屋内で熟読し、視聴するにはむしろ絶好の機会です。
以下に、英国の詩人、ジョン・ダン(John Donne (1572-1631))による「瞑想録 第XVII」(1624年)から有名な一節を紹介します。皆さんは、それをどのように解釈されますか。

No man is an island,
entire of itself;
every man is a piece of the continent,
a part of the main;
if a clod be washed away by the sea,
Europe is the less,
as well as if a promontory were,
as well as if a manor of thy friend’s
or of thine own were;
any man’s death diminishes me,
because I am involved in mankind,
and therefore never send to know for whom the bell tolls;
it tolls for thee.
(‘Meditation XVII’, Devotions upon Emergent Occasions, 1624)

この部分は、ノーベル文学賞を受賞した米国の作家、E.M.ヘミングウェー(E.M. Hemingway (1899-1961))の名著『誰がために鐘は鳴る』(For Whom the Bell Tolls (1940))(後に映画化もされた)のモチーフやタイトルとしても有名で、英国の歴史家、E.H.カー(E.H. Carr (1892-1982))による国際関係論の必読書『歴史とは何か』(What is History? , 1st Ed. (1961); 2nd Ed., Penguin Books (1990), p. 31.) の中でも一部引用されています。
この詩自体は難解ですが、個と全体との関係、個人と社会との関係などをまさに今、深く考えさせてくれます。400年近くも前に書かれたこの詩の意味するところを、この時期に改めて味わい、今後の我々の糧として行くのもよいでしょう。
最後に、この事態にあって、今皆さんにできることは何でしょうか。しばしの間、自制をする中で心身ともに健康管理を行い、社会的な距離を保ちながら、自分にできることをぜひ探してみてください。
卒業生の皆さんは、SILSで学んだことをこの未曽有の危機的状況を克服するのに生かしていってください。また新入生の皆さんは、SILSでの学びを、今次の逆境を乗り越えるためにどうすれば良いのかを一緒に見出す好機と考えてください。
孔子(前551頃-前479)は、逆境においてこそ人間の真価が試され、それを順境とできるように心得たいものである、と説いたといわれます。

「子曰、不仁者不可以久處約、不可以長處樂、仁者安仁、知者利仁」
(『論語』巻第二 里仁第四 二)

この教えは、二千数百年以上経った今でも、生きているのです。
現在の危機を将来の好機につなげるように共に頑張って行こうではありませんか。

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