第21回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」贈呈式 受賞者挨拶 ―大村 由紀子 氏

【草の根民主主義部門 奨励賞】
ドキュメンタリー「永遠の平和を あるBC級戦犯の遺書」

RKB毎日放送(テレビ版)・RKBラジオ(ラジオ版)・YouTube

 大村 由紀子 氏の挨拶

この度は大変名誉ある賞を頂戴しまして、ありがとうございます。
私は福岡の出身でございまして、福岡で生まれて福岡で学校を卒業して、そのまま地元の福岡の放送局、RKB毎日放送に入社いたしました。それから30数年になりますが、とても狭い範囲の福岡と佐賀の中で取材対象を見つけて、直接会って、取材を重ねるということをしてまいりました。

その中で気づいたことは今回、取材をしていても、それは単に福岡だけのことではなくて、実は日本全国で起きている問題がそこに表出しているだけであって、それは全体的に日本の問題であり、もしかしたら世界につながることもあるのではということを何回か経験いたしました。

今回のBC級戦犯ですけれども、福岡では50年前まで炭鉱がございました。申し上げるまでもないことですが、炭鉱が生み出した石炭というのは、日本の近代化を支え、そして戦争を支えた「エネルギー庫」が、この故郷の福岡にありました。福岡で報道に携わる身としては炭鉱のことを知らなければ、今もなお大きな影響もございますので、避けて通れないものでした。その炭鉱に戦時中は連合軍の捕虜が連れてこられて、労働させられていました。そのため、福岡県では関係者で、BC級戦犯で処刑された数の多いことがわかり、そこから調べていくうちに、今回の「あるBC級戦犯」、藤中松雄さんの遺書にたどりつきました。

BC級戦犯の取材は非常にデリケートな問題で、この70年間、元戦犯の方もその家族もご遺族も、ずっとそのことを口に出さずに、長い年月を過ごしてこられたのだと思います。ですので、取材をお願いしても、断られることが多々ございました。
そんな中で藤中さんのご遺族は正面から事実に向き合おうという風に言っていただけまして、公文書館から調べてきた本当に残酷な戦場での現場をお伝えしに行ったのですが、真正面から向き合って取材に応じていただきました。その時に、この伝えたいというご遺族の思いを、ちゃんと報道として多くの方に伝えることが使命なのだと思いまして、良い番組を作ってより多くの方に見ていただこうというふうに肝に銘じました。

福岡の放送局でございますので、リサーチャーがいるわけではなく、調査自体は私が一人でしなければなりません。ただ、いろいろ一生懸命やっていると多くの研究者の方が協力してくださいまして、資料を見つけてくださったりとか、大変なご協力を多くの方にしていただきました。この場で御礼申し上げたいと思います。
それからまだ明らかになっていないBC級戦犯の資料も沢山ございますので、この賞を頂いたことを励みにしまして、これからも精進してこのテーマに向き合っていきたいと思っております。

どうもありがとうございました。

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