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Sat 31 Oct 26

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Sat 31 Oct 26

世界は、思っていたより近かった

― ライプツィヒ研修がひらいた、それぞれの未来 ―

ドイツ・ライプツィヒ大学との交流プログラムに参加した学生たちは、そこで何を得たのだろうか。留学を目指して歩み始めた学生。留学への挑戦を目前に控えた学生。そして、卒業後もなお新たな学びを模索する卒業生。それぞれ異なる現在地に立つ3人に共通しているのは、ライプツィヒで過ごした時間が、その後の学びや進路に大きな影響を与えていることだ。今回、ライプツィヒ研修に参加した3人に話を聞いた。そこから見えてきたのは、語学を学ぶことの意味、世界と出会うことの価値、そしてその経験がもたらす可能性だった。

 

早稲田大学では、海外協定大学への留学派遣制度に加え、教員が企画・実施する海外研修への学生参加を支援する「海外への学生引率プログラム助成制度」を設けている。同制度は、語学研修やゼミ活動、フィールドワークなど多様な教育活動を後押しし、学生が教室で学んだ知識や語学を実践の場で試し、多様な価値観に触れる機会を提供している。

生駒教授によるライプツィヒ大学との交流プログラムもその一つであり、多くの学生が現地での経験を通じて新たな学びや将来の可能性を見いだしてきた。本記事では、参加した学生たちの声を通して、本制度がもたらした学びと成長の軌跡を紹介する。

 

※本研修を引率した、政治経済学部の生駒美喜教授による記事はこちら
⇒ 教室の外で、学びが「生きる」とき(生駒教授が育む国際的な学びとライプツィヒ研修)

海外なんて、自分には遠いと思っていた

ライプツィヒ研修に参加した3人に共通していたのは、ドイツ語への関心だった。高校時代から学習を続けていた者もいれば、大学で第二外国語として本格的に学び始めた者もいる。しかし、「海外へ行く」という決断は決して当たり前のものではなかった。二本木さんは当時を振り返る。
「海外旅行の経験もなくて、パスポートも持っていませんでした」
パスポートの取得、航空券の手配、現地での移動計画。現地集合・現地解散という形式のなかで、自ら調べ、自ら判断しながら準備を進めた。それでも参加を決めたのは、「行ってみたい」という思いがあったからだ。
「海外への学生引率プログラム助成制度による費用補助があるなら、自分にも挑戦できるかもしれないと思いました」

植田さんもまた、留学への関心を抱きながら迷いの中にいた。
「留学をするかどうか、その判断材料の一つになると思って参加しました」
海外経験のない学生にとって、海外へ踏み出すその一歩は決して小さくない。しかし、踏み出して初めて見える景色がある。生駒教授をはじめとする教員が築いてきた交流の基盤と、海外への学生引率プログラム助成制度による支援があったからこそ、この挑戦の機会は現実のものとなった。ライプツィヒ研修は、学生たちにとって「海外」という漠然とした憧れを、自らの選択肢へと変える入口になっていた。

ライプツィヒにある聖トーマス教会と音楽家バッハの銅像

ライプツィヒにある聖トーマス教会と音楽家バッハの銅像

教室の外で、ドイツ語は試された

ライプツィヒに到着した学生たちを待っていたのは、「学習科目」としてのドイツ語ではなく、「生活のための言語」としてのドイツ語だった。駅の案内表示。レストランでの注文。電車の乗り換え。現地学生との会話。朝から夜まで、ドイツ語に囲まれた日々が始まった。
参加した学生たちは、それまで決して勉強を怠っていたわけではない。高校時代からドイツ語を学んできた学生もいた。大学ではインテンシブクラスで学び、プレゼンテーションや会話練習を積み重ねてきた。それでも現地で感じたのは、「まだまだ足りない」という実感だった。
「ドイツの学生が話すスピードは想像以上に速くて、まだまだだなと痛感しました」
植田さんはそう振り返る。

一方で、その悔しさは新たな学びへの原動力にもなった。ライプツィヒ大学では、学生たちはドイツ語でプレゼンテーションを行い、現地学生と意見を交わした。日本文化をテーマとした共同発表や討論も行われた。卒業生の網野さんは語る。
「語学学校への留学だと、どうしても留学生同士の交流が中心になります。でもライプツィヒでは現地の学生と交流できたことが大きかったです」

さらに、
「授業でプレゼンテーションを繰り返していた経験が役立ちました」
とも振り返る。

いつも通っているキャンパスの教室で学んだ知識が、海外の地での実際のコミュニケーションの中で生きる。同時に、自分に足りないものも見えてくる。しかし学生たちがライプツィヒで得たのは、語学力だけではなかった。自分の言葉で伝えることの難しさと面白さ、そして世界とつながる実感だった。

ベルリンを巡った際に見学した連邦議会議事堂

ベルリンを巡った際に見学した連邦議会議事堂

ニュースの中のドイツが、目の前に現れた

ライプツィヒ滞在中、学生たちは偶然にもドイツ連邦議会選挙の期間に現地を訪れていた。政治経済学部で学ぶ彼らにとって、それは特別な体験となった。街には政党のブースが並び、選挙活動が行われていた。授業やニュースで見聞きしていた政治が、実際の街の中に存在していたのである。二本木さんは振り返る。
「授業やニュースで見ていた政治が、本当に街の中にありました」
実際に政党関係者と会話をした学生もいた。また、現地学生との交流を通じて、選挙だけでは見えてこないドイツ社会の姿にも触れた。経済停滞への不安、社会の分断、移民政策をめぐる議論。そして若者たちが抱く将来への期待や不安。網野さんは語る。

「ドイツ社会の良いところも悪いところも、両方を見ることができました」
それは教科書の中のドイツではない。ドイツ語を学び、現地の学生たちと直接対話したからこそ見えてきた、生きた社会だった。さらに学生たちは別の発見もしている。

「自分たちより日本のことを知っているんじゃないかと思いました」
日本語を学び、日本文化に強い関心を持つ現地学生との出会いは、自分たち自身が日本を学び直すきっかけにもなった。海外を知ることは、日本を知ることでもある。そして社会を知ることは、自分自身の視野を広げることでもあった。

マルクト広場前、大学周辺散策の様子

マルクト広場前、大学周辺散策の様子

帰国してから始まった学び

ライプツィヒでの経験は、帰国とともに終わったわけではない。むしろ、本当の変化はそこから始まっていた。ライプツィヒ研修から約1年半。植田さんは今、ドイツへの交換留学を目前に控えている。かつて「留学するべきか」と迷っていた学生は、今まさにその一歩を踏み出そうとしている。
「この研修が、留学を決断する大きなきっかけになりました」

帰国後はドイツ語の履修を増やし、学内外で行われるドイツ関連の活動や交流会にも積極的に参加するようになった。一方の二本木さんも、交換留学という次の目標に向けて歩み始めている。
「一度現地に行くだけでも本当に違うんです」、「研修中に現地で覚えた表現は今でも自然に出てきます」

帰国後も学習への意欲は高まり、留学実現に向けた努力を続けている。
印象的なのは、二人とも「留学を決めたから勉強した」のではなく、「現地を経験したからもっと学びたくなった」と語っていることだ。現地で出会った人々。伝えたいのに伝えきれなかった思い。もっと相手を理解したいという気持ち。その積み重ねが、次の挑戦を生み出している。留学はゴールではない。
現地で見た世界をもっと知りたい。その思いが、新たな学びへとつながっているのである。

ベルリン観光時に立ち寄った旧東ドイツ博物館

ベルリン観光時に立ち寄った旧東ドイツ博物館

あの日のライプツィヒが続いている

2025年春に卒業した網野さんにとって、ドイツでの研修はすでに学生時代の思い出になりつつある。しかし、その経験がもたらした影響は、社会に出た今もなお続いている。卒業後は社会人として働きながら、自らの進路や生き方を見つめ直す時間を重ねてきた。そのなかで改めて気づいたのが、自分のなかにある「海外」や「異なる文化」への関心だった。
「やっぱり語学とか海外とかが好きなんだと思いました」

学生時代には、語学を学ぶことそのものに面白さを感じていた。しかし、社会に出た今は、その先にある価値にも目が向くようになったという。
海外と関わる仕事や外国人との交流に触れるなかで、網野さんは改めて言葉の持つ力を実感した。
「現地の言葉を少しでも理解できるだけで、人との距離が近くなるんです」

それは単なる語学力の話ではない。異なる文化や価値観を持つ人と向き合い、相互に理解しようとする姿勢の大切さを、社会に出た今だからこそ強く感じている。研修中、網野さんは現地学生との交流やドイツ社会との接点を通じて、「日本の当たり前が、世界の当たり前ではない」と実感した。その経験は、世界の見方だけでなく、自分自身の可能性の捉え方にも変化をもたらした。
「実際に現地の社会を見たことが、本当に面白かったんです」

現在は海外大学院への進学も視野に入れながら、新たな学びへの挑戦を模索している。社会人として働くなかで、自分は何を学び、どのように世界と関わっていきたいのか。その問いと向き合った先に、再び世界へ踏み出そうとする自分を見出したのである。

フランクフルト市内

フランクフルト市内

一方、ライプツィヒ研修を通して、二本木さんは留学という目標に向かって歩み始めている。植田さんは交換留学への挑戦を目前に控えている。そして網野さんは、卒業後もなお新たな学びの可能性を追い続けている。

ライプツィヒでの数日間がもたらした変化の形は、それぞれ異なる。しかし、その原点には共通して「世界を自分の目で見た経験」がある。
一人の学生にとっては留学への決断となり、一人の学生にとっては未来への目標となり、一人の卒業生にとっては人生を見つめ直す原点となった。
数日間の海外経験が、その後何年にもわたる学びや挑戦につながっていく。海外への学生引率プログラム助成制度は、そうした最初の一歩を支える取り組みの一つである。

世界を自分の目で見て、考え、次の一歩を選び取る力。

 

あの日ライプツィヒで踏み出した一歩は、今もそれぞれの未来へと続いている。

海外への学生引率プログラム助成制度

早稲田大学の「海外への学生引率プログラム助成」は、教員が企画・実施する海外研修への学生参加を支援する取り組みです。語学研修に限らず、ゼミ活動やフィールドワークなど多様な教育活動に活用され、教室で学んだ知識や語学を実際の社会で試し、多様な価値観に触れる機会を提供しています。政治経済学術院の生駒美喜教授によるドイツ・ライプツィヒ大学との交流プログラムでは、教員による継続的な教育活動と学生の主体的な挑戦が結びつき、新たな学びや進路の選択へとつながっています。

参加学生紹介

網野さん

2025年3月、政治経済学部卒業。ライプツィヒ研修参加後も海外への関心を持ち続け、現在は海外大学院進学も視野に入れながら新たな学びを模索している。

二本木さん

政治経済学部3年(2024年入学)。ライプツィヒ研修をきっかけにドイツ語学習を継続し、交換留学への挑戦を目指している。

植田さん

政治経済学部3年(2024年入学)。ライプツィヒ研修への参加を経て交換留学を決意し、現在は2026年秋からのドイツ・フライブルク大学(University of Freiburg)への交換留学を目前に控えている。

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