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教室の外で、学びが「生きる」とき
Sat 24 Oct 26
Sat 24 Oct 26
教室の外で、学びが「生きる」とき
― 生駒美喜教授が育む国際的な学びとライプツィヒ研修 ―
ドイツ・ライプツィヒの街に降り立った学生たちは、その瞬間からドイツ語の世界に包まれる。日常のやり取りや現地学生との会話、ホームステイ先での生活——教室で学んできた言葉が、「自分の言葉」として試される。こうした体験の場を10年以上にわたり育んできたのが、政治経済学部の生駒美喜教授である。
早稲田大学では、海外協定大学への留学派遣制度に加え、教員が企画・実施する海外研修への学生参加を支援する「海外への学生引率プログラム助成制度」を設けている。同制度は、語学研修やゼミ活動、フィールドワークなど多様な教育活動を後押しし、学生が教室で学んだ知識や語学を実践の場で試し、多様な価値観に触れる機会を提供している。
ライプツィヒ大学との交流プログラムもその一つである。教員による継続的な教育実践と学生の主体的な挑戦が結びつき、学生たちは教室では得難い学びを重ねてきた。本記事では、生駒教授へのインタビューを通じて、同プログラムが生み出してきた教育的価値と、その背景にある思いをひもとく。
※生駒教授に引率されてライプツィヒ研修に参加した学生たちの記事はこちら
⇒世界は、思っていたより近かった(ライプツィヒ研修がひらいた、それぞれの未来)
「現場に身を置くこと」から始まる学び
本プログラムは、ライプツィヒ大学との交流を起点に発展してきた。現在では政治経済学部と法学部の合同で実施され、発表・討論・生活を一体化した学びの場として定着している。学生はドイツ語で発表を行い、日本語とドイツ語を交えた討論を行う。さらに言語文化タンデムやホームステイを通じて、日常の中で言葉を使う経験を重ねる。
「朝外に出た瞬間から、ドイツ語を使わないと生活できません。本当に最初から最後まで、ドイツ語の中で過ごすことになります」
教室での学びは、この瞬間に初めて現実と結びつく。
ライプツィヒ大学学生たちとの市内見学:ニコライ教会
「通じた」という実感が学びを変える
このプログラムを象徴するのが、「通じた」という体験である。
「話してみたら通じた、という経験は本当に大きいんです。 自分が学んできたことは無駄ではなかったと、そこで実感できます」
日本では使用機会の限られるドイツ語だからこそ、この成功体験は強く心に残る。それは単なる達成感ではなく、学習そのものへの信頼を生み直す経験となる。
「英語とはまた違った手応えがありますね。 ドイツ語で通じたというのは、やはり特別な経験になると思います」
ライプツィヒ中央駅にて再び参加者集合
短期経験がもたらす長期的変化
数日から1週間の滞在であっても、その影響は小さくない。
「行く前から『せっかく行くならきちんとやろう』という意識が高まる学生も多いですし、帰ってきてからの変化も大きいですね」
思うように話せなかった悔しさをきっかけに学び直し、履修を増やして力を伸ばしていく学生もいる。あるいは、それまで具体的に考えていなかった留学へと関心を広げる学生も少なくない。
短期の経験が、その後の進路を方向づける転機となっている。
ベルリンの地下鉄
学生の主体性を引き出す設計
本プログラムでは、学生の自律的な行動が前提となっている。
「現地では、基本的に学生に任せています。 それでも、到着したその日から自然に交流が始まるんです」
過度な介入がなくとも、学生同士の交流は自発的に広がっていく。この環境こそが、受動的な学びを、主体的な経験へと転換している。
早稲田大学の紹介のプレゼン
教員にとっての新たな可能性
こうした運営は、「引率」という言葉から想起される負担とは異なる側面を持つ。
「すべてを細かく見なければいけない、というわけではありません。 学生が自分たちで動いていくので、任せられる部分も大きいです」
学生の主体性を尊重しながら、教員は安全面への配慮や学習支援に注力する。現地の大学関係者との交流から得られた経験や知見は、学生への指導や今後の教育プログラムの改善にも還元される。
「現地の先生方との交流は非常に大きいですね」
継続的な交流によって築かれた信頼関係は、将来の学生交流や教育連携につながる可能性もある。こうした積み重ねが、結果として学生により多くの学びの機会をもたらしている。
ライプツィヒ大学学生たちとのグループでの交流
なぜ現地でなければならないのか
生駒教授は、現地で学ぶ意義をこう語る。
「やはり、現地に行かなければ分からないことが多いと思います」
言語が使われる環境、文化的背景、人との関係性。ホームステイや日常の会話の中で、学生は教科書では捉えきれない価値観に触れる。
「ちょっとした会話の中にも、その国の考え方が表れるんです。 そうした点に気づくことも大きな学びだと思います」
短期間でも環境が変われば、見えるものが変わる。この点において、本プログラムは非常に高い教育的投資効果を持つ。
少子高齢化をテーマにした早稲田大学参加者のプレゼン
制度が支える「最初の一歩」
こうした機会を支えているのが、「海外への学生引率プログラム助成制度」である。
「5万円の補助があるだけでも、学生にとっては大きいと思います。 やはり最初の一歩を踏み出しやすくなります」
経済的な後押しは、学生の意欲を具体的な行動へと変える。
比較的限られた支援であっても、その効果は大きく、一人ひとりの学びの転機を生み出す力を持つ。
ライプツィヒ大学学生たちとの市内見学:マルクト広場
持続と拡張に向けて
一方で、こうした取り組みには財源上の制約もある。
「関心を持つ学生は多いので、もう少し広げられるといいとは思っています」
需要の高まりに対して、現状では提供できる機会に限りがある。しかし、このプログラムがもたらす変化——学習意欲の向上や留学への接続——は、個々の学生にとどまらない。
小さな支援が、学生の将来を方向づける契機となり、その積み重ねが大学全体の国際教育を底上げしていく。
グループディスカッションの様子
世界とつながる人材を育てる
「単なる語学研修ではなく、言語・文化・人とのつながりを実感する場だと思っています」
生駒教授はそう語る。
一人ひとりの経験は小さくとも、その一歩が学びを変え、視野を広げ、やがて世界と日本をつなぐ力へと育っていく。
こうした機会を、より多くの学生へ。
その可能性を広げていくことが、今求められている。
海外への学生引率プログラム助成制度
早稲田大学の「海外への学生引率プログラム助成」は、教員が企画・実施する海外研修への学生参加を支援する取り組みです。語学研修に限らず、ゼミ活動やフィールドワークなど多様な教育活動に活用され、教室で学んだ知識や語学を実際の社会で試し、多様な価値観に触れる機会を提供しています。政治経済学術院の生駒美喜教授によるドイツ・ライプツィヒ大学との交流プログラムでは、教員による継続的な教育活動と学生の主体的な挑戦が結びつき、新たな学びや進路の選択へとつながっています。
教員紹介
生駒 美喜
早稲田大学 政治経済学部 教授。ドイツ語言語学、ドイツ語教育を専門とし、10年以上にわたり海外研修を実施。ライプツィヒ大学との交流を軸に、実践的な国際教育に取り組む。