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’23 早稲田ジャーナリズム大賞贈呈式

石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞

  • #ジャーナリズム大賞
  • #総長室

Mon 25 Dec 23

石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞

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Mon 25 Dec 23

2023年12月7日(木)、第23回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」の贈呈式が開催されました。2部門3作品での大賞と、2部門3作品での奨励賞授賞となり、受賞者には賞状、副賞のメダルおよび目録が授与されました。

第23回 石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞 贈呈式

第23回となる本年度の贈呈式は、受賞者および共に尽力された関係者の方々、田中愛治総長、選考委員、石橋湛山記念財団代表理事 石橋省三様をお招きし、執り行われました。贈呈式では、田中愛治総長から冒頭で式辞がありました。

田中 愛治 総長

田中 愛治 総長

挨拶 “ジャーナリズムの新たな可能性を示唆”

本日は、皆さまご多忙のところ、第23回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」贈呈式にご出席くださいまして、誠にありがとうございます。
本賞は2000年に創設され、2001年に第1回の贈呈式を開催しました。回を重ねるにつれて、賞の社会的評価も高まりつつあり、2023年度は155件のご応募・ご推薦をいただくことができました。その中から今年度は、2部門3作品の大賞と2部門3作品の奨励賞 を選出いたしました。早稲田大学を代表して、受賞者の皆様に、心よりお祝いを申し上げます。
本賞は2000年に創設され、2001年に第1回の贈呈式を開催しました。回を重ねるにつれて、賞の社会的評価も高まりつつあり、2023年度は155件のご応募・ご推薦をいただくことができました。その中から今年度は、2部門3作品の大賞と2部門3作品の奨励賞 を選出いたしました。
さて、本賞にその名を冠している石橋湛山は、ジャーナリストとして長く活躍した後、政界に転じ、本学出身者として初めて内閣総理大臣になりました。湛山はジャーナリストとして、また政治家として理想を見失わず、多様で複雑な現実から目を逸らさず、そしてまた時勢に右顧左眄(うこさべん)することもなく、自らの主義・主張を堂々と貫き通しました。このことは、早稲田大学の創立者である大隈重信とも共通していると思います。単に政権担当政党に反対することを意味するのではなく、時の権力におもねらない、自分の信念に沿って判断し行動するという「在野精神」を持っていたと考えられます。
私は学生に対して未知な課題に果敢に挑む『たくましい知性』と、異なる国籍や性別、信条、価値観などの多様性を尊重し受け入れる『しなやかな感性』を兼ね備えた人材に成長してほしいと考えており、改革を推し進めています。湛山は、まさにその二つを兼ね備えた、本学そして学生たちが範とすべき人物であると思っております。
その精神を受け継ぐべく、今回の授賞作はいずれも、日々生起する膨大な出来事の中から発掘した歴史的事実を丹念に掘り下げ、権力による隠蔽や捏造あるいは恣意的な操作を排除し、決して忘れられない事件や問題を訴えた調査報道であります。その手法も、ジャーナリズムの新たな可能性を示唆しているように思います。後程、吉岡 忍(よしおか しのぶ)委員から今回の選考全体についてご講評いただきます。
さらに本学では、2002年から「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞記念講座」を開講しています。毎年、受賞者の方々をゲスト講師に迎え、学生たちに取材や報道現場の生の声を伝えていただいています。この講座は、ジャーナリストを志す学生たちにとって大変意義深いものであり、ジャーナリズムの本質や役割を深く考えるとともに将来への希望を与えていただく貴重な機会となっております。同時に、私どもはその成果を受講生のみならず、広く世に問いたいと考え、著作としてまとめる作業を続けています。
最後に、重ねて受賞者の皆様のご研鑽とご苦労に最大限の敬意を払いますとともに、この受賞がさらなる飛躍の契機となることを心から願っています。本日は、誠におめでとうございます。

挨拶 “ジャーナリストの役割、その重要性は増す”

石橋湛山記念財団代表理事 石橋 省三 様
※当日はご欠席のため、司会者が代読

まずは受賞者の皆さま、おめでとうございます。
本年は、「湛山没後五十年」の年に当たります。それを記念して、この六月に、早稲田大学の大いなるサポートをいただき、大隈記念講堂でシンポジウムを催しました。緊迫化する昨今の国際情勢を湛山ならばどう考え、どう発信するだろうか。星浩さんにモデレーターをお願いし、四人のパネリストに討論をしていただきました。
このシンポジウムでは、モデレーターとパネリストにより熱心な議論が行われ、大変充実した約三時間となりました。この様子を文字化したものが、本日お手元に配られています早稲田大学新書です。
さらに、この新書には、四人の気鋭の研究者による湛山に関する論考も加えられています。シンポジウムと相互に補完する組み立てになっていますので、お目通しいただき、現下の情勢を考えるヒントを得ていただければ大変ありがたく思います。
シンポジウムを聞き、改めて困難な時代になればなるほど、世に指針をあたえるジャーナリストの役割、その重要性は増すと再認識させられました。本日お越しのジャーナリストの皆様、ジャーナリストの卵の皆様には、自負と自信とを持って活動していただきたいと思います。
本日のご盛会をお祈りするとともに、受賞者そしてご来場の方々のご健勝と一層のご活躍をお祈り申し上げます。

全体講評

吉岡 忍 委員

吉岡 忍 委員

各受賞者への賞状と副賞の贈呈後、選考委員を代表して吉岡 忍委員から講評が述べられました。

 大賞 3作品の講評

【公共奉仕部門 大賞】ETV特集「ルポ 死亡退院  ~精神医療・闇の実態~」(NHK Eテレ)

病院、行政、そして家族にも見放された精神病患者を最後に棄民というか、死亡するまでというか、そういう場所として使われてきた病院の実態を描いた番組でした。内部告発も含め、大量のカルテや内部映像を入手し、病院自体の闇、行政の不作為を追及しながら、われわれ社会の側も見て見ぬ振りをしつづけた異常な現実を浮かび上がらせています。この作品には3.11東日本大震災と原発事故があったゆえに、ようやく退院できた患者を描いた前作や前々作があり、継続的な取材がいかに大切かを教えてくれてもいます。こんな現実があったのか、もし私があの病院に入れられたら、と考えると、夜も眠れなくなるような作品だったと思います。

【公共奉仕部門 大賞】「命ぬ水 ~映し出された沖縄の50年~」(琉球朝日放送)

PFAS(ピーファス/有機フッ素化合物)の危険性については、近年、記事や本でもいろいろ扱われていますが、沖縄におけるPFAS問題と命や暮らしの接点をていねいな取材で生々しく描く一方で、その背後にある米軍の横暴、対して日本政府と防衛局の手も足も出ない、というよりは手も足も出さない無能無策を対比し、沖縄本土復帰後の50年のむなしさに深く迫った作品でした。情報公開制度を駆使してアメリカ政府や基地の対応に迫った手法もみごとです。汚染された古井戸の映像など、テレビならではの特性をよく活かしています。見ているうちに、こうした現状を引き起こしている日米地位協定がいかに残酷非道か、あらためてよくわかります。

【草の根民主主義部門 大賞】『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』 書籍(小学館)

マスメディアがずっと見逃してきた自民党と統一教会の関係を一人で取材しつづけ、その成果が安倍元首相の銃撃死をきっかけに政府与党を根もとから揺るがすことになった。おかげで戦後日本の保守政治の、どろどろした内実も明らかになりました。しかもこれが、例えば最近も、岸田首相が教団幹部に会っていた事実を明るみにするなど、他のマスコミの奮起を促してもいる。苦労して得た情報を一人占めしない、フリーのジャーナリストとしてなかなかできることではありません。先ほど、この会場の入口で鈴木さんとすれ違いましたが、ほんとに草の根を絵に描いたような人です。ぜひこれからも粘り強いお仕事をつづけていただきたいと思います。

 奨励賞 3作品の講評

【公共奉仕部門 奨励賞】神戸連続児童殺傷事件の全記録廃棄スクープと一連の報道(神戸新聞、電子版「神戸新聞NEXT」)

阪神大震災直後に神戸で起きたこの少年事件はのちに少年法改正にまで至った大きな事件でした。この関係書類がすべて、たんに事務的に廃棄されていたとは信じがたいですが、しかし、このスクープによって最高裁以下の司法における文書の扱い方を見直させることにつながりました。一連の報道は事件を起こした少年の更生などさまざまな分野に広がっていきましたが、これだけ功績のあった活動ですので、ぜひまとまった本で読みたかった、と思いました。

【公共奉仕部門 奨励賞】新型コロナワクチンの副反応に関する調査報道(CBCテレビ)

これはワクチン不要説に立つわけではありませんが、深刻な副反応に関してまとめられた最初のドキュメンタリーでした。放送時で1800件の障害もしくは死亡例は無視できる規模ではありません。インタビューも取材もていねいで、わが身に引きつけて考えさせられました。このワクチンのmRNAの原理も解説されていましたが、では、これがどのようないたずらをして副反応に至るのか。見ている側の想像力を刺激して、医学的に考えさせるヒントがほしかったと感じました。

【草の根民主主義部門 奨励賞】「南米アマゾンの”水俣病”」に関する報道(TBSテレビ・Web)

アマゾンにおける大規模な盗伐と砂金採取、これら略奪行為から引き起こされる水銀汚染、地域経済の変容、背後の政治権力の怪しげな思惑等々、まったく知られていない現実を伝える作品でした。コロナ禍のせいもあるでしょうが、近年ますます日本のテレビが国際的な視野を失うなか、制作者たちは果敢に挑戦しています。アマゾンの出来事がブラジルの政治経済、さらには国際社会とどう絡み合っているのか、もう少し考えさせてくれる具体例があればよかったかもしれません。

私は早稲田ジャーナリズム大賞の選考に長いあいだ携わらせていただきました。私自身はこの大学の政治経済学部政治学科を途中で退学していまして、以来、なるたけ近づかないようにしてきたのですが、選考会のときは来ないわけにはいきません。選考委員のなかに早稲田大学教授や関係者もいらして、ずいぶん議論もしました。
このほかにも私はいくつかの賞の選考に関わっていますが、最終候補作が10作品あれば、あ、今日の選考会は2時間か3時間だな、と予想がつくのですが、早稲田ジャーナリズム大賞の場合、たいていそれでは終わりません。みなさんが次々にいろんな論点を持ちだして、ここは高く評価べきでしょう、ここはもう少しがんばってほしかった、と議論が白熱し、こんがらがります。今回も4時間以上かかったでしょう。しかし、こうした議論をしているうちに、私が見落としていたこと、知らなかったことに気づかされ、おおいに勉強にもなりました。
うん、こういう熱心な先生方がいるなら、もしかしたら早稲田大学も案外いい大学だったのかもしれないぞ(笑)と、再認識する8年間でもありました。長いあいだ、ありがとうございました。やっと卒業できた気分です。
そして、受賞者のみなさん、おめでとうございます。

各受賞者の方々の挨拶

【公共奉仕部門 大賞】
ETV特集「ルポ 死亡退院  ~精神医療・闇の実態~」 青山 浩介 様

【公共奉仕部門 大賞】
「命ぬ水 ~映し出された沖縄の50年~」 ジョン・ミッチェル 様、島袋 夏子 様

【草の根民主主義部門 大賞】
『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』 鈴木 エイト様

【公共奉仕部門 奨励賞】
神戸連続児童殺傷事件の全記録廃棄スクープと一連の報道 霍見 真一郎 様

【公共奉仕部門 奨励賞】
新型コロナワクチンの副反応に関する調査 有本 整 様

【草の根民主主義部門 奨励賞】
「南米アマゾンの”水俣病”」に関する報道 萩原 豊 様

関連リンク・第23回 早稲田ジャーナリズム大賞に向けて

第24回(2024年度)「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」の応募詳細につきましては、今春に発表いたします。たくさんの作品の応募・推薦をお待ちしております。
本賞は広く社会文化と公共の利益に貢献したジャーナリスト個人の活動を発掘し、顕彰することにより、社会的使命・責任を自覚した言論人の育成と、自由かつ開かれた言論環境の形成への寄与を目的としています。
本賞及びこれまでの授賞作等については、以下のWebページをご覧ください。

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