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法学部教授×ソーシャルグッドカンパニー「クラダシ」代表 対談  新講座「持続可能な世界への法―Law and Sustainability入門」で学生に期待すること

早稲田大学法学部は2022年4月より、フードロス問題に取り組む株式会社クラダシとの提携講座「持続可能な世界への法―Law and Sustainability入門」を開講します。この提携講座の背景や意義と合わせて、未来を担う学生への期待について、担当教員の中村 民雄教授と株式会社クラダシ 代表取締役社長CEOの関藤 竜也氏が語り合いました。

中村 民雄(法学学術院教授)<写真左側>
EU法やイギリス法を専門に、法制度の比較研究を行う。2016年9月から2020年9月まで本学比較法研究所所長を務める。著書に『EUとは何か : 国家ではない未来の形』(信山社)、『持続可能な世界への法-Law and Sustainabilityの推進』(成文堂)など。

関藤 竜也(株式会社クラダシ 代表取締役社長CEO)<写真右側>
2014年、フードロス問題の解決を目的とした、株式会社クラダシを設立。社会貢献型ショッピングサイト「KURADASHI」では、従来廃棄されていた食品を協賛メーカーから買い取り、消費者へお得に販売。売上の一部を社会貢献活動団体に寄付している。
2020年にはフードロス問題の第一人者として、TED×GOTANDAに登壇。

 

提携講座を開講するに至った経緯を教えて下さい。

中村
新しく開講した提携講座の背景には、数年前にゼミの学生と行った「持続可能性」の研究があります。ゼミでは、持続可能性やそれを意味するサステナビリティ(sustainability)という言葉が使われた歴史的な背景を調べるとともに、日本国内の社会問題との関連性について考えてもらいました。すると、学生それぞれで環境問題や空き家問題、シャッター商店街などさまざまなテーマを取り上げてきたんです。
ただ、こんなに多くの分野で持続可能性という言葉が使われている一方で、生活スタイルを変えてまで持続可能性に寄与しようという人はほとんどいません。そのため、教員という立場として、学生の意識を変え、行動に移してもらえるきっかけを提供できないかと考えていたんです。そんなときに声をかけていただいたのが、株式会社クラダシの関藤さんでした。

関藤
弊社はフードロスという社会課題をビジネスの力で解決しようと取り組んでいますが、根底にあるのは「ソーシャルグッドカンパニーでありつづける」という考え方です。未来を担う学生に、社会課題に取り組むプレイヤーとして伝えられることがあるのではないかと考えました。
中村教授にお声がけしたのは、「早稲田大学で映画『0円キッチン』の上映会を行った」という報告記事を見かけたことがきっかけです。

【開催報告】シンポジウム「映画上映会第3弾 映画「0円キッチン」をみて食品ロス問題を考える」が開催されました
https://www.waseda.jp/folaw/icl/news/2019/07/23/6678/

 

中村
『0円キッチン』は、監督・制作を務めるオーストリアのダーヴィドという人が、廃油で走るキッチンカーに自ら乗り込んで国々を巡り、廃棄食材でつくった美味しい料理を振る舞うという映画です。
「Law and Sustainability学の推進」というテーマで比較法研究所のセミナーや研究をするだけでなく、その成果を学生教育に還元するために、『0円キッチン』の上映と農林水産省の職員による解説を行ったんです。

関藤
『0円キッチン』で国々を巡っていたダーヴィドさんはその後、日本を舞台にした『もったいないキッチン』を制作・公開しました。実は、弊社クラダシは『もったいないキッチン』の特別協賛を務めています。そのため、早稲田大学での「『0円キッチン』上映会」の記事を見たときに縁を感じて、主宰である中村教授に「いっしょになにかやりませんか!」とメールを送ったんです。

中村
「1回きりの講義で終わらせるのではなく、継続できる形にしていきたい」という内容でした。私としても願ったり叶ったりだったので、トントン拍子で「では提携講座をやりましょう」ということになったんです。

 

提携講座ではどのような内容を扱いますか。

中村
軸になるのは、「人間社会を続けていくために、今の法律についてそれを変えるべき点がないか考えてみよう」ということです。持続可能性についてさまざまな角度から取り上げていきたいので、いろいろなゲストスピーカーを呼んでのオムニバス形式にします。日々の生活や文化の維持、子孫への思いやりなど、経済活動まで単純化できないものもカバーしていきたいですね。
具体的には、気候変動などの環境に関わるテーマ、生活に身近なフードロス、すこし難解なものとして都市計画や企業の投資行動なども扱います。

関藤
その中でクラダシが担当するテーマはフードロスで、まずは私自身がゲストスピーカーとして登壇します。ビジネスの力で社会課題を解決するためにどんな考え方が必要で、どんな方法論があるのか、その具体例の一つとしてクラダシの活動を紹介します。さらに、クラダシが連携している食品メーカーの方にも登壇していただく予定です。

中村
関藤さんがおっしゃった「具体例の一つとして」というのはとても大事なことだと思っています。ただ単純に「持続可能性は大事だ」と言っても、頭で理解できるだけで、なかなか日々の生活には結びつきません。早大生は行動的な人が多いので、身近な事柄に関連した具体例を学ぶだけでなく、この講座では自分たちで調査して考えていく機会も設けて行動力を発揮してもらおうと思っています。そうした学びから日々の生活を持続可能な方向に変えていき、また法学部でのより深い学びにもつなげていってもらえればと思っています。
それに、学者が研究室で考えていることと、ビジネスの現場で見えていることには、かなりのギャップがあります。この提携講座を通して、私自身も学ぶことが多いはずです。

 

提携講座を通して、学生に期待することはなんでしょうか。

中村
関藤さんがそうであるように、課題解決を実装する、つまりきちんと行動に移せる人になってほしいですね。そのためにはまず、アイデアをたくさん出せるようになること、アイデアを生み出せる想像力を持つことが必要です。この提携講座ではゲストスピーカーの講義だけでなく学生を少人数のグループに分けて持続可能性を損ねている社会問題について調査してもらい、改善策をグループでプレゼンテーションしてもらいます。ただ講義を聞いて終わりではなく、自分たちの問題として、日々の生活にどうつなげていくかまで考えてもらうのです。

関藤
例えばフードロス問題の根底にあるのも、家庭の食卓の残り物を「まあいいか」と捨ててしまうような、日々の生活の中にある小さな行動の積み重ねです。世の中の社会課題に対して、多くの人が「これってこのままでいいんだっけ?」って思いながらも、「まあいいか」で済ませてしまっています。逆にいえば、「まあいいか」を変えていくことで、社会的に大きな動きを引き起こせるんです。
この提携講座では、課題解決のアイデアをきちんと実装するまでのサンプルとしてクラダシの取り組みを提示するので、きっと他の分野の課題解決にも生かせるはずです。将来、たくさんのアイデアを生み出し、実践していく猛者たちが、早稲田大学からたくさん飛び立っていくことに期待しています。

中村
それと、この提携講座は、学生の就職活動の手助けにもなると思っています。ゲストスピーカーに登壇していただくさまざまな分野の中には、履修する学生が興味を持っている業界もあるでしょう。各分野の現場の声とともに、業界では何が課題となっていて、今後はどういった方向に進んでいくかといったことまで話してもらうので、長期的な視点で見た職業選択のヒントにしてほしいと思っています。

関藤
「長い目で」というのは大事ですね。例えば、航空業界では環境負荷が低い「持続可能な航空燃料」への切り替えが注目されています。これからの地球環境を考えたら、当然切り替えていくべきではありますが、全ての航空会社が対応できるでしょうか? さらに、もし燃料に合わせて飛行機そのものから切り替えが必要になったとしたら?
航空業界に限らず、ほかの業界にも同じようなことがいえます。いま現在においての優良企業が、20年後や30年後も変わらず優良企業でいられるかというと、必ずしもそうとはいえません。社会全体を長期的な視点で見ながら、自分の将来を考えてほしいですね。

中村
実は、法学部は持続可能な社会など長期的視点が必要とされる分野に向いている学部です。法律は一度つくられてしまえば、そう頻繁に内容が変わることがなく、政治に左右されにくいものです。法律を作るというのは、長期的視点で多様な価値観を考慮しながら判断するという作業なのです。この提携講座がそうした長期的な視点を養う一助になれたらいいと思います。20〜40年後まで想像して、具体的なアイデアを出し、行動を起こせるような学生を生み出していきたいです。

(対談実施:2022年2月)

シラバス紹介

提携講座「持続可能な世界への法―Law and Sustainability入門」(2022年度春学期シラバス)

―シラバス概要より―
我々は、人間の社会経済活動の何をどう変えれば、地球環境を持続可能に保全し、将来世代のニーズも害さずに社会を維持できるようになるのでしょうか、そのために法学の視点からは、我々は何ができるのでしょうか。

これはとても大きなテーマですが、その大きな問題関心を具体的な事象を素材に分析し、より深く問題のありかをつきつめ、対策を考えていこうとするのが、このオムニバス講義です。

法学部の学生だけでなく他の学部の1年生以上の学生に開かれた授業です。

 

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