中村 隆之准教授の『環大西洋政治詩学:20世紀ブラック・カルチャーの水脈』が2022年12月に人文書院より刊行されました。中村先生より下記紹介文を法学部生用に頂戴しました。
【紹介文】本書は、2007年から2022年にかけて執筆した原稿18本を編んだものです。本書に掲げられたタイトルは聞きなれないものでしょう。「環大西洋」とは、この場合、大西洋によって結ばれるヨーロッパ大陸、アメリカ大陸、アフリカ大陸の関係性を表しており、その関係の中心にはこの大海原を舞台に繰り広げられた奴隷貿易の記憶があります。
私たちの知る「ブラック・カルチャー」とはこの奴隷貿易とアメリカ大陸における奴隷制を抜きにして語ることができません。本書ではそうした「ブラック・カルチャー」の広域的展開を、主に20世紀以降に定着していく文字文化に注目したところから跡づけようとしています。
タイトルの後半部分である「政治詩学」については、私の造語であるため、それなりの説明を要します。興味のある方は本書あとがきを読んでいただきたいところですが、かいつまんで述べると、政治をめぐる感性に働きかけ、これを刷新したところに見出される新しい認識(政治をめぐる詩学)を指し示す言葉です。
私の研究領域は、フランス語を主言語とするアフリカ系文化であるため、本書に収められた論考の多くはフランス語の言語世界を媒介にして書かれています。英語圏のアフリカ系アメリカ人の文化研究の蓄積は日本語でもある程度ありますが、フランス語圏ではきわめて限られます。アフリカ大陸の文化も部分的とはいえ視野に入れた本書が、日本語を媒介とした書くことの横断性を少しでも豊かにできればと願っています。
【出版社】人文書院 出版社WEBサイト
【出版年月】2022年12月
【ISBN】978-4-409-04123-9