第22回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」贈呈式 受賞者挨拶 ― 太田 直子 氏

【草の根民主主義部門 大賞】
「“玉砕”の島を生きて~テニアン島日本人移民の記録~」

NHK ETV特集

太田 直子 氏の挨拶

この度は、大変大きな賞をいただきまして本当に光栄に思っております。

ちょうど昨年の夏に放送直前まで何度も何度も手を入れて悩みながら作った番組が、今年の最後にこのような大きなご褒美をいただいたと思いまして、本当にうれしく思っております。

なによりも、太平洋戦争終盤の南洋群島で、本当につらく悲しい、沖縄戦の一年前に住民の集団自決があり、親が子を、そして友人を手にかけるような、辛い体験がありました。その体験を、勇気をもって言葉にしてくださった皆さんに、本当に感謝を申し上げたいと思います。

私が取材を始めたのは1994年、ちょうど戦後50年の年でした。そのときまだ29歳だったのですけれども、その私ももう少しで60歳に手が届く、という歳になりました。その頃は私自身も若かったですし、話してほしいというお願いを固辞されることも多かったです。そして、ようやくお話してくださるその方々が、忘れたい思いを言葉にすることに、どれだけの勇気が、また、どれだけの思いがあったかということを、私自身がどこまで思いやって話を伺ってこられただろうかという反省もございます。しかし、そういう自分自身の若気の至りも含め、しつこく、粘り強くというと良い言葉ですが、何度も何度も諦めずにお話を伺った結果が、このような賞につながったと思っています。

戦争体験者のみなさんが本当に口を揃えて言うのは、このような思いは二度と他の人にさせたくない、そして戦争を二度と起こさせたくない。その思いは本当にみなさん共通しています。この度このような賞をいただいたのは、やはり今の日本のメディアのみなさんの良識の上に、この賞をいただいたと思っております。

私が取材を始めたころは、まだテニアンの戦争、そしてサイパンの戦争について地道に取材をして書き残したジャーナリストの方の本が書店にも出回っており、私自身もそうした方の本を見ては、学び、そして体験者の方に向き合ってきました。私もいまこの歳になり、その思いを受け継いで若い世代に伝える役割になったというふうに自覚しております。この度の賞は、私自身の今後の活動にも、本当に大きな励みになりました。

本日は、本当にありがとうございました。

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