YUI
SUSAKI
須﨑優衣さん
0.01%の可能性に挑んだ、東京2020大会への道
2021年4月、女子レスリングの東京2020オリンピック・アジア予選、50kg級で優勝した須﨑優衣選手がオリンピック初出場を決めた。
「オリンピックは私にとって小学生の頃からの夢。中学の時に東京での開催が決まって以来、ずっと金メダルを最大の目標にしてきました。代表に内定したときは安心と、メダル獲得への強い決意の両方の気持ちが湧き上がったのを覚えています」
笑顔で語る須﨑選手だが、歩んだ道のりは険しかった。高校生にして世界選手権制覇という快挙を成し遂げるも、早稲田大学入学後の2018年、けがにより全日本選手権を欠場。2019年世界選手権の代表決定プレーオフで敗れ、オリンピック出場は絶望的となる。
「人生で一番のどん底に落ちた。そう感じました。そんなときに周りの人がかけてくれたのが、『まだ終わったわけじゃない』という言葉。たとえ0.01%の可能性だとしても、チャンスが残されているのであれば賭けてみようと、毎日の練習に一生懸命取り組みました」
リベンジをかけた同年12月の全日本選手権で優勝し、国内の代表争いを制した矢先、新型コロナウイルスが世界を襲う。東京2020オリンピックの延期に伴い、出場枠がかかるアジア予選も延期となった。
「2020年に向けて全てを調整していたので、困惑したのは確かです。それでも『強くなれる期間を1年間もらえた』と前向きに捉え、新しい技に挑戦したり、体づくりの時間を増やしたりしました。これまでの競技人生は試合が中心だったので、ゆっくりとレスリングの楽しさを追求できた、いい期間になったと思います」
努力を惜しまない姿勢は学業にも表れる。スポーツ科学部で学ぶ須﨑選手は、所沢キャンパスとレスリング部練習場のある早稲田キャンパスを往復する多忙な日々。移動時間は読書にあて、少しでも時間を無駄にしないように過ごしていたという。
「競技やセカンドキャリアに直接役立てられるスポーツ科学を学べたことは、 とても有意義でした。また、レスリング部のメンバーは、いつも大会の応援に駆けつけてくれ、感謝の気持ちでいっぱいです」
迫る東京2020大会本番。須﨑選手はどのような気持ちで大舞台に臨むのだろうか。
「『0.01%の可能性』を示してくれたコーチや、そばで支えてくれた早稲田大学の仲間たち、大会を陰で支える多くの皆さま、応援してくださる皆さま、そしてプレーオフ敗退の時に『今までよく頑張ったね、優衣のおかげでたくさん素敵な思いをさせてもらったよ』と温かく励ましてくれた家族。みんなの思いを胸に、絶対に金メダルを獲得できるように、全力で挑みます」
PROFILE
1999年千葉県生まれ。スポーツ科学部4年。早稲田大学 レスリング部所属。小学1年生よりレスリングを始め、中学2年生から高校3年生にかけ、JOCエリートアカデミーに所属。2017年、世界選手権48kg級優勝。2018年、世界選手権50kg級優勝。2021年に東京オリンピック・アジア予選50kg級で優勝し、東京2020大会への出場枠を獲得する。
※須﨑選手はレスリング女子フリースタイル50kg級(2021年8月6日)に出場予定です。