Faculty of Science and Engineering早稲田大学 理工学術院

  • Featured Article

「ソニーグループ寄附講座 クリエイティブエンタテインメント学」開講記念シンポジウムを開催

表現工学とエンタテインメントの未来を展望

  • #アウトリーチ
  • #教育

Thu 02 Oct 25

表現工学とエンタテインメントの未来を展望

  • #アウトリーチ
  • #教育

Thu 02 Oct 25

「ソニーグループ寄附講座 クリエイティブエンタテインメント学」開講記念シンポジウムを開催― 表現工学とエンタテインメントの未来を展望 ―

早稲田大学基幹理工学部表現工学科は、ソニーグループ株式会社からの支援を受け、2025年10月より新たに「ソニーグループ寄附講座 クリエイティブエンタテインメント学」を開講します。

2025年9月2日、早稲田大学国際会議場井深大記念ホールにおいて、「ソニーグループ寄附講座 クリエイティブエンタテインメント学」の開講を記念したシンポジウムが開催されました。会場には学生、教職員をはじめ、ソニーグループ関係者や学外一般の参加者など、300名を超える参加者が来場し、テクノロジーと表現の融合がもたらす新たな可能性や、本寄附講座で目指す方向性について多角的な議論が交わされました。

本記事では、当日のレポートをお届けいたします。

 

※各登壇者の発言は、抜粋や要約によるものです。

「ソニーグループ寄附講座 クリエイティブエンタテインメント学」開講の意義と期待

冒頭、本学の卒業生でもあるソニーグループ株式会社吉野葵氏の司会により本シンポジウムが開会し、その後、早稲田大学理工学術院表現工学科の及川靖広教授が、挨拶を述べました。

及川教授は、寄附講座の設立に至る経緯とソニーグループへの謝意とともに、「エンタテインメントは人間の感性や社会の在り方に深く根ざしたものとなっております。本寄附講座では、表現と技術を行き来しながら、その融合を学際的に探究することで、未来のエンタテインメント分野の中核を担う人材育成を目指します。本講座における授業では毎年フォーカステーマを設定しますが、2025年10月から始まる初年度は「リアリティの追求」としました。大学という場で、産業界とともに次代を担う学生が学び合い、新しい価値を探究していきたいと思います。」と述べ、本寄附講座が果たすべき役割への期待を示しました。

早稲田大学理工学術院の及川靖広教授

早稲田大学理工学術院の及川靖広教授

続いて、ソニーグループ株式会社 執行役員コーポレートエグゼクティブの松本義典氏が基調講演を行いました。松本氏は、自らのキャリアに触れつつ、ソニーグループが掲げる長期ビジョン「Creative Entertainment Vision」を紹介。また、トランジスタラジオやウォークマンなどのソニーグループの歴史的製品に触れ、テクノロジーの発展が新しい表現を可能にしてきた歴史を振り返りながら、「エンタテインメントの中心には、常に人への感動がある」ことを強調しました。最後に、テクノロジーが人間の創造性を支え、創造によって新たな表現が生み出されることに触れつつ、「テクノロジーと表現の新たな融合によって、次代を担う皆さんとともにワクワクする未来をつくっていきたい」と力強いメッセージを送りました。

ソニーグループ株式会社 執行役員コーポレートエグゼクティブの松本義典氏

ソニーグループ株式会社 執行役員コーポレートエグゼクティブの松本義典氏

パネルディスカッションⅠ「技術と表現の融合による感動体験」

続くパネルディスカッションⅠでは、ソニーグループ株式会社の芦ヶ原隆之氏、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントの原口竜也氏、本学理工学術院表現工学科の尾形哲也教授、橋田朋子教授が登壇し、ファシリテーターをソニーグループ株式会社の青山一美氏が務める形で、「技術と表現の融合による感動体験」について語り合いました。

パネルディスカッションⅠ「技術と表現の融合による感動体験」の様子

パネルディスカッションⅠ「技術と表現の融合による感動体験」の様子

冒頭では、テクノロジーにより新たな表現を可能にしてきた事例が紹介されました。カメラの登場は記録するだけでなく独自の芸術表現を切り拓いたことや、ドローンの登場によって映像にこれまでにない視点が加わったことは、その象徴的な例です。

原口氏は、音楽ライブの自動撮影システムにおいて、あえて“手振れ”を残すことで臨場感を高めた事例を紹介しつつ、「テクノロジーをどう使うかが表現の質を高め、人の体験を変えることができる」と述べました。加えて、芦ヶ原氏は「これまで以上に表現者とエンジニアが連携しなければ新しい体験価値を作ることはできない」と連携の重要性を述べました。

パネリストの株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントの原口竜也氏とソニーグループ株式会社の芦ヶ原隆之氏

パネリストの株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメントの原口竜也氏とソニーグループ株式会社の芦ヶ原隆之氏

橋田教授は「表現とテクノロジーを分けて考えるのではなく、インタラクションそのものを含めて表現と捉えるべきだ」と言及し、尾形教授は、AIとロボット開発の進化を例に、「AIの進化によりロボットの適用範囲が更に広がり、人間とロボットの新しい関係性が築かれつつある。今後、さらに人間の仕事や生活の場にロボットが身近に、能動的な存在に変わってくる」とテクノロジーの進化による人間の体験の変化の可能性を言及しました。

パネリストの早稲田大学理工学術院の尾形哲也教授と橋田朋子教授

パネリストの早稲田大学理工学術院の尾形哲也教授と橋田朋子教授

最後に、表現の未来を見据えた議論では、「イマーシブ(没入型)体験」や「インタラクティブ性」が重要なキーワードとして取り上げられました。さらに、感動は一過性のものではなく、体験を振り返り、未来を思い描く中で心を動かし続ける点にこそ価値があるとの見解も共有されました。こうした議論を通じて、表現とテクノロジーの双方を深く理解し、新たな感動体験を創出できる人材への期待が示されました。

パネルディスカッションⅡ「共に思い描く未来のエンタテインメント」

第2部のパネルディスカッションでは、本学修士課程の学生と本学を卒業したソニーグループの若手社員が登壇し、本学理工学術院表現工学科の伴地芳啓講師がファシリテータを務める形で、「共に思い描く未来のエンタテインメント」をテーマに議論が展開されました。

パネルディスカッションⅡ「共に思い描く未来のエンタテインメント」の様子

パネルディスカッションⅡ「共に思い描く未来のエンタテインメント」の様子

学生からは「感情の可視化」や「五感を通じた仮想空間体験」といった斬新な発想が示され、可能性豊かな未来像が提示されました。ソニーグループの若手社員からは、学生からの提案に対して事業化に必要な、現場に根ざした視点が共有されつつ、「若い世代の柔軟な発想は、企業が見落としがちな観点を気づかせてくれる」とのコメントがありました。ディスカッションを通じて、未来のエンタテインメントは単に技術革新によって進化するのではなく、人々の希望や意志によって新たな体験価値が創出されることも確認されました。

パネリストのソニー株式会社の谷口恵一朗氏とソニーグループ株式会社の松永直輝氏

パネリストのソニー株式会社の谷口恵一朗氏とソニーグループ株式会社の松永直輝氏

パネリストの早稲田大学理工学術院修士課程の後藤大毅さんと朝野翠さん

パネリストの早稲田大学理工学術院修士課程の後藤大毅さんと朝野翠さん

最後に、ソニーグループの若手社員から「好きなものに挑戦し続けてほしい」「表現工学での学びを自身のキャリアに繋がる力に変えてほしい」とのエールが送られ、世代を超えた対話の意義が実感されるパネルディスカッションとなりました。

表現工学のこれまでとこれから

シンポジウムの終盤には、本学理工学術院表現工学科の河合隆史教授から「表現工学の過去・現在・未来」と題し、これまでの表現工学の歩みや今後の展望を語りました。河合教授は、表現工学科は2007年に設置され「科学技術と芸術表現の融合」をコア・コンピタンスとして新たな社会ニーズへの対応と価値創造へ挑戦できる人材育成と学問領域の確立を目指していることを紹介した上で、これまでの映像研究の社会実装事例を紹介しました。

早稲田大学理工学術院の河合隆史教授

早稲田大学理工学術院の河合隆史教授

2Dから3Dに映像研究の対象が進化した上で、「快適な3Dから感動を生む3Dへ」と研究の方向性が転換してきた歴史を振り返り、今後は崇高な映像体験や宇宙空間など新たな環境での表現可能性の展望を提示しました。表現工学が培ってきた知と技術が、今後のエンタテインメントの変革の可能性を示唆する講演となりました。

 最後に、ソニーグループ株式会社シニアコグニティブサイエンティストの小俣貴宣氏のクロージングリマークにより本シンポジウムは締めくくられました。小俣氏は、日米でご活躍されたアニメーターの草分け的存在である宮本貞雄氏のプロフェッショナルとしての実践を紹介しつつ、「将来の困難な課題に遭遇した際、しなやかに対処できる素養や考え方を習得していただきたい」と学生にエールを送り、寄附講座の開講がその第一歩となることに期待が寄せられました。

ソニーグループ株式会社シニアコグニティブサイエンティストの小俣貴宣氏

ソニーグループ株式会社シニアコグニティブサイエンティストの小俣貴宣氏

未来を切り拓く学びの場として

今回のシンポジウムは、テクノロジーと表現の融合がもたらす感動体験の可能性と、本寄附講座の目指すべき方向性を多角的に示す場となりました。

「ソニーグループ寄附講座 クリエイティブエンタテインメント学」は、2025年10月から開講します。大学、産業界、そして学生が一体となり、表現工学研究の専門知識を駆使し、将来のエンタテインメント産業を牽引する人材の育成と、新たな学問領域の創成、未来のエンタテインメントの探究が始まります。

LINK
Page Top
WASEDA University

早稲田大学オフィシャルサイト(https://www.waseda.jp/fsci/)は、以下のWebブラウザでご覧いただくことを推奨いたします。

推奨環境以外でのご利用や、推奨環境であっても設定によっては、ご利用できない場合や正しく表示されない場合がございます。より快適にご利用いただくため、お使いのブラウザを最新版に更新してご覧ください。

このままご覧いただく方は、「このまま進む」ボタンをクリックし、次ページに進んでください。

このまま進む

対応ブラウザについて

閉じる