「私たちはお客さんじゃない」 村の思いに応えて未来をつくる 学生サークル・思惟の森の会

Pickup Story ともに地域を育てる

研究、ボランティアプロジェクト、サークル活動──学内のさまざまな団体が取り組んでいる地域連携事例をピックアップし、携わる人の思いに迫りました。

04 「私たちはお客さんじゃない」 村の思いに応えて未来をつくる

Project name: 思惟の森の会 岩手県田野畑村で育林活動・地域交流

思惟の森の会幹事長 人間科学部3年 吉田さん

太平洋に面し、岸壁、平野、山間部と多様な地形を持つ岩手県田野畑村。人口約3,600人の村に、植林・育林と地域交流活動を行う学生サークル「思惟の森の会」が50年もの間通い続けている。「山を登ったら、その向こうに海が広がっている。景色のコントラストが一番の魅力なんです」。幹事長の吉田さんは目を輝かせる。

都会生まれ、都会育ちの吉田さん。中学校の修学旅行で訪れた東北地方が気に入り、その後の大震災の報道を見てから、大学では東北のために活動しようと決めていた。「思惟の森の会」は、1961年に山火事で焼失した田野畑村の山林の復興のため、当時の商学部助教授が学生とともに植林活動に参加したのが活動の原点。年3回、村の寮に滞在し、植林・間伐・枝切りなどの林業と、村の行事への参加などの交流活動を行う。毎日山の急斜面を登って力仕事もすると聞き、物珍しさも手伝って入会した。

初めて村を訪れた吉田さんは、村の人の距離の近さに驚いた。知らない人でも、道端で「早稲田さん?」と気さくに声を掛けてくれる。仲良くなれば、家に招かれたり、「次はいつ来るの?」と聞かれたりもする。「長年住んでいる東京には、こんな人付き合いはない。関係のない私たちを、なぜこの村は温かく受け入れてくれるんだろう」と戸惑いながらも、初めての農村暮らしを心地よく感じた。日を追うごとに村の人から聞こえてきたのは、「学生の力を借りて、村をより良く変えたい」という思い。自然と「この温かい人たちのために、何か役に立ちたい」と思うようになった。

2年生の夏、吉田さんは、村の海産物を東京で販売する企画を思いついた。「利益も出るし、村のPRにもなる」と、名案のつもりだった。ところが、東京から来て村でレストランを営む経営者に考えを話したところ、「利益が出ても、継続しなければ一瞬の満足しか残らない。村への影響を考えて企画を立てなさい」と言われてしまった。「考えが自己満足だったことに気付き、はっとしました。私たちがやりたい地域貢献ではなくて、村の人のニーズに応えることが大切なんだと。もっと村の人の声を聞こうと思いました」。考えを改めた吉田さんは、村の人の話にさらに耳を傾けるようにした。何に困り、何を望んでいるのか。気になったのは、「村の子どもたちにもっと多様な体験をさせたい」という要望だった。都会に比べ、見学や体験学習の設備が十分でない村では、子どもたちができることも偏ってしまう。教育に興味のあった吉田さんは、「自分の力を生かして役に立てるかも」と、今年度の活動に向け企画を考え始めた。

もともと経済の勉強のために進学した吉田さんだったが、いつの間にか、自らの学びのテーマは「地方の子どもたちに豊かな体験をさせる教育」に移っていた。将来は教育システムの考案に携わりたいという。「私たちは村のお客さんじゃなく、遊びに行くのとは違う。何が必要か聞き取り、それに応えることで、私たちを受け入れてくれた田野畑村の役に立てると信じています」。地域に求められ、学生が自分たちなりに応える関係が、村をより良い姿に変えるかもしれない。

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