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第10回-2010年度 授賞作品

第10回(2010年度)石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞 授賞作品

公共奉仕部門 大賞

  • 作品名:NHKスペシャル「日本海軍 400時間の証言」全3回
  • 受賞者:日本放送協会 大型企画開発センター チーフ・プロデューサー NHKスペシャル「日本海軍 400時間の証言」取材班 藤木達弘
  • 発表媒体:NHK総合テレビ
  • 発表年月日:2009年8月9日・10日・11日
  • 受賞理由:日本海軍の頭脳部というべき軍令部の元幹部たちが戦後集まって“反省会”を開いていた。その400時間におよぶ貴重な録音テープから、あの無謀な戦争はなぜ引き起こされたかを問いかける。そこから浮かび上がってくるのは、組織を守ることで個人の責任を免れようとする日本人の卑怯さと怯儒さである。それは日本海軍の病理というだけでなく、いまの日本に生きる私たちの病理でもある。繰り返し語られる「やましき沈黙」というキーワードは、あの戦争をひき起こしながら、何ら反省しない旧日本海軍軍人の自己保身と組織防衛の姿勢を批判しているだけではない。それは、前代未聞の不祥事を引き起こした大阪地検特捜部の腐敗を検証する視点にも通じる。「これは決して過去の戦争を告発するために作ったものではありません。」静かにそう語る司会進行役のナレーションは、視聴者に消費されるために作られたとしか思えないテレビ番組ばかりが横行する中で、圧倒的な存在感で“底光り”している。(佐野眞一)
  • 受賞コメント:開戦と敗戦の責任に迫りたいと、私たちは400時間のテープを聞き続けました。その結果見えてきたのは、今の日本社会にも通じる「組織」の罪、「官僚主義」とその無責任体質でした。ですから、公共奉仕部門が「日本の社会におけるあらゆる官僚主義を排するという明確な視点と問題意識」を対象とした作品に与えられるという点は、私どもにとってこの上のない喜びであり励みとなります。ありがとうございました。

草の根民主主義部門 大賞

  • 作品名:「境界を生きる」~性別をめぐり苦しむ子どもたちを考えるキャンペーン
  • 受賞者:毎日新聞社 生活報道部「境界を生きる」取材班 丹野恒一
  • 発表媒体:毎日新聞
  • 発表年月日:2009年9月28日から現在まで(継続中)
  • 受賞理由:「性同一性障害」。特例法が制定された成人と違って、18才未満は忘れ去られたまま。さらに出生後、身体上男女の別がきまらない境界線上にいる子供たち。いわゆる「性分化疾患」。さまざまな周囲の偏見と、自分自身の内面の苦悩をかかえたまま、生長する子供たち。いままでマスメディアで取上げられることの少なかった根源的な問題に取り組み、一人一人の事例によりそい、ルポを重ねるまなざしが、優しい。そこには、男か女かと二分することではなく、まず人間であることこそ大切ではないかという問いかけがある。あらゆる区別や差別を超越することは困難だが、それを乗りこえて人間性をとりもどすために、私たちは戦わねばならない。(下重暁子)
  • 受賞コメント:僕は男。私は女。自分の性別とは多くの人にとって何の疑いも持たない大切なアイデンティティー。でもその境界に生まれてきた子どもたちの言葉にできない苦しみを、取材を通して知らされました。身に余る賞をいただきましたが、受賞を機に性分化疾患や子どもの性同一性障害に光が当たることを願います。そして、勇気を出して取材に協力してくださった方々のためにも、当事者や家族が生きやすい社会を目指して今後も報道を続けたいと思います。

文化貢献部門 大賞

  • 作品名:単行本「ヤノマミ」
  • 受賞者:日本放送協会 報道局 社会番組部 ディレクター 国分拓
  • 発表媒体:日本放送出版協会
  • 発表年月日:2010年3月20日
  • 受賞理由:現代の「文明」とはどういう意味を持つのか。環境問題が深刻になり、エコが問われるいまの時代に根源的な問いをつきつける作品である。アマゾンの最深部に1万年以上も独自の文化、風習を守り、20世紀に入ってから始めてわれわれの社会と接触したヤノマミの人々の生活の中に同居する実体験の迫力である。取材は150日、連続したものではなく、3回にわたったものだが、体調をすっかり崩し、限界まで努力したことがわかる。同行のカメラマンが、彼らの生活の中に溶けこむ上ではたした役割も大きい。
    書籍と映像がマッチして訴求力を高めている。アハフーの声が聞えてくる。(岡村黎明)
  • 受賞コメント:分からないものを書いていいのか。本書を書いていて、いつも引っかかっていたのは、そのことでした。それでも、書きたい、書くしかないと思ったのは「ヤノマミは僕自身でもある」と、あの深い森の中で、直感的に思わされたからです。果たして、それは正しかったのか。正直言うと、今も分からないままです。分からないことを書いた罪を背負う覚悟はできていますが、ジャーナリストという自覚を持ったことのない自分が、ジャーナリストという冠のついた賞を頂いたことだけは、今後とも、重く受け止めていきたいと思っています。

公共奉仕部門 奨励賞

  • 作品名:NNNドキュメント2009「法服の枷~沈黙を破った裁判官たち~」
  • 受賞者:中京テレビ放送 報道部 ディレクター 笠井千晶
  • 発表媒体:NNN(Nippon News Network)
  • 発表年月日:2009年9月13日
  • 受賞理由:裁判官の世界ほど、国民に閉ざされているものはない。法服で包まれた世界が、司法界の密室性と桎梏を象徴している。それをようやく内側から破った、勇気あるドキュメンタリーである。
    裁判官は憲法第76条3項に定められているように、「良心に従い独立してその職権を行い、この憲法及び法律にのみ拘束される」はずであるが、もっとも官僚的な世界であって、国家権力の上意下達の意志に拘束されている。それが日本の民主主義の現状である。
    2008年4月、名古屋地裁がイラク戦場への「自衛隊派兵は違憲」との、実に35年ぶりの歴史的な憲法判断を下した。それに触発されて制作した地域のディレクターの問題意識と番組に登場した元裁判官たちの勇気は顕彰に価する。
    主人公は、北海道で提訴された「ナイキ基地建設反対訴訟」で、「自衛隊は武力」であって、憲法違反と明言して住民の訴えを支持した福島重雄元裁判長である。その後、彼は地方の家庭裁判所をまわって退官という半生だった。その鉄拳制裁は政府が任命する、最高裁長官を頂点とした、日本の司法官僚の裁判官に対する見せしめだった。
    それでも裁判官の良心と独立の精神は、35年たって、名古屋地裁の裁判長によってようやく復活させられた。憲法は組織のなかで、個人の良心的抵抗によってこそ守られる。課題は最高裁人事制度の改革である。(鎌田慧)
  • 受賞コメント:裁判員制度によって、司法と市民の新たな関わりが生まれた今、これまでになく裁判所のあり方が問われています。だからこそ「職業裁判官の良心とは何か?」を問い続け、裁判所組織の内部について語り始めた元裁判官たちの言葉には重みがあるのではないかと、取材に取り組みました。その結果を評価して頂き、大変嬉しく思います。
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