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第19回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」贈呈式 受賞者挨拶 ―大場 弘行氏

※第19回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」贈呈式 式辞・講評 はこちら

【公共奉仕部門 大賞】
公文書クライシス  (毎日新聞)

「公文書クライシス」取材班代表 大場弘行(毎日新聞東京本社編集編成局特別報道部)氏の挨拶

このたびは、私たちのキャンペーン報道「公文書クライシス」をこのような栄誉ある賞に選んでいただきまして、本当にありがとうございます。

公文書クライシスは2018年1月にスタートし、これまでの2年間で約70本の記事を掲載しています。きっかけは、ある官僚OBからこんなミステリアスな話を聞いたことでした。「霞が関には闇から闇に消える文書がある」。この謎を解き明かそうと、官僚たちに公文書管理の実態を聞き始めました。

まず見えてきたのは、公用電子メールが公文書として扱われていないことでした。官庁内では政策決定にかかわる重要なやりとりまでメールでするようになっています。それなのになぜ公文書にしていないのか。 官僚の多くは「メールは電話で話すのと同じだから文書ではない」という理屈を持ち出し、捨てたり、隠したりしていました。情報公開の制度も骨抜きにされていました。国民が省庁に公文書を請求する際、政府の公式サイトで必要な公文書を検索することができます。ところが、検索の手がかりとなる公文書ファイルのタイトルがわざとぼかされていました。

それはなぜか?ある官僚は「国民からの開示請求を回避するためだ」とはっきり証言しました。

極めつけは、総理大臣と省庁幹部の面談記録が残されていないことです。この記録は公文書の中で最も重要なはずです。記録がないと、国民生活を左右する重要事案がブラックボックスの中で好き勝手に決められてしまいます。ある官僚はこう明かしました。「総理との面談中にメモをとると注意される」。つまり、総理大臣の発言を記録することが事実上禁じられているのです。官僚たちは、森友、加計学園問題のような政権スキャンダルが起こるたびに「記録がない」と言い張り、真相解明を阻んできました。そして今、総理主催の「桜を見る会」の問題でも同じことを繰り返しているように見えます。

実は苦しんでいる官僚もいます。私はある官僚にこう質問されたことがあります。「記者さん、私たちは政治家に人事権を握られている。彼らにとって都合の悪い文書を出せると思いますか?」。公文書の隠蔽が、政権幹部を守ることになったとしても、それが主権者である国民への裏切りであることを官僚たちも知っているのです。

私たちは、アメリカ政府の公用電子メールや大統領記録の管理に比べて日本のそれが著しく遅れていることや、地方自治体の取り組みについても調査して報じています。いずれの記事も、大スクープやネットで読まれる話題性のあるものとは違って派手さはありません。

一方で、口の重い官僚から話を聞かせてもらったり、膨大な資料を読み込んだりして、小さなファクトを積み重ねていく作業は正直言ってしんどいです。それでも、私たちは公文書の危機は民主主義の危機そのものだと考え、ここまで取材を続けてきました。同時に、映像では表現しづらい公文書管理の実態、もっと言えば、ブラックボックス化された権力機構の内実を伝えることは、新聞という活字メディアの記者の使命であると思っています。その意味で、今回頂いた賞は、私たち新聞記者の背中を強く押してくれるものです。

今日は、このようなスピーチの機会まで与えて頂きまして、とても感謝しております。ありがとうございました。

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