法学の専門性や語学力を活かし、グローバル企業で挑戦を重ねたい
段 皓文 さん 基礎法学専攻 2022年3月修了
コロナ禍による制約を乗り越え
日中の農地法に関する研究に注力
中国の高校に通っていた頃から日本の明治維新期の歴史に興味を持っていました。加えて、裁判官である母の影響で法律にも関心があったことから、卒業後は日本への留学を選び、早稲田の法学部に入学。ロシア法のゼミに所属し、旧ソ連時代からロシア連邦時代までの土地法の変遷などを研究しました。学部4年生だった2019年8月に、中国で農村部の土地制度改革の一環として土地管理法などの改正が行われました。中国の土地制度のこれからを考察したいと考え、この分野の研究をされている楜澤能生先生に研究指導を仰ぐために法学研究科の基礎法学専攻への進学を決めました。
修士論文では、中国の農地法について日本との比較による研究に取り組みました。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、本来であれば実施したかった日中両国での農村調査は断念せざるを得ず、中国の学術会議に参加することもかないませんでした。それでも、可能な範囲でフィールド調査に努め、千葉県でオーガニック農園を営む早稲田の卒業生に自分で連絡を取り、見学にも訪れました。こうした調査結果も交えながら、今後の中国の農地制度改革に有効な方法を考察し、論文にまとめました。
人生についても深く思考し
視野を広げた大学院での2年間
修了後は、総合IT企業である米国デル・テクノロジーズの上海オフィスでの勤務が決まっています。早稲田での6年間で培った法学の専門性や、中国語・英語・日本語のスキルを発揮し、多国籍のメンバーや社外関係者をつなぐ懸け橋の役割を果たしたいと思います。デル社は近年、環境保全をはじめとするSDGsの取り組みにも注力していることから、大学院で学んだ環境法の知識も活かして貢献したいと考えています。
法律の知識を身につけることだけが目的ならば、極端に言えば独学でもこと足りるかもしれません。しかし、法制度の現状やこれからについて、日本を代表する法学研究者である先生方や、多様なバックグラウンドを持つ学生たちと対話を重ねながら深く考察することは、大学院でなければできない経験だと思います。法学は、人と人の関係や、人と社会の関係を追究する学問であり、自分自身の人生への思考も深まります。私もこの2年間で視野を大きく広げられたからこそ、憧れていたグローバル企業で働くチャンスをつかむことができました。
進学を検討する皆さんへのメッセージ
学部時代から幅広い分野の本をできるだけ多く読むことをお勧めします。読書を通して視野を広げ、世界に対する認識や自身の価値観を定めていくことは、その後の研究に必ず役立ちます。修士論文は修士2年間の研究成果だけではなく、学部1年次からの読書やさまざまな経験を通して積み重ねた知識の集大成だと感じています。なお、大学院の交換留学も積極的に活用しましょう。理論を心まで覚えるために、書斎の中での読書ばかりでなく、Field Workに赴き、つまり現実の世界を自分の目で見て、足で歩くことは不可欠であると思います。紙面の知識を、未来の人類社会と人々の生活を良くすることに通用させることこそは、正真正銘の学問になろうと信じます。
段さん、ありがとうございました。
2022年4月 法学研究科