赤十字国際委員会との協力は新たなフェーズへ
2023年6月13日(火)、赤十字国際委員会(ICRC)のミリアナ・スポリアリッチ総裁が早稲田大学を来訪し、早稲田大学田中愛治総長との面談、協力協定の調印式に出席しました。調印式後には早稲田大学国際会議場にて記念講演会「International Humanitarian Law in a Challenging Security Environment」を実施しました。
スポリアリッチ氏は2023年に160周年を迎えるICRCにとって初の女性総裁です。2022年10月より現職に就任し、今回の来訪はスポリアリッチ氏の総裁としてのアジア初来訪となりました。
早稲田大学とICRCは2018年11月に協力に関する協定を締結し、各種イベントの実施など親密な関係を築いてきました。協定締結時には前総裁のペーター・マウラー氏に名誉博士号が贈呈されています。
また、2021年4月には理工学術院総合研究所を主体として人道支援の革新的技術の開発に向けた共同研究に関する協定も締結しました。早稲田大学が得意とする人工知能やロボットに関する研究を応用し、ドローンを利用した地雷や不発弾探知技術の開発などの共同研究が進められています。ICRCがスイス以外の高等教育機関と連携して技術開発を推進することは他に例がないそうです。

ドローンを利用した地雷や不発弾探知技術の開発などの共同研究の様子
講演の冒頭では田中総長が挨拶をしました。今年160周年を迎えるICRCの活動を紹介したうえで、「中立」という難しい立場を維持しながら人道支援を目指すICRCの活動は学生が育むべき資質である「たくましい知性」と「しなやかな感性」を体現していると強調しました。また、忙しいスケジュールを調整して学生と直接対面できる機会を持ってくれたことに総裁へ感謝の意を示しました。
スポリアリッチ総裁は「世界で起きる紛争や国際法の無視に対して無関心でいることはできない」と、学生にとって身近な言葉で語りかけ、国際会議場に集まった350名以上の学生たちは真剣なまなざしで聞き入っていました。
ジュネーブ諸条約をはじめとする国際的な合意の尊重や、中立性を守るべきICRCの活動など、世界中を飛びまわった実体験を交えての講演は学生たちにとって他で得難い貴重な体験となりました。
講演後には質疑応答の時間が設けられ、モデレーターや学生からの「テクノロジーの活用」、「組織としての中立性」などのキーワードに関する質問に対して身振りも交えて真摯に回答していただきました。
新たなフェーズに向けて理工学術院総合研究所との間で進む共同研究では「廃棄物処理」や「災害復興」といった新しい分野での連携について協議が始まっています。世界平和への貢献を目指して早稲田大学とICRCはさらなる連携に向けて動き出しています。